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NIGHTMARE RAVENS  作者: 96500C/mol
Chapter 18. 砕撃 -J'ai perdu le…-
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#4 砕撃


 『ライトニング・ストライクス』が放つ、ムツミを機能停止させたほどの電撃である。人間が浴びて平然としていられるはずがない。サチは足に力を入れられなくなり、そのままバタリと地面に倒れた。


「サチ!」


 クローディアはサチに駆け寄った。『葬送曲』を盾に、クローディアはモニカとサチの間に割り込む。


「邪魔をしないでもらえる? クローディア・クランフィールド」


 モニカが槍を携え、のしのし近づいて来る。


「そいつは人類の敵よ」

「違うわ! モニカ、貴女は間違ってる!」

「違う? 間違ってる? どっちがよ。因子持ちはいずれ『臓物』になるバケモノでしょう? だったらその芽は摘んでおかなきゃいけないの。

 因子持ちをロアノールの学び舎に招き入れる容認派なんて、トロイの木馬みたいなものよ。容認派も同類。人類の敵ってこと」


 クローディアの前で、モニカが槍を振りかぶる。


「どきなさい、クローディア・クランフィールド。さもなくば貴女も同じ目に遭う」

「構わないわ。サチを痛めつけようっていうなら、私を倒してからにして」

「貴女が強がりを言っているのは知ってる。その強がりがどこから来るのかもね。

 『葬送曲』を持つ自分が死ぬわけはない、そう思っているから、そうやって貴女は強がっていられるのよ」


 槍を振り下ろすモニカ。その切っ先が、『葬送曲』の表面に施された防御結界とかち合った。


「だったら、壊してやるわ、こんなもの」

「……ッ」


 何度も、何度も。

 モニカは槍を『葬送曲』に叩きつける。


「ずっとアンタが目障りだったのよ、クローディア! アンタがいると、私の価値が下がる!」

「え、何? なんの話?」

「アンタの『葬送曲』は、私の『アマデウス』でコピーできないからよ!」


 モニカの『アマデウス』はあらゆる魔奏器を再現できるが、再現したところで使えないものも存在する。

 その一つが『葬送曲』だ。『葬送曲』による人体製造と魂の再定着は、『アマデウス』の制限時間内に行うことができない。ゆえに、どんなに精巧なコピーを作れたとしても、モニカに『葬送曲』は扱えないのだ。

 モニカは自分を最強だと自負している。最強の自分に仕えない魔奏器があることなど、モニカには耐えがたい苦痛なのだ。

 クローディアはモニカの心中など、知る由もないのだが。


「アンタがいる限り、私は最強になれない! 会長に認めてもらえない!」


 『ライトニング・ストライクス』の穂先が欠ける。それと同時に、『葬送曲』の防御にも綻びが生じ始めた。


「セナは死んだ! リーゼロッテも! あとはアンタが死ねば、私は学院最強になれる!

 学院の誰もが私にひれ伏すのよ!」

「何言ってるの……⁉」


 横薙ぎに振るった槍が、ついに『葬送曲』の表面に深い傷を描く。


「壊してやる、こんな魔奏器! そうすればアンタは、私に逆らえない! 最強の、この私に!」


 モニカは目を血走らせ、槍を突き立てる。『葬送曲』の防御はついに破られ、その棺の蓋が砕かれた。

 こうなると、魔奏器もただの木材の塊である。その魔奏の力を失った『葬送曲』は、なすすべなくモニカに完全に砕かれてしまった。


「……もう一度言うわ。どきなさい、クローディア・クランフィールド。『葬送曲』のない今のアンタがこの槍で貫かれたら。死ぬわよ」

「答えは変わらないわ、モニカ。サチを痛めつけるなら、私を倒してからにして」

「じゃあ、望み通りにしてあげる……っ!」


 振り下ろされる槍。クローディアは体を強張らせ、瞼を閉じた。


 死を覚悟している。何度も経験した死。だが、今度こそは復活できない。

 『葬送曲』は破壊された。次に死んだら、もうクローディアは生き返れない。それでも―――それでも、クローディアは避けることをしなかった。


 がきん。


 だが、『ライトニング・ストライクス』の切先は、クローディアの前に割り込んできた物体に防がれた。

 空中に浮かんだ、武骨な金属板。欠けた槍の穂先を弾くと、板は防御の魔奏を奏でた。

 『くるみ割り人形』。その魔奏器に、クローディアは見覚えがあった。


「先輩―ッ!」


 中庭に面した窓から飛び降りてくる、一人の男子生徒。

 コーディである。中庭の騒ぎを聞きつけたコーディ・エルメートが、突如戦闘に乱入してきたのだ。

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