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中間試験を終え、僕とタケシは学食に戻り、少し早い昼御飯を食べ始めた。

朝御飯を食べたはずなのに、僕はなかなかな空腹状態だった。

久しぶりにしっかりとがっついたものが食べたくなって、唐揚げ定食をカウンターで頼み、席に戻った。

タケシは朝練もあってか、ごはんを大盛りに豚のしょうが焼きを二人前頼み、嬉しそうにお茶碗を持って先に待っていた。

「試験は、まぁ大丈夫だろう。単位はもらえるはずさ」

「あぁ、そうだな。ランクは別として単位はゲットだ。これで卒業に近づくな」

お互いのがんばりもあって、カンニングペーパーが幸をそうし、割りと満足のいく回答になった。

「そういえば、有美ちゃんの件、金曜から何かあったか?有美ちゃんの友達から何か連絡とかあったの?」

タケシが口に白い米粒を付けながら言った。

「そうだな、今日本人に会ったよ」

「おい、そういうことは早く言えよ!俺はお前の恋のキューピッドなんだよ」

言った直後、ごはんが喉煮詰まらせたようで、ごほごほと咳をした。

僕はペットボトルのお茶を渡しながら、朝早く起きたこと、タケシの朝練を見ながら本を読もうと思ったこと、お腹が空いたので学食に行ったこと、そこで有美ちゃんに会ったとこを話した。

僕の話を聞きながら、ようやく喉に詰まった米が落ち着くべきところに落ち着いた頃、タケシは少し涙目で返答した。

「なんでまた脱走なんかするんだよ。優等生の反抗期とか、実は不良少女だったとかなのか」

「たぶん、ストレスだと思うよ。いまテレビでやってる事件と一緒で、帰宅してから記憶がないみたいだし。いきなり世界が変わったみたいな言い方だったな」

「あぁ、あの捜査が打ちきりになったやつか。あれってさ、国が絡んでるらしいぜ」

「国?」

「そう、国。国が極秘にある薬を開発してて、その実験台として薬がよく馴染むような若い子を人質に人体実験をしてるって噂だぜ。なんでも、相当な極秘の薬らしいから、警察はそうと知らずに捜査に手を出しちまって、もう一気に潮を引いたとかって聞いたぜ」

「その情報のソースはどこなんた?」

「ネットだよ」

タケシが最後のしょうが焼きの肉を口に入れ、残りのごはんを掻き込んだ。

「ネットってこんな小さな町の事件だろ?そんなに広がってるのか?」

「ヨージはなんにも知らねぇのかよ。実はアメリカでも同じような事件が起きててよ、日本の事件ももそいつがやってるんじゃえねかって、俺は思ってるんだ」

「そんな都合がいい話があるかよ」

「それがよ、あるかもしれないぜ」

タケシが足を組み直し、食べ終えた定食の食器を机の奥に押して、自分の頬杖をつくスペースを作った。

僕も思わず前のめりになり、タケシの話を嘘だと思いながらも、聞き入る。

「日本でこの事件が起きたのは、先月11月で5人。失踪期間はきっちり5日間。しかも、全員女だ。海を渡ったアメリカで起きたのは、その前、9月のことだ。そこでも女だけの失踪事件があった。これもまた5日間ずつ消えている。さらに全員に共通してるのは、帰還後に記憶がないことだ。」

「偶然の一致とかの可能性もなきにしもあらずだろ」

「いや、実はまだある」

「なんなんだ?」

「彼女たちには、もうひとつ共通したものがあった」

「おい、もったいぶらないで教えてくれよ」

さらに体が前のめりになる。

僕もいつのまにか、食べ終えた定食の食器をテーブルの奥に押しやっていた。

「全員、首に謎の穴みたいな発疹が、二つだけあった。日本もアメリカもだ。」

「え…」

僕はそこで気づいたのは、アイリが前、SNSから有美ちゃんの画像を見せてくれたときに、首に虫刺されのようなあとがあることだった。

あのときは、有美ちゃんだけが気になっていたのでその証拠だけでは、何も気づかされることはなかった。

つまり…

「タケシ、ちょっとごめん」

「え?ヨージ?」

僕は携帯電話だけを掴むと、すぐに人気がない学食の裏に走っていった。

アイリにすぐに調べてもらわないと。

沸き上がる僕の鼓動が急げ急げと囃し立てる。

学食の裏は油でまみれた換気扇がぐおんぐおん動いているだけで、ひとどころか猫もネズミもいなかった。

「アイリ、前、アイリが僕に見せてくれた有美ちゃんの首の写真、覚えてるか?」

「えぇ、もちろん。ヨージの言いたいことは分かるわ」

そう優しい声で言うと、いつものAILIと書かれたメッセージマークが画面にふっと現れた。

震える指でそのメッセージマークをタップした。

すぐに目に飛び込んだのは、ストッキングのような肌色だった。

よくよく見ると、それは人間の首だと分かる。

さらに目が慣れてくると、それは女のひとような柔らかい曲線を描いていることが分かった。

そして、さらに。

「傷跡…だ…」

そこまで大きくはないので、よく目を凝らさないと見えないが、首の真後ろにふたつ、きれいに整列をした傷跡が並んでいた。

他の画像も見てみる。

みんな角度は違えど、くっきりと傷跡があることが見える。

「嘘だろ…」

これはどういうことなんだ?

「アメリカの行方不明者だった人たちの画像も見る?」

「いや、もう大丈夫。ありがとう」

もう僕のなかには確信しかなかったので、もうこれ以上情報は必要なかった。

「事件だ」

これは、確実に誰かが何らかの目的をもって遂行している事件だ。

僕は携帯電話を握りしめ、タケシのもとに戻った。

「おい、ヨージ、いきなりどこいくんだよ」

起こり気味のタケシにお詫びをし、同時にありがとうとお礼を言ったので、タケシはよくわからないといった複雑な表情になっていた。

それがなんだか可笑しくて、思わず笑ってしまった。

僕が変に笑うのを見て、タケシもつられて笑っていた。

「ヨージ、最近変わったよな。なんか人間らしくなった気がする」

「なんだよ、まるで、前まで人間じゃなかったみたいな言い方だな」

「いや、そうじゃなくてさ、よくしゃべるし、毎日なんか楽しそうだ」

あぁ、そうかもしれない。

有美ちゃんの失踪をきっかけに、僕の中が本当に騒がしく、忙しい。

「まずは、やることやらないとな」

被害者にも同様の共通項を見つけたので、直接足で向かって確認する必要は無くなった。

これは単なる家出が重なった事件ではないことが証明された。

今日やることは、裏で手を引く犯人について、いろいろな角度からアイリに調査をしてもらうことだ。

アメリカの事件も関連性が強いことから、情報がより多く漁れそうだ。

それに向こうの警察であれば、情報公開が日本よりも明確であろうと思うので、僕自信も探し出せる情報がきっとあるはずだ。

「それにしても…」

「ん?なんだ?」

タケシは午後の講義の準備を始めようと自分のリュックの中をごそごそしていた。

「いや、なんでもないよ」

僕はタケシがアメリカで起きた事件を教えてくれたのは棚からぼた餅で、タケシがこういう都市伝説めいた話が好きなことが幸をそうしたのもある。

ではアイリは?

世界中、いや、宇宙に転がる情報すらかき集めることができるアイリがなぜこのアメリカとの事件の関連性を見つけることができなかったのだろうか。

あくまでも、僕が指示したことのみを調査するから?

いいや、アイリは前々から自主的に調査を進めていた。

他のAIとは異なり、自分の意思がある。

感情もある。

アイリが調査を遠巻きに嫌がっている…?

何か知られたくないことでもあるのだろうか。

アイリはまだ謎に包まれている存在である。

アイリも感情がある。

僕にも知られたくないこともあるはずだ。

その出生、生い立ち、すべてが謎である。

つまり、このアイリが触れられたくない部分に少し触れているのではないか?

分からない。

アイリが何を嫌がってるんだ。

いや、待てよ。

誰かに“操作”されているのではないか?

アレキのときもそうだったが、アイリでも介入できない情報が確かに存在することがわかった。

そこに掴める情報があるのに、鍵の開け方が分からない、例えるなら雲をつかむような感覚だと言った。

もやもやする疑問ばかり浮かぶので、一旦いまは目の前の講義にきちんと出席をするのが先だ。

それでも、僕は午後に4つの講義を受けたが、何を受けたのかも分からないくらい、ずっとこの事件の謎に思いを巡らせていた。

そして、夜、再び事件は起きる。

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