第23話 家族が増える結婚式は、少し騒がしい
結婚式は、翌年の春、屋敷の庭で行った。
花壇の間の道は、子どもが二人並んで歩ける幅になっていた。
私は、新しい白い服を着た。
以前の王都の礼服より、裾が短い。
その理由を聞かれ、エルンストが、もう走らせたくないから、と言った。
私は、走るときは走ります、と答えた。
ミラが髪をまとめた。
ドロテが、朝から厨房で指図をしている。
フーゴは花の量を、三度も数え直した。
フィンは、八歳になっていた。
役目をしたいというので、指輪を運んでもらうことになった。
一度でも間違えたら式が台無しになると思わせたくなくて、前日に練習した。
本番で嫌になったら、ミラへ渡す。
落としたら、一緒に拾う。
ペトラは隣で、もっと元気にうなずいた。
「落としたら、あたしが先に拾う!」
フィンが、初めて本気で困った顔をした。
「ぼくの、役目」
「じゃあ、ちょっと待つ」
二人の話し合いで決まった。
大人がすべての失敗を先回りしなくても、隣の子と決められることが増えた。
式の途中、ムクが道の真ん中へ出た。
白い尾を二つ揃えて、眠り始める。
誰かがどかそうとしたが、狐は目を細めただけだった。
私はエルンストと道をずらした。
花の外へ一歩。
その程度で、式は続いた。
フィンが指輪を運んできた。
緊張して、箱を強く握っている。
彼はエルンストへ渡し、それから私を見た。
「なくならない?」
私は、前の指輪を外した日のことを思い出した。
「なくしたくないから、話し合って、暮らしていくわ」
完璧な誓いとは、少し違った。
エルンストも、そうすると言った。
私たちは指輪を交換した。
少年の前で、同じ方向を向いて。
食事の席では、先生たちと、町の人たちと、院から別の保護先へ移った子どもが、一緒になった。
あの子たちが皆、私の養子になったわけではない。
新しい養育者と暮らす子。親族が見つかった子。治療を続けている子。
それぞれの場所から、春の庭へ来てくれた。
マリアは、白い冠をつけていなかった。
小さな花の飾りと、いつもの杖。
「夜空が見える祭りも、悪くありませんでした」
彼女は言った。
今は灯術の供給を、使う人の側から確かめる仕事をしている。
王家へ戻るかどうかを、まだ決めていないという。
私は、前世で好きだった小説の聖女へ、祝ってもらった。
それなのに、本の続きを見たいとは思わなかった。
ここで誰が何を選ぶかを、その人から聞くほうが楽しかった。
夕方、フィンが疲れて眠りかけた。
エルンストが、部屋まで運んだ。
私はその後ろを歩く。
父親と呼ばなくても、少年はもう、彼の肩へ頭を預けられた。
寝台へ下ろすと、フィンが目を開けた。
「灯り、少しだけでいい」
私は燭台を廊下へ移した。
扉を細く開ければ、柔らかい明るさが届く。
彼が目で確かめ、布団へ戻った。
「おやすみ、フィン」
エルンストが言った。
私も、同じ挨拶をした。
少年の口が、小さく動いた。
「おやすみ」
初めて、返ってきた。
その後で、彼は私たちの顔を見た。
うまく言えたか、確かめるように。
私は笑った。
もっと言いなさいとは、頼まなかった。
エルンストと部屋を出て、廊下で手をつないだ。
寝室へ戻るまで、二人とも静かだった。
その静けさを、一緒に持てる人が増えた夜だった。




