第三章 capter-2 「クイック・ライダー」(5)
「ふふふ……どうです? 薮崎さん」
「確かにこれは一本取られましたね……見事なお手前で」
観客席。そこで二人とも隣になりつつ、火迎と薮崎が会話をしている。
主に試合内容についてではあるが、薮崎にとっては情報集めも兼ねてのことであった。
「ーーそれにしてもあれだけの兵器を複数用意するとは、流石ですな。朝霞には相当金が余ってるとみますが……」
「いえいえ、現在ロールアウトしたのはうちではスコーピオンとティソーナの二機だけです。でもそちらこそ、あの群雲という御嬢さんはやるじゃないですか。正直あのマシンはうちの生徒じゃ模擬戦をやっても5人がかりでも止められませんよ? 性格的に油断する天月院ちゃんはともかく、アロンソ君相手にあそこまでダメージを与える時点で、相当に強いです」
「そう言ってくれると嬉しいですね。……では嬉しいついでにあのケライノウィングというのは……どういう仕組みなので?」
「教えてほしいですか? ふふっ」
「ええ」
そう言ってからちょっとの間が開き、火迎は
「企業機密ですっ」
と笑って誤魔化した。
「やはりそう来ますか。ではまぁ予想としてあの砲塔を展開するときに背後に出来たブースター、あれは衝撃相殺用ですよねぇ。しかしあの赤黒いオーラは本当、魔石エンジンのものじゃないですかね?」
薮崎はここで小声になり、耳打ちをする。
「……この情報は口止めされてないので言っておきますが……その通りです。リーブラ鋼ととある純度4の魔石の混合物ですよ。あの出力はそれだけの賜物です」
「道理で……幾らあのアロンソ君が強かろうとそれまで押されていたのにもかかわらずあそこまでの逆転劇はそうでもなければ出来ないでしょうからね」
「ふふ、でも魔石エンジンはそちらでは実用化はされてないでしょう?」
自慢のつもりか……。
「……ま、そうですがね」
薮崎は少々ふて腐れながらも、そう返事をした。
--データさえ取れば近いうちにマルクカ博士が作ってくれると、そう願いつつ。
(ーーしかし、周りの学生からの報告もない)
薮崎は少し風向きに苛立ちながらもそれを隠し、ベンチ側にいる須賀谷に目を向ける。
その須賀谷は少し……震えていた。




