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159.形見の魔石

おまけ回のフリードリヒ視点です。

 雪山に発生した瘴気の浄化が終わり、この街に静けさが戻った。


 その日、俺は一人、屋敷の奥にある小さな礼拝堂に足を運んでいた。


 石造りの壁は冷たく、祭壇に灯されたランプの火だけが、淡く揺れている。


 ここは、祖父が生きていた頃から変わらない場所だ。

 祖父はこの地に帰ってくるたびに、ここでよく祈りを捧げていたと聞く。


 石の椅子に腰を下ろし、俯いたまま、深く息を吐く。その息は、少しだけ白く染まっていた。


 そんな俺のもとに、ふと足音が近づいてきた。


「――フリードリヒ様」


 顔を上げると、そこに立っていたのは、俺が危険な目に遭わせた聖女の侍女だった。


「エルガ殿……」


 こんな場所に彼女が来るとは思わず、言葉が詰まる。

 彼女は一礼すると、静かに一歩前に出て、両手を胸元に添えた。


「この魔石は、あなたにお返ししようと思います」

「なに?」


 差し出されたのは、あの魔石だった。


「これは元々、あなたのお祖父様の大切な魔石だったのですよね?」

「……」


 確かに、そうだ。

 先代の聖女様から授けられた、絶対に手放してはいけない、大切な魔石。


 しかし、それを自らの意思で別の者に渡したということは――。


「これは君のものだ。そのまま君が持っていてくれ」

「ですが……」

「私たちの祖父は、どうしても君の祖母を守りたかったのだろう」


 言葉にしながら、胸の奥がじくりと痛む。


 祖父は王を守り、英雄と呼ばれた。


 だが、おそらくその裏で――本当は守りたかった、もう一人の存在がいた。


「……」

「だからこれは、君が持っていてくれ」


 祖父は仕事を成し遂げた。自らの命をかけて、王を守った。


 それでも、王の次に守りたかった人が――彼女の祖母だったのだろう。


 事情はわからない。二人が恋仲だったのか、はたまた恩人だったのか……あるいは友人だったのか。


 だが、その想いだけは、痛いほど伝わってくる。


「……わかりました。ありがとうございます」

「俺は君に礼を言ってもらえる立場ではない」


 そう言うと、エルガ殿は小さく首を横に振った。


 ランプの灯りが、魔石に淡く反射する。


 それはまるで、過去を否定するのではなく、静かに受け止めてくれているようだった。


「あなたは、本当に強いな」

「シベル……聖女ほどでは、ありませんよ」

「……そうか」


 祖父も、ミルコも、聖女も、彼女も――。


 彼らはとても強い。大きな覚悟を持って任務にあたっているのだから、当然か……。


「俺はまだまだ、だな」


 それでも、ミルコや聖女が言っていたように。


 間違いを悔い、諦めずにやり直すことだけは――許されてもいいのかもしれない。



短めですみません!

次回、シュミット家のあの人が出ます……!(誰!?)


そして文庫小説3巻はいよいよ明日4/3(金)発売です!!

なにとぞ、よろしくお願いいたします!!( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )

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