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NIGHTMARE RAVENS  作者: 96500C/mol
Chapter 13. 祝福 -NIGHTMARE RAVENS-
71/104

#7 改名

 ギルドハウスに『NIGHT RAVEN』のメンバーが集う。テーブルを片付け、空いたスペースに椅子を並べたホールには新たなメンバー、ヘレナ・ロアノールとリーゼロッテ・カールスルーエも加わっている。

 そのたくさんの視線が向けられた先には、サチとクローディアが立っていた。


「いろいろ考えたんだけど……そろそろ楽団のリーダーを決めようと思うの」クローディアが切り出す。「ま、大方意見は纏まってるでしょうけど」

「ハイっ!」リンが勢いよく手を挙げる。「立候補、してもいいですか?」

「いいけど、相手が悪いわよ」クローディアが返す。「私はサチを推薦するわ」

「異議なし」瓜花が即座に答える。「みんなはどうかな」

「あたしも」「ウチも」「私もそれがいいと思います」とヴェルナ、ライラ、ムツミも続く。

「ワタシはヘレナがいいなぁ」リーゼロッテも手を挙げた。

「お断り」ヘレナが静かに答える。「私は他所の楽団を乗っ取るような真似はしないわ」


 「えー」とリーゼロッテは不満そうに言ったが、顔は笑っていた。


「大事なことだから、多数決じゃなく意見を統一したいんだけど」

「私もそれでいい」とヘレナ。「あなたがやればいいわ。『雛鳥』さん」

「ヘレナがそれでいいなら、ワタシもー」

「どうかしら」クローディアは改めてリンに問いかける。「シャンはどう思う?」

「うぐぐ」リンは静かに手を下ろした。「シャンは長いものには巻かれる主義なんだよね。だからシャンもそれでいいよ」

「ありがとう。これで正式に、楽団のリーダーはサチに決定よ」


 拍手に迎えられ、サチは一歩、楽団メンバーの前に歩み出た。


「ありがとうございます。わたし、頑張ります!

 それで、早速なんですけど。わたし、楽団の名前を変えたいんです」


 サチの発言に、面々は驚いてお互いを見合わせた。

 驚いていないのは、サチの数歩後ろの位置に控えている、事前に相談を受けていたクローディアだけだ。


「『NIGHT RAVEN』は、セナさんが始めた楽団でした。クローディアさんを犠牲にしない、させない、最強で最高の楽団。セナさんに命を救われたわたしは、セナさんの仕事を引き継ぐことが、わたしの使命だと信じてきました」


 サチが胸の前で右拳を握りしめる。


「でも、わたしにはセナさんの代わりは務まらないんです。わたしはセナさんみたいに器用じゃないし、誰からも好かれるタイプじゃないし……。それをこの半年間、思い知らされました。

 だから、わたしはセナさんの後追いはもうしません。

 これからは、セナさんの願いそのものを受け継いでいきたい。最高の仲間が、お互いの力をちょっとずつ出し合って、足りないところを補い合って、支え合っていける楽団。これからのわたしたちの楽団は、もうセナさんの『NIGHT RAVEN』じゃありません」


 それは決別ではない。

 セナの作った楽団、それを真の意味で引き継ぐということ――――それはただ、セナのやり残したことを追いかけるのではない。セナの願い、想い。その精神性を引き継ぐのだ。

 サチたちがこれから作る楽団は、『NIGHT RAVEN』であって『NIGHT RAVEN』ではない。セナたちの活動を繰り返すのではなく、新たなメンバーと新たな道を歩むのだ。


「今日からわたしたちは、『NIGHTMARE RAVENS』です」


 悪夢(NIGHTMARE)を晴らす、漆黒の鴉群(RAVENS)。かくして、『NIGHT RAVEN』改め『NIGHTMARE RAVENS』は発足した。サチとクローディア、たった二人の新生『NIGHT RAVEN』が、蔑みとともに生まれたのとは対照的に、多いに祝福されて。いま、サチの前に並ぶ顔は、どれも最高の仲間。聖ロアノール音楽学院に集った、7人の戦友たちである。

 たった2人で始めた楽団が、もう9人。








 「9(・)」―――――

 はて、とサチは記憶のポケットをまさぐった。何か、「9」という数字は不吉な符号があった気がするんだけど?

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