第20話 断罪されたのは、子どもを道具と呼んだ人でした
翌朝、屋敷の北の部屋を見た。
窓が二枚割れ、壁に黒い筋が残っていた。
私の画集は、机の端が焦げただけで済んだ。
先生の鞄は、途中で置いたままになっていた。
フィンは南の部屋で眠っていた。
ミラが交代でそばへつき、私も椅子を運んだ。
朝の灯りを見ても、手首はもう痛まなかった。
町では、怪我をした人の治療が続いた。
塔の作業に入った職人の手は、しばらく包帯が必要だった。
全員助かったことと、何も傷つかなかったことは、同じではない。
私は補償と、修繕と、生活費の手配を進めた。
エルンストは数日、授業を休んだ。
訪ねると、机へ向かっていたので、私は本を閉じた。
「先生にも、休みが必要です」
「あと二頁」
教室の子どもと同じ返事だった。
私は茶を置き、二頁が終わるまで座った。
終わると、彼は自分で寝台へ戻った。
叔父の事件は、王都の審理へ移った。
院の子どもたちの聞き取りは、何度も同じことを言わせないよう、専門の担当者が行った。
フィンの分も、医師の記録と、保護先で話した内容が使われた。
人の大勢いる場所へ、証人として立たせることはしなかった。
私は出廷した。
最初の受入書に署名したのは、自分だと話した。
叔父からどう説明されたか、何を確かめなかったかも。
知らなかった自分の話だけで、裁かれる人を決めることはできない。
会計士の調査、院の記録、拘束具、折った銀印が、それぞれ示された。
叔父は、王家のために働いたと言った。
ローデリク殿下の名も出した。
殿下が出力を求め、停止の助言を退けていたことは、マリアと先生の提出した記録で確認された。
だからといって、叔父が子どもを拘束した責任は消えなかった。
横領と、違法な魔力の採取、証拠を焼こうとして事故を起こしたこと。
刑と賠償が定まり、叔父は領の管理から完全に外れた。
院長にも処分が下された。
殿下は灯術事業から外され、王位継承についての審査も停止された。
私へ来た謝罪の手紙に、婚約を考え直してほしいとは書いていなかった。
考え直してほしいと書かれていても、私は戻らなかった。
返事は担当者を通し、被害を受けた人への補償を求めた。
祈灯祭は、その年、冠を使わずに行われることになった。
町ごとに普通の灯りをともす。
夜空が見えなくなるほどの奇跡は、もう必要とされなかった。
私は帰りの馬車で、日記を開いた。
断罪の日として記した日付の下へ、違う字を書く。
塔の線を切り離した。
子どもたちは、院へ戻らない。
予言が外れた、と大きく書きたかった。
でも、日付が違い、経緯が違い、人の選択が違った。
本の外に出たのだと、ようやく思えた。
帰宅すると、フィンが机へ絵を置いていた。
黄色い扉の家。
その前に、私と先生とミラと、尾の二本ある狐。
少年自身は、扉の中へ描いてあった。
「ここに、いるのね」
私が聞くと、彼は頷いた。
「お母さんが帰るから、開けて待つ」
私は絵を、焦げていない壁へ留めた。
原作の悪役が住んでいた家には、その日、帰りを待つ子がいた。




