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NIGHTMARE RAVENS  作者: 96500C/mol
Chapter. 12 決断 -What I am-
61/104

#5 術数

  *   *   *


「ダメですよ、そんなの!」


 時間は遡って決闘の三日前。「NIGHT RAVEN」の作戦会議は、ロアノール大図書館の二十四階、瓜花がかつて自室に使用していた、あの小さな和室で行われた。

 盗聴や監視を避けるための秘密会議には、これ以上ない場所だ。内装も、うず高く積まれた魔導書も、以前と何も変わらない。ただ、五人も集まると和室は一層狭く感じられた。


「そんな、クローディアさんを捨て駒にする戦法なんて!」

「いいのよ、サチ」激昂するサチを、クローディアは嗜める。「死ぬのは慣れてるし、それに、訓練室じゃ本当に死ぬわけじゃない」

「でも……!」


 元はといえば、クローディアが犠牲にしないために始めた「NIGHT RAVEN」である。

 どんな理由を並べられようとも、クローディアを囮にして死なせることを前提とした作戦など、サチが認められるはずもなかった。


「ボクもサチと同意見だ」


 意外にも、サチに賛同したのは瓜花だった。


「いくら訓練室のシミュレーテッド・リアリティといっても、仲間が死ぬことを前提とした作戦は、感情的には飲み込めない。

 けれど、クローディアの言った作戦は勝算が高いし、対案がないのも事実だ。だからボクはクローディアの作戦に従う」

「そんな……ライラとヴェルナは? クローディアさんを囮にするなんて、嫌だよね?」

「……あたしは、いいと思う」少し考えて、ヴェルナは語り出す。「実際、あたしとか先輩じゃ、あの魔導人形とは戦えないもん。あたしの魔奏器はどっちかっていうとサポート向きだしね。

 それなら、出来るだけ多くの魔導人形を引き付ける役をやるよ」

「ライラ!」

「くかー……」


 サチの最後の頼みの綱、ライラは既に寝息を立てていた。

 畳の上に横たわって。自分の腕を枕に、サチたちに尻を向けて。


「うわ、寝てるしコイツ。大事な話し合いの真っ最中なのに」呆れるヴェルナ。

「まるで自分の部屋みたいなくつろぎっぷりね……」眉間を押さえるクローディア。

「タタミの魔力、ですかね」何とかフォローを試みるサチ。

「仕方ないだろ」瓜花はため息を吐く。「ここんとこ毎日、魔砲の練習してるから。疲れてるんだ」

「魔砲?」

「ああ。威力を絞って『竜の詞』を連射可能にするんだ。今までライラは、威力を高める練習しかしてこなかったそうだからね。苦労しているみたいだよ。

 こいつはこいつなりに、色々頑張ってるのさ」

「……まあいいわ」クローディアが視線を皆の前に戻す。「そもそもライラに作戦行動なんてできなさそうだし」

「そうですね」「わかる」「ボクもそう思うよ」

「瓜花。本番ではあなたがライラに付いて、指示してあげて」

「任せて」

「それから。決闘の勝利はあなたに懸かってるの、サチ。

 この作戦は、あなたをユーレンと一対一で戦わせるための作戦よ。どうにか、ユーレンを説得して頂戴」

「せっとく?」

「ええ。今の状態のまま、ムツミがユーレンのところへ帰っても。結局はまた、戦闘で破損したらムツミは捨てられてしまう。

 あなたがユーレンに気づかせてあげて。あの子にとって、ムツミがいかに大事な存在なのかを。それが貴女の望みでしょう、サチ?」

「わたしの、望み……」


 クローディアは本気だった。目を見れば、サチには分かる。

 自分を囮にしてでもチャンスを掴む――――以前から、クローディアが自分の命に執着していないことは、サチもよく理解していた。

 これがセナだったら、絶対にクローディアの作戦に同意などしなかっただろう。おそらくセナなら、決闘することなくユーレンを懐柔し、目的を達成しているはずだ。

 だがサチはセナではないし、彼女ほど非常識な強さも、人に好かれる才能も持ち合わせていない。サチはクローディアの作戦通りに事を進めるしかない。


 しかし、サチにとって何よりも嬉しかったのは、クローディアがサチの本当にやりたいことを理解し、仲間たちもそのために命を懸けてくれることだ。

 ユーレンは強い。だが、この仲間たちとなら、どんな相手にも勝てる気がする。



  *   *   *

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