わたくしのお友達
三人のお友達はとてもナディアレーヌの親衛隊のような状態ですね。
緊張してきました・・・大体においてわたくしは夜会や晩餐会などの綺羅びやかな場所に出ることが苦手なのです・・・。
できれば遠慮してお部屋で休んでいたい・・・
でも、この夜会については多分・・・多分おそらくわたくしの歓迎の意味を込めたものだとおもわれますので仕方ありません。
兄達はそれぞれに人に捕まっております。
そりゃそうです、我がエルロッドウェイは医療国により色んな国とのやり取りがあります。
兄達は次期皇国国王そしてその皇国の宰相がきまっているのですから今のうちに顔つなぎをしておきたい人もたくさんいらっしゃると思います。
わたくしのほうはのんびりと晩餐会でのお料理をいただくつもりだったのですが、晩餐会というよりも完全なる夜会と化しているこの状況。だがしかしお料理はとても美味しかった!!
たくさん食べるわけにはいかないので、少しずつを一口づついただきました!!
素晴らしいお料理たちでした。
で。
その後の私なのですがなんと壁の花になっております。
目立たず騒がずがモットーのわたくしですので、なんとか逃げ切れるかと想いきや。
色んな男性の方に話しかけられて軽くパニックに陥るということをくりかえし。
わたくしがとりあえず淑女教育は受けていてもどうしても慣れないのが人見知り。
王族で人見知りなぞ許されないことなんですが人見知りなものは仕方ありません。
ひとみしりというか、正式には多分人選び。
わたくしは悪意が見える方やわかりやすいテンプレな悪意の方はなんとなくかわせるのですが非常に疲れてしまうのですよね。
いつも甘えて後ろに隠れている弊害がここに来て・・・。
お兄様たちの眩しさから言えばわたくしなんかかすんでしまいますけどねぇ・・・。
お母様が必死で淑女教育をしてくれましたがどうしても夜会や晩餐会といった華やかな場所にはなれませんでしたね・・。
まあ、この神託が下ったことでお救いする方が国王陛下という同仕様もない高みな方だったためこんなところにいますが別のお方だった場合はまた他の能力が必要だったと・・・。
それにしても淑女教育のほうが圧倒的に多かったような・・・。
まあ、護身術もそれなりに合格点まではいただけましたけどねぇ。
ですが壁の花です。もはや壁にくっつきまくりです。
見かねたロウがさっきからつきっきりでそばにいてくれます。
なんと助かることか・・・さすがわたくしのもうひとりのお兄様です。
血はつながっていませんけれども。
「レーヌ様、しっかりしてくれないと困るんだけどなぁ。」
と後ろから睨みを効かせている。
多分なんだけど、これはお兄様たちからの命令に近いと思われます。
「ねえ、ロウ。エリーゼは怒っていない?」
「怒っていないか怒っているかで言ったら怒っているなぁ。」
「やっぱり・・・。」
ロウとエリーゼはとても仲良しの夫婦です。とてもじゃないけど引き離すのもどうなのかとちょっと考えてしまうくらいには仲がいいのです。
ロウは笑いながら言う。
「ああ、違う違う。ドゥーゼットに来ること自体もここに残ることも、レーヌ様の近くを護ることも納得してくれているし応援もしてくれている。ただ。
自分もドゥーゼットに来たかったんだよ。んで、こちらでレーヌ様の手伝いをしたかったの。」
「え?わたくしの?」
「そうそう、だってエリーゼ、レーヌ様大好きだから。レーヌ様専属の看護師みたいなもんだろ?」
「違うわ、専属はあなたの専属でしょ?騎士様?」
「まあ、レーヌ様にだって譲る気は無いけどねぇ。うちの嫁かわいいでしょ?それこそもう誰よりも世界一愛らしいんだけど。」
困りましたわ。スイッチを押してしまったかのように話し出してしまうのはいつものことなのですがわたくしが聞いてしまったからには全て聞くのが責務でしょうか・・・。
お兄様達を見るとわたくしと目が合うと合わせて蕩けるように微笑んでくださいます。
ああ、周りのお嬢様方が美しい繊細な扇でお顔をかくしていまわれております。
きっとお兄様たちの笑顔にあてられてしまいましたのね。
わたくし兄ですので慣れておりますが、たしかに直撃を受けるとわたくしでさえ胸焼け・・・いや、甘いと思いますものね。
私もここでしばらく過ごすのですから良い印象はもっていただきたい!ということで同じく微笑んでみますがあちらの方々が更に固まってしまったかのようです。
いったいどうされたというのでしょうか・・・。
そもそも。
ニコニコと笑いながら、話している私達を遠巻きに見ている方々は、ロウの方をチラチラと見ているお嬢様方もいらっしゃいます。
先程聞きましたがどうやら我が国は美男美女が多い国らしいので(ひとごとのようです)仕方がないとも思われますが・・・。
今回は男性の方々も多数見ていらっしゃるのを感じます。
私の着ているドレスが物珍しいということでしょうか?
こんな時にサラがいてくれたらいいのだけれど・・・。
侍女であるサラの入場は許されていないわけではないのだけれど彼女は今回お留守番を決め込んでいるのです。
影の皆様方との情報共有という名のお茶会を開催すると張り切っていたので置いてこさせられたのだけれども。誰にって?サラに。
どうしてわたくしよりサラのほうが強いのかしら・・・?
そう考えている間に近づいてくる美女が。
まあ、知っているひとだしロウがちょっとだけ緊張したのはわかったのですが、安心するように伝えるとアンヌも深く膝を折り私に挨拶をする。それを見てロウは警戒を解いた。
夜会仕様の変装ではあるけれど素顔でなくても美女とかどいう言ったことなんだろうか?じっと見上げるとにこやかに微笑まれた。
うーん、美人だわ。相変わらずお美しい・・・。
その表情にうっかりと見とれているとふふふと笑われた。そして耳打ちをされる。
「ナディアレーヌ様、あのお嬢様方にはお気をつけくださいませ。」
わたくしの兄達にたかって・・・もとい、取り巻いてらっしゃるお嬢様かたとの別グループのかたまりを艶やかな微笑みで一瞥してらっしゃいます。目が笑っておりませんわね?
「はい?どうしてわたくしがお嬢様方にもうなんかねらわれてますの?」
「あの方々はハイエナのごとく・・・失礼しました。まあ、情熱的に陛下を盲信しておりますので。ああ、ちなみにあちらのお嬢様もあちらもです。ああ、いすぎて面倒くさいですわね。お兄様方にむらがって・・・いえ、囲んでいない方々はほぼ似たようなものですわ。
そしてあの狸のような方もなんとか取り入りたい方で、その他大勢おりますがとりあえずはまあ。」
それにしても美しいのにアンヌはどう考えてもなかなかに辛辣のような気がしますわね。
サラと大変気が合う予感がします。ですがそれはそれ、これはこれですわね。一体全体どういった?
「はあ・・・陛下の・・・?」
「それはレーヌ様の身を案じなければならないということか?」
ロウがアンヌの手を取りその手の甲に口づける手前でささやく。
それを受けながらアンヌは笑い、表情とは全く違う怖いことを言い始める。
「絶対にあの方々はやらかします。こちらも手を打ちますが、そちらもお願いしますロウ様。」
「了解しました。マダムアンヌ。」
「わたくし名乗りまして?」
アンヌが笑顔で返す。
「まさかこんなお美しい方のお名前を知らないままだなんて申せませんので。こちらも前段階は踏んでおりますよ。貴方様方のことはそれなりには存じております。私の名はサラに?」
「まあ、それはそれは。ええ、サラ様は素晴らしいですわ。ぜひ我が同志になっていただきたいくらい優秀でらっしゃいますね。」
その言葉を聞いてロウが大げさに体を震わせて笑う。わざとらしい。
「まさか!うちの愚妹がそんなそんな。陛下のお側で仕事をこなすなんてとても出来ません。レーヌ様のお側にて色々不自由なく動くほうが良いかと。」
「まあ、それはそうですわね。優秀な人材は力や権力では手にはいりませんものね。」
「そうでしょうとも。力ではなくて信頼ではなくては。」
「わたくしはどうでしょうか?」
キラリとアンヌの眼が光った気がしましたが気のせいかと思われます。そんな怖いことはないでしょうと思いたいです。
対してロウの方もいい笑顔をしています。この笑顔は見知っています。
ああ、気に入ったのだろうけど好敵手だと決めた時の顔です。この顔を見せるということはアンヌやアンヌの背景は気に入ったということでよいのでしょうか?
「あなた様の主が私の主に害を与えないのならば大丈夫ですよ。」
あ、この言葉は本気ですね。笑顔が怖いのは内容のせいでしょう・・・ロウったら過保護です。
わたくしが軽くため息をつくと、ロウが自然に私の頭をなでてくれました。
「まあ、手厳しい。私の主様はナディアレーヌ様の一番の味方になりましてよ。」
「レーヌの兄達はなかなかに手強いですよ。私も含めて。」
「ふふっ。我が主はなかなかに不器用なのですがこれと決めるととても紳士で一直線ですの。ナディアレーヌ様はお幸せになりますわよ。」
そう言いながらそっとロウの手を叩き落とすあたりが怖いっちゃあこわいのですが。
無意識の行動を咎められて苦虫を噛み潰したような顔をしているロウを見上げるとニヤッと笑われた。
「ほほおう。そういったことでしたか。なるほどねぇ。そりゃあおもしろい。」
「でしょう?」
もはや何の話かわからなくなってきました。
ロウが急に砕けた雰囲気を見せたのでほっとしました。
何故かしら。美男美女が手の甲にキスを贈りそれを受けて麗しく挨拶しているのにも関わらず、刀でも突きつけあっているかのような時間もありましたがどうやら判定はそれぞれに済んだようですわね・・・ああこれ解りました。
おふたりともあれですね。
どうやら気に入ったのですね。仲間としては。ということにします。
キラキラした空気がちかづいてくるなぁ・・・とちょっとげんなりとしておりましたがそのとおりですわよね、兄達が近づいてきました。
どうやらわたくしたちの動きを逐一チェックしていたようにも思われます。
過保護オブ過保護の兄達ですがわたくしの安全のためだと思えば止めることも出来ないのでしょう。でもこんなにキラキラを撒き散らすのはどうかと思いますけども。
周りのお嬢様方の視線がわたくしを含めて刺さります。
えー、ただの兄妹ですよー・・・三人そろうと銀髪だらけでこちらの国では珍しいかもしれませんがちょっとほっといていただけると助かるんですけれども・・・。
「フレディお兄様、カインお兄様!こちらはこの国での私の侍女をしてくれるアンヌです。国王陛下が直々に仕えるようにと私につけてくださったとても優秀な方なのですわ。」
わたくしはアンヌを紹介することにしました。
フレディお兄様が他のお嬢様がいたら腰砕けになるくらいの蕩ける微笑みでアンヌに声をかけます。
「あなたのような方がレーヌを側で守ってくれるとは。よろしくおねがいしますね。」
その言葉にほほえみながら膝をつくアンヌはこれまたお美しい。
美男美女って挨拶するだけでも視界の暴力になるんですねぇ・・・。
「私達の妹は可愛いんだけど少しだけじゃじゃ馬なんだ。あなたが見守ってくれるなら安心できるね。」
これまたカインお兄様がニコリとほほえみながらのたまいます。
ああ、この微笑みで大概の女性がうっとりとうっかりと恋に落ちてしまうところなのですが。
アンヌのすごいところは全く変わらないところだと思います。
同じく淑女の礼を取り、ニッコリと微笑み返すあたり素晴らしいです。
「くっ・・・そつがなさすぎないか?」
カインお兄様がボソッと口に出してしまわれたのを聞きとがめているだろうアンヌのすごいところは全く更に動じないところですわね。
「私などがナディアレーヌ様のお兄様がたでらっしゃる皇太子さまと宰相補佐の第二王子様たちのお目に入れていただけるだけでも光栄でございます。」
「うーん。私達に見惚れないのも好感が持てるな。」
これはフレディお兄様たちだからはっきり言ってもいいことであるとは思います。
「そんな・・・恐れ多くておふたりのご尊顔に見惚れることなど出来ませんわ。申し訳ありません。」
にっこり。
ああ、これはお兄様たちが悪いですわね。ふうっとため息を吐きながらアンヌの手をとります。
「アンヌ許していただけますか?お兄様方は過保護です。あなたを試すようなことをしたりしたことを許してもらえる?」
「ナディアレーヌ様、試すなどとおそれおおいことですわ。ただ。私は耐性があるというだけの話ですの。後は年の功というやつです。」
と、ニッコリ笑う。
ああ、お子様はおよびではないと。たしかにそうだろうけれども・・・。
「耐性・・・」
「耐性だと・・・」
お兄様たちが悔しそうにしてるのはもう流すことにしようかと思います。もう本当に!
「お兄様、わたくしは・・・」
「レーヌ、そんなに怒らないでおくれ。可愛い顔が台無しだ。」
そう言ってわたくしを抱き寄せるフレディお兄様と、そっと握ったわたくしの手を離さないカインお兄様。
周りのご令嬢方が固まったのをみて、ああ、この国でのカインお兄様の奥様探しは不発だとわかってしまいましたわ。
この反応を見てお兄様方はいろいろ判断されるのですが、わたくしに対する冷ややかな視線を投げかけたお嬢様がた、申し訳ありませんがアウトですね。
それならまだ好意的にきゃあきゃあ言ってくださっているあちらのお嬢様方のほうが・・・とおもったらカインお兄様の目もそちらにむいていますね。
「あちらのお嬢様は金髪の方が伯爵家のお嬢様。16歳。婚約者はまだいらっしゃいません。そのお隣のブルネットの方は侯爵家の一人娘の方なので婿をおさがしなので難しいかもしれませんが基本は政略結婚は望まない家系でございます。こちらも16歳ですね。
もうひとりの髪を巻いている金髪の方は同じく侯爵家のお嬢様ですが婚約者はいらっしゃいませんし性格も非常に穏やかな方です。歳は18歳。ちょうどよろしいかと。
あの三人の方々はそれぞれに家格も含めておすすめでございますしナディアレーヌ様ともお友達になれる方々かと。」
サラリとアンヌが情報を与えていく。
ニヤリと笑うカインお兄様の表情をみて、なぜかはわからないけどこちらも気に入ったのは間違いないと言った雰囲気です。
「レーヌ、お兄様は少しあの方々とお話をしてきたいんだが一緒に行くかい?」
「わたくしもですの?」
「そうだよ。こちらでもお友達はいたほうがいい。フレディ兄様、いいかい?」
「ああ、行ってくるといい。」
その声に押されて、三人を残しそちらのお嬢様たちに近づいていくお兄様。わたくしをエスコートしているので気は進まないもののついていくことに。
「お嬢様方、少しだけ妹を紹介してもよろしいですか?」
きゃあきゃあと騒いでいたお嬢様がたはきちんと口元を優雅に扇子で覆ってにっこりとわらってくれました。これはどこの社交界でも一緒。大丈夫ですよの合図です。
その後にお兄様はひとりひとりの手をとってキスを落としていきます。
まあ、絵になるったらありません。遠巻きのお嬢様方が息を呑む声が聞こえます。
それを合図に皆さま扇子をおろしてお顔を見せてくださいました。美しい。美の塊では?
金髪の髪をゆるく巻いた美しいお嬢様がわたくしたちにすばらしい淑女の礼をとってくださいました。
思わず見惚れてしまいそうです・・・。
美女ですよ美女!美しいです!!
瞳が薄いブルーの金髪碧眼の美女とはこのことです!!というかんじです。
なのに全く冷たい感じなんかしません。素晴らしい逸材かもしれませんお兄様!!!
「私はユーリス・ヴィッツベンと申します。以後お見知りおきを。」
にっこりとお兄様ではなく先にわたくしに微笑んでくださいます。ほほぉ・・・美しい微笑みです。
少し低めの落ち着いた声がなんとも心地よいです。
ああ、お姉様とお呼びしたい。大変お美しい!!!
「わたくしはナディアレーヌ・エミィ・オーウェンと申します。こちらは兄の・・・」
「カインです。お嬢様方妹をこちらに置いていかなくてはならなくて心配なのです。よかったら私の大事な大事な妹の話し相手になっていただけませんか?
わたしはこの後数日後にはエルロッドウェイに帰らなければならないのですが妹が家を恋しがり私達家族を恋しがってもわたしはすぐこちらには参れません。
愛しい妹に少しでも心強い友がいてくれたなら、私も安心なのです。お願いします。この兄の気持を皆さま組んでくださいませんか?」
必殺の微笑みくらいのわたくしでさえちょっとよろけるくらいのほほえみです。お兄様大盤振る舞いなさっております・・・。
いつもだったらこのあたりで自分を売り込んでこられる方々も多いのですが、この三人の方の反応を見るにそうでもございませんわね?
ん?珍しいかもしれません。
もうひとりの絹糸のような金髪の髪をサラリと揺らして、こちらも素晴らしい礼を取られたお嬢様が名前を教えて下さいました。
はあああ・・・。ため息が出るほどの美少女ですよ!お兄様!!と見てもお兄様もニッコリと笑ってみてらっしゃるだけです。美男美女だと美しいものに見慣れてますの?
わたくしもうドキドキして仕方ないのですけれども?!
「わたくしはカテリーナ・マクレーンズともうします。ええ是非!!わたくしも嬉しいです。」
オリーブ色の美しい瞳でわたくしをみてはニッコリと笑ってくださいます。ああ、声まで可愛い。
わたくしはどっちかというとエルロッドウェイでは希少種くらいの勢いで隠れていたり兄達に囲われていたりだったのでお友達がとてもすくないのです。というかサラくらいです。
え、わたくしお友達ができるのでは?つくれるのでは?わくわくとしてしまいました。
いつも我が国ではお兄様目当ての方はたくさんいらっしゃいましたがわたくし、期待してもいいのでしょうか?お兄様目当てで無い方がいらっしゃるのかしら?
にしてもかわいい!かわいらしいです!!
うっかりと違う扉を開けてしまいそうになったのですが、もうひとりのかたがくすっと笑ってらっしゃいます。それにしてもこんなにかわいらしく笑える方がいらっしゃるの?
なんとも豊かなブルネットのツヤッツヤの髪です。それに理知的な濃い茶色の瞳が笑うことにより茶目っ気まで引っ張り出してます!そしてびっくりする美少女じゃありませんか!!!
この国のほうが美男美女率高すぎませんの?
「私はエルローズ・グリルフォントと申します。私でよろしければぜひお友達になっていただけたら嬉しいですわ。」
ああ、声まで可愛らしい。びっくりする麗しさではありませんの?!思わず見惚れてしまいました。そうすると恥ずかしそうに目をそらしながらまたふふっと笑ってくださいました。
て、天使ですか?天使がいらっしゃいます!お兄様天使です!!!
そう思ってカインお兄様を見ると、ふと真顔になってらっしゃいます。
「ふむ。一番難しいところとは。腕がなります。」
「え?」
エルローズ様がふと私から目をはなしお兄様を見上げております。なんですの?この雰囲気は?
「カインお兄様?」
「ああ、ごめんねレーヌ。ちょっと考え事をしてしまったよ。でも兄はちょっと楽しいことがあったんだよ許してくれるかい?」
「ええ、お兄様。」
そういっていつもどおりお兄様の腕にすり寄ってしまいました。
きゃあ!!と声が上がりました。ふっと目の前の三人を見ると軽く震えてらっしゃいます。
わたくしがお兄様から離れると明らかに落胆したように眉が下がるので、わたくしはなぜか期待に答えなければならない気がしてお兄様の腕にくっついてみました。
すると。
目の前の美しいお嬢様方がニコニコとなさいます。
な、何故?
「お嬢様がたはどうやらわたしには興味が無いようですね。」
軽い苦笑いをしてお兄様が首をゆるゆるとふると慌てたようにエルローズ様が見上げておっしゃいました。
「いいえ!!申し訳ありません。そういうわけではないのです。」
他のお二人も扇子を緩やかにおろして軽く膝を曲げてらっしゃいます。
そんなことをなさらなくてもよいのです!やめてください逆にー!うちの国なんかちっちゃい国なんですからー!!
「良いのです。わたしのような小国の第二王子など・・・」
「いいえ!!そんなわけではないのです。失礼しました。ただ違うのですナディアレーヌ様があまりにも・・・」
「「あまりにも?」」
わたくしと兄の声が揃ってしまいましたがわたくしはどきどきしております。いつもだったら兄に近づくわたくしを目の敵にされますので・・・妹なのですけどもね。
カインお兄様はその後に続く言葉がわかってらっしゃるようでちょっとだけ笑うのを我慢してるような顔をしてらっしゃいます。
一体どういうことですの?
「「「あまりにもお可愛らしくて、お美しくて。眺めていただけなのです!!!」」」
三人の声が小声ではありますが重なったのでビクッとしてしまいました。
え?わたくしですか?お兄様ではなく?
不思議そうにいつもの癖で首を傾げてしまいました。
「だって、そんな美しい銀髪でラベンダー色の瞳だなんてみたことがありません!」
「それにそのドレス!素敵ですー。着こなしが難しいでしょうそのシルエット?」
「少し背がお高くてらっしゃるのも美しさを引き立ててらっしゃるしその美しいお声!」
え?わ、わたくしのことでしょうか?どうされたのでしょうか皆さま?
「でしょう?わたしの妹は本当に愛らしいのだよ。」
あ、お兄様素が出ておりますわよ?注意しようとしたのですがもう四人で話し始めてます。
「カイン様も恐れながら素敵な御髪でらっしゃいますけどナディアレーヌ様のあの髪はすばらしいですー!」屈託のないユーリス様の声が可愛くてめまいがしそうです。
「そうだよね、レーヌの髪の触り心地は最高なんだよ。しっとりとしているしね。」
くすっと笑いながらお兄様が私の髪をさらっとなでて揺らします。
「ナディアレーヌ様の姿勢の良さでしょうか?このドレスってシルエットが美しくないと着こなせないでしょう?素晴らしい後ろ姿では?」
なんとも落ち着いた麗しいお声はカテリーナ様。ちょっと耳元で聞きたいです。
「レーヌはなんと武術も嗜むんだよ。」
「え、医療大国で医療にも通じた皇女様だと聞いておりますのに武術もですか?」びっくりされてしまうじゃありませんかお兄様!!ジトッと睨むと私の髪をなで、さらりとつむじにキスして流れで軽く抱きしめてきます。
癖ですけど?これ、お兄様の癖ですけど?フレディお兄様だったらさらにぎゅうっとされますけど?!また三人がきゃあきゃあと・・・・だから何故?
「わが妹は自慢の妹だからね。美しいだけではなくて医療、経済、そして武術にまで・・・」
「お、お兄様・・・。」
いたたまれません・・・だって好きで武術やってないんです。やらなきゃなんなかった17年・・・
「それに美しい鈴を転がすような声ですしせも高くてらっしゃって美しいのですもの。わたくしは背も小さいから見上げると・・・。」
わたくしを見上げたエルローズ様が可愛らしすぎます。背の高いだけのわたくしからしたら小柄というのはとても素晴らしいことです。
ユーリス様はわたくしとあまり変わりませんが、カテリーナ様も小柄さんです。
羨ましすぎます・・・。
じっと見上げてくるエルローズ様を見ていると本当にわたくしいらない扉を開いてしまいそうになります・・・三人共がお可愛らしい・・・。
恐るべしドゥーゼット・・・。
そう思っているとエルローズ様たちが少し姿勢を正し、軽く膝を折っての淑女の礼をとろうとしました。それを止めるようにふわっと空気が揺れます。
ふわっと温かい空気がしたと思ったらやっぱり・・・。
フレディお兄様が後ろに立ってらっしゃいました。
いつもどおり癖ですか?癖なんですか?ここ他国ですけれども?
そう思いましたがお兄様はいつもどおりわたくしの背中から私を柔らかく抱きしめてきました。
それを顔を上げて淑女の礼を解いた途端、目の前で見ていた三人のお嬢様方がもう声にならない声を上げてらっしゃいます。
そうですよね、カインお兄様だけではなくフレディお兄様まで揃ってしかもその後ろにはロウがいますしねぇ・・・。
「「「尊い・・・」」」
尊い?
また聞いたことがないような言葉が出てきました。
三人は改めて淑女の礼を取りました。それを合図に私から手を離したフレディお兄様は今度は一人ひとり手を取りキスを落とし礼を尽くしていきます。
後一年もするとお兄様はエルロッドウェイ皇国の王になられるのですものね。
周りの視線も大々的に集まるというものでしょうとも。
「レーヌ、お友達はできそうかい?」
「お兄様!皆さまがよろしかったならわたくしこちらの国でもお友達として・・・お友達になっていただけたら嬉しい・・・のです・・・けどいかかですか?良いですか?お友達・・・。」
段々と恥ずかしくなってきてその上人見知りがでてきてしまってフレディお兄様の顔を見るとなんだか年が離れているせいかいつも甘えてしまいます。
「「「か・・・かわ・・・」」」
?いつもの癖で首を傾げると、三人がまた震えてらっしゃいます。大丈夫でしょうか?
「「「なりましょう!お友達です!!!」」」
「ありがとうございます。」
嬉しくてにやけてしまいました。わたくし三人もお友達ができましたの?本当に?!
嬉しすぎてニヤニヤと笑ってしまいました。それを見ていたはずのフレディお兄様が急に私を抱きしめてきました。
「レーヌ!!それはだめだ!」
「な、なにがですの?」
カインお兄様はちゃっかりとエルローズ様たちの方に向かって笑いかけてらっしゃいます。
「レーヌはこの通りとても無防備な子なんだ。よろしくお願いできますか?」
「「「はい!!!」」」
「それから、エルローズ様。」
と、カインお兄様が話しかけてらっしゃいます。珍しいです。複数のお嬢様がいらっしゃる中一人だけに声をかけるなんて不用心なことをなさるとは?
ふっとおもっているとフレディお兄様もちょっとだけ緊張したようなピクッとした動きをされています。
「あなたにダンスを申し込んでもよろしいですか?」
これにはわたくしもフレディお兄様もびっくりしました。え?自ら?と。
それに対してのエルローズ様の答えはシンプルでした。
「私でよろしければ喜んで。ただ、父とのダンスが先になりますがよろしいですか?」
これまたびっくりです。お兄様が二番手にされました。それを聞いたカインお兄様はこれまたニッコリと笑います。
「ええ、もちろんです。何番目でも構いませんよ。」
フレディお兄様がじっとカインお兄様を見て。二人が視線を交わした後フレディお兄様が似やっと笑いました。
「ならばレーヌ、ファーストダンスは私でも良いかい?」
「わたくしも踊るんですの?」
「なんのために来たんだい?レーヌ?」くすっと笑うお兄様にわたくしも笑いながら軽く胸の中に飛び込みました。
「もちろん喜んで!お兄様!!」
「ちゃんとカインとも踊ってあげてくれ。それからロウとも。」
「もちろんです。」
「おや、私ともおどってくれると?」
そう言いながらロウが話に加わります。アンヌは少し離れたところでニコニコと笑っています。
もうお話の方は済んだのかしら?あの三人でのお話も気になるところだけれどフレディお兄様のほうが大分食えない性格をしているから・・・いや、ほめているのですけれど。
ユーリス様もカテリーナ様もエルローズ様もなぜか両手をギュッと握りしめてらっしゃいます。
「どうかなさいましたか?」
わたくしが聞いたらもうふるふると首を横に振りながら三人共がもう目が潤んでるではありませんか。
びっくりしてお兄様の腕から離れると小さくあー!!ッと言われてしまったのでとりあえず。
とりあえずもう一度お兄様にくっついてみるとうんうんと、うなずきあっています。
なんなんでしょうか?流行りなのでしょうか?
これが正解なんですの?
「ご兄妹が仲睦まじくてこの世のものとは思えないほどにとても麗しいのですけれども。」
「ご兄妹三人共がお美しくてナディアレーヌ様はお可愛らしくてどうしたら?」
「それにあの肌の美しさ・・・何を使ってらっしゃるの?美しすぎて・・・。」
コソコソと聞こえる言葉はなかなかわかりませんが悪口ではないことだけはわかります。
お兄様たちがにこにこしてらっしゃるから。
腕にくっついているわたくしがお兄様を見上げるとこれで良いのかと言った顔で見てしまったことがばれてしまい・・・。
さらっとまたつむじにキスが落とされました。
合ってるということでいいのでしょう。
その一連の流れはもう会場の視線を釘付けにしていたのだけれど。
ナディアレーヌに気付かれないように兄達がその視線から守っていたことをアンヌは遠目で眺めて知っているし、ロウはそれが当たり前の生活をしていたからわからないのだけれど。
その三人が今日の主役であることはもう解りきったことだったので見られている事も当たり前の皇族からするとなかなかにどれだけの関心を集めているのかはナディアレーヌにはあまり分かっていなかった。
だがしかし敏い人たちはわかってしまっただろう。
わざと公開した情報もある。
エルロッドウェイ皇国の皇族の仲はとても良いこと。そして時期皇国の王が妹を溺愛していること。
そして時期宰相も妹を溺愛していること。
そしてその第二王子であるカインは独身であり、その関心を一人の女性に定めたことを。
そのあたりはすべての情報を上二人の兄達があえて与えた情報であり。
それはこの人にも痛いほどに解ったことだった。
ほう、そうきたか。
軽やかな牽制。自分の妹をやすやすとは預けないぞという先制攻撃のような。
だがそれに対しての答えはこの男には必要ないことだ。
たった一人の孤高の国王陛下。
「では、わたしも申し込もう。姫よ、わたしとも踊っていただけないか?」
さっそうと現れた美貌の国王陛下がみんなの関心をさらってしまった瞬間だった。
やっと出てきました。こっからの溺愛ですよ。無意識の溺愛。
がんばります。




