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願ってもない話だった。

有実ちゃんの友達からのお誘いは、まさに天からの導きのようだった。

僕にもできることがあったんだ。

もんもんとした気持ちが、一気に大きい風で吹き飛ばされたみたいだった。

自分では無能と思っていた分、他の誰かから認めてもらえたことにとても嬉しさを感じていた。


昼のあの学食でひとりの子から連絡先を教えてもらった。

詳しいことは、また連絡してくれることのことだった、

彼女たちは、有実ちゃんのポスターを作ったり、駅前で配ったり、警察にもいろいろ情報を伝えたり、彼女たちなりにできることをしているらしかった。

あとは、有美ちゃん姉のケアや家族のフォローをしているようだった。


ただ、特別に僕にだけ捜査の協力を頼んでいるわけではなく、有実ちゃんと接点がありそうなひとに、片っ端からお願いをしているようだ。


もちろん、タケシとミキオにも声が掛かった。

ときには、男手も必要なシーンがあるみたいで、協力することを一つ返事で了承したときには、かなり嬉しがってくれたようだ。


曇っていた彼女たちの顔が明るく日が射したようにくすみが無くなったような気がして、僕もつられて嬉しくなった。


また連絡するね、と言われお昼の学食ではさよならをして別れた。

それでも、僕は嬉しかった。

好きな人の力になれることに、確かな感触を感じていた。


「有実ちゃん、ほんとにどこでなにしてるんだろうなぁ」

午後の講義のあと、大講堂でミキオが背伸びをしながら言った。

「でもよー、ヨージにとってはまたとないチャンスだな」

「なにがだよ」

「これで有実ちゃんが見つかったら、ヨージの賜物だな」

「そんなうまく行くわけないよ」

「とりあえず、内気なヨージ少年が恋へ一歩進んだわけだな」

そうだな、そうだなと二人がにやにやと笑いあっていた。

「そんなんじゃないって。僕は遠くから見ていられればそれでいいんだよ」

それは本当に本心だった。

「へー、古風だねぇ。ヨージさんは。親父とは違うんだな」

「父さんは、熱い男だからな」

「そんなヨージは、内に火を込めているタイプだね」

「そんなもんじゃないよ。それより、タケシも良かったじゃん。あの子の連絡先ゲットできたんだし」

「それなー。思いがけないってこういうことだよな」


タケシは有実ちゃん含めた英語科メンバーの一番背が高くて切れ長の目をしたリカちゃんという子が最近気になっているらしい。

ただ、タケシはわりと厭きっぽくて毎月好きなひとが変わるような気が多い男だ。

でも、そんなオープンな性格は男女訪わず好評で、クラスの人気者、ムードメーカーの地位を小学校から築いてきた。

そんなタケシだったが、ずっと恋人はいない。


「リカちゃんのあのアーモンド型の目は色気があって良いなぁ。同じ19歳には見えないな。今年のクリスマスは、俺はお前たちと過ごせないかもしれないな」


あまりに真剣な顔でタケシが言うから、僕らは思わず吹き出してしまった。


久しぶりに笑えた。


良い風が吹いてきた気がする。

午後の講義を終え、寒さが増してきた空を窓越しに眺めて有実ちゃんの無事を祈った。

有実ちゃんはきっと大丈夫。

根拠のない自信が、僕の心を満たしていた。

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