第11話 夜の庭を作ったら、先生まで居つきました
屋敷の裏に、日除けの庭を作った。
花壇を黒い布で覆うのではない。
木陰へ、小さな灯具を三つ置き、光の量を一つずつ変えられるようにする。
先生とフーゴが柱を立て、私は石を並べた。
「その石、少し左です」
フーゴに言われ、持ち直す。
昔は、置いてもらう場所を指すだけだった。
自分で持つと、石の角が手袋越しに痛かった。
フィンは窓から見ていた。
ペトラはその隣で、先生の字を読んでいる。
一緒に座ることなら、まだ怖くなかった。
完成した日の朝、先生がフィンへ見せた。
「明るさは、私が変えます。君は、この葉の下へ影を作る。いつでもやめていい」
葉の隣に、目印の赤い石を置いた。
影がそこまで来たら、灯具を切る。
息が速くなったとき、手首が痛んだときも切る。
私と先生は、同じ順番を何度も確認した。
最初の日は、葉を一枚。
二日目は、影を二つ。
三日目は、何もしなかった。フィンが寝不足だったからだ。
力があれば、毎日使う義務があるわけではなかった。
一週間たった頃、影の中へ落ちた種が、乾かずに残っていた。
フーゴが拾い、灯具の近くへ置いた種と比べる。
「こちらは、まだ生きています。強すぎる光で、乾いたのでしょうね」
普通の庭では、その種も育つ。
ただし、術具の不自然な光の中では傷む。
夜の魔力は、命を作る力ではないが、その負担を減らせるらしかった。
フィンが、種を両手へ載せた。
「ぼく、これを植えていい?」
先生は、確認した結果を紙へ書いた。
私には数字を説明し、フィンには、植える場所を聞いた。
少年は木陰を選んだ。
その日の帰り、先生は鞄を忘れた。
翌朝取りに来て、庭の灯具の線を直した。
次の日は、直した線を確かめるために来た。
「先生、ずっと来ますね」
ペトラが言った。
私は茶の杯を持ち損ねた。
エルンストは眼鏡を直す。
「調べることがあるからね」
「あたしのお父さんも、うちの店に用事があったって。お母さんが働いてたとき」
私は茶を飲んだ。
先生も茶を飲んだ。
フィンだけが、本当に意味がわからない顔をしていた。
子どもたちが庭へ出ると、先生が小さく咳をした。
「私が来るのは、仕事です」
「わかっています」
「……それだけと言うと、少し違いますが」
私は、杯を机へ置いた。
先生は庭を見ていた。
フィンが、ペトラに種を植えた場所を教えている。
「この庭に、もっと人が座るようになればいいと思っています」
彼は言った。
私も、以前は追い返した子どもの声を聞いていた。
「それなら、椅子を増やします。仕事がなくても、いらしてください」
彼は、私を見た。
少し長く。
その後、きちんと返事をした。
「そうさせてください」
夜の庭に、四脚目の椅子が入った。
ムクには、日陰の敷石があれば十分だった。
二本の尾を、椅子の脚へ絡めるように置いて眠る。
フィンは、その横へ小さな札を立てた。
たね。ふまない。
先生の数式よりも、その字を見に来る人のほうが多かった。




