第12話 管理人の権利と、私の子を連れていく権利は違います
夏の初め、叔父が屋敷へ来た。
迎えの挨拶より先に、三人の男を玄関へ入れた。
「子どもを戻してもらう」
私は階段の前で、足を止めた。
ミラがフィンを庭へ連れていく。
先生は客間から出て、私の少し後ろに立った。
「何を根拠に」
「訓練の権利は院にある。おまえは預かっているだけだ」
叔父が書類を振った。
私は写しを受け取り、保護担当者の文書と比べた。
養育先を変えた通知も、院の調査を始めた決定も、叔父へ届いている。
「この屋敷から連れ出す許可にはなっていません」
「王家へ届ける灯晶が減った。契約を守れないなら、保護の話は取り消す」
叔父の口から、ようやく目的が出た。
私は会計士を呼んだ。
彼はすでに隣室で、叔父を待っていた。
「閉じた店への支払いについても、お話を」
男たちの一人が、庭へ向かおうとした。
エルンストが前へ出る。
杖を構えるより先に、門番を呼んだ。
二人が通路をふさぎ、男を玄関へ戻した。
「伯爵様の許可のない場所へ入らないでください」
先生の声は、教室より低かった。
叔父がその顔を見て、初めて名前を呼んだ。
「ハイムか。宮廷を逃げた男に、何ができる」
エルンストは、何も返さなかった。
私は彼の隣へ出た。
「今、子どもを連れていかせないことができています」
叔父の目が、私へ戻った。
「おまえに金の管理ができると思うか。私がいなければ、父の遺したものを全部なくすぞ」
その脅しは、よく知っていた。
庭の修繕も、使用人の給料も、叔父へ聞かなければ決められなかった。
彼が答えないと、皆が困ると思っていた。
けれど会計士は、必要な支出を教えてくれた。
ミラは人手を、フーゴは直す場所を教えた。
わからないことは、多かった。
一人に全部を渡す理由にはならなかった。
「叔父様への管理委託は終了しました。原本の返還を求めた期限も過ぎています。今日、お話しするのはその件です」
玄関の外で、馬の音がした。
領の保護担当者と衛兵が来ていた。
院長の証言が始まり、拘束具を運び出す男たちがいたため、叔父の聞き取りも急がれたのだ。
叔父は、王家の納入先であることを強調した。
衛兵は彼の腕をつかまず、まず書類を確認した。
その間に、私は男たちを門の外へ出してもらった。
叔父も別の場所で聞き取りを受けることになり、屋敷から出た。
すべて解決したのではなかった。
今夜、フィンを持ち去らせずに済んだ。
それだけで、膝の力が抜けた。
庭へ出ると、少年がムクを抱こうとしていた。
狐は嫌がり、腕から抜けた。
フィンは、また手を伸ばした。
「一緒に、隠れる」
私はその前へ座った。
「今日は、隠れなくていい」
何度言えば、届くだろう。
私にもわからなかった。
「叔父様は、帰った。門は、ミラたちが見ている。あなたは、ここにいる」
フィンの指が、私の袖へ掛かった。
ぎゅっと、布が張った。
先生が庭の椅子を運んできた。
ミラが水を置いた。
私たちは、その夕方、誰も彼を一人にしなかった。




