瞑想と過去とつながりと
なんていうことを考えていたんだろうと、自分を責めながらも初めて感じた感情に酔いしれながら家路を進んだ。
確かに好きという気持ちはあったけれど、この恋も高校時代のものと同じだと思っていた。
僕のこの恋は、恋というにはあまりにも未完成すぎていて、その子の幸せが僕の幸せであって、付き合ったり二人の時間を一緒に過ごしたりすることは僕の幸せの範疇には全くなかった。
あの冬の終わりの春の始まりに近い季節にはじまった僕の二回目の恋は、静かに終わりを迎えるはずだった。
何がどうして僕はいまこうして彼女のことを考える度に嬉しくなったり、苦しくなったりするんだろうか。
タケシがふいに撮った写真を、ふと覗いてみたり、まだその写真を消せずにいるのには何か理由があるんだろう。
自分でも気分が落ちたり浮いたりして、忙しいなと客観的に感じた。
家まであと少しのところで足が自然に止まった。
そして、ゆっくりと顔を上げ、夜に染まっていく橙色の空を眺めた。
(そうか…。そういうことか…。)
僕の中でひとつの答えに近い思いが浮かんできた。
(あのときと同じなんだ。だから、きっとこれは恋じゃない。)
僕は空を見上げていた顔をすぐに足元に落として、爪先のところにちょうど落ちていた小石を力なく蹴り飛ばした。
(あのときと一緒だからか)
ずっと思い出さないようにしていた過去の記憶がじわじわと僕の心を染めいていく。
何色ともつかないその記憶の色は、ずっと染み付いていたはずなのに気づかないふりをして忘れてしまっていた。
(まさか、忘れるなんてできないよな。)
やっぱり僕は幸せになることなんてできないんだな。
僕は幸せになれないんじゃなくて、幸せになってはいけないんだ。
どうか、僕の思い人よ、恋人と幸せになってくれ…
彼女の気持ちにはっきりと気づいてしまったものの、もうこれ以上は好きになってはいけない。
いまのこの高まる気持ちをすぐに押さえることはできないが、少しずつ気持ちを離していこう。
それが、やっぱり僕にとっての幸せだ。
大丈夫だよ、君は強いから。
君はその芯の強さでたくましく生きていけるから。
僕の内側でとどろめいていた感情たちがやや落ち着きを見せたところで、僕のポケットでブルブルと振動が起きているのを感じた。
(携帯電話か?)
ポケットに手を当てると携帯電話の形がジーンズの上からでもはっきりと分かった。
(誰だ?タケシか?母さんか?)
携帯電話を取り出して画面を見ると真っ白の画面の中にメールの絵文字で良く見る手紙のマークが定期的に点滅をしていた。
(なんだ?この機能、この画面始めてみるぞ)
疑問に思いながらもその点滅するメールマークを右手の人差し指で触ってみた。
(ん?)
すると、そこにはこう書かれていた。
「吉岡有美には、彼氏はいない written by Airi」




