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わかりやすく伝えなければならないのならもう掴み取るしかない。

エルンがお兄ちゃんズの前でグダグダになるの巻。

「・・・・もうダメだ。」



「いやだめだって言われても。どうしてそんな状態になっているのか教えてくれないかエルン?」

軽く呆れたような声が響く。



少し低めの穏やかな声だった。

聞き心地の良い声だと思う。穏やかな声だし話しかたも穏やかだ。


前よりもずいぶんとくだけた言葉遣いをしてくれるようになったのが嬉しい。

王たるものにこのような口を聞いてくれるのは最側近か身内はほぼいないから同じ立場のものか。しかない。


この自分の目の前にいるのはその自分の立場と同じという数少ない気持ちが手にとるようにわかる人物。

銀色の目も眩まんばかりの美しい男性が半透明な状態だが目の前に浮かんでいる。



そう、目の前の美しい銀色の塊はフレディ・ディ・オーウェン。

医療国エルロッドウェイの第一王子にしてあと一年後にはその国を率いる人物であり。

絶賛自分の中で一番大切で一番愛しい女性の兄だ。しかもその一番上の兄。

生きている中で自分が気を使うだろう数少ない人間の一人だ。


この色と同じ少しこの眼前の男性よりももっと背を高く、少し男らしく男性味を足した美丈夫がもう一人いる。

その中身たるや自分の幼なじみのエドとよく似たいかにも宰相向きなこれまた美しい兄が一人。

くるっと探してみたが、カイン・ディ・オーウェンの姿は見えなかった。

どうせ後で乱入してくるのだろうとは思うが。



この目の前に広がるのはエルロッドウェイではできなかった映像技術を改良。

ドゥーゼットが引き継いで魔術で作り上げた魔道具から放たれる映像のようなものだった。

もちろん今現在進行系で会話ができており、録画ではない。


そう、エルロッドウェイができていたのは録画したものを送り、それを映し出すことだった。

それだけでも大変なことだったのだけれども。

でもここで改良を重ねたものは会話ができるようになったものだった。

画期的なものであり、今のところ同時に持っていたものを改良しあえた結果なのでエルロッドウェイと、

ドゥーゼットをつなげることしかできていないが・・・。



いずれは他国にもそれぞれが売り込むことになるだろうけれども今はまずはこの二国を結ぶのが最速で最大に

必要なことだった。

これを更に精度を上げることは両国の技術部の結集が必要となる。

魔術と魔法の違いはあるだろうが技術でなんとかカバーできるような問題のものでもなかった。

でもそれを解消する物質があるならそれを使い、それを使いさえすればなんとか技術力でカバーできるのだから

そうすべきだ。



目標はどこの国でも首脳部だけでもいいからこの技術を公の場で証拠として提出できるくらいの精度をもって

普及させること。

それが済んでから普通の国民にも遠く離れた場所にいる親族との連絡を取る手段としてなればいい。

それは両国でも一致している。



こちらは大国なので当たり前に領土が広い。そして色んな場所に中核以上の都市が存在している。

そこを結ぶことができれば移動費の負担減にもなる。

あらゆる意味でこの事業的な成功は大きいと見ている。

それに伴い、今回の夜会ではその部隊を引き連れてカインがやってくる。そしてまあ、カインはエルローズを

連れ帰るのだけれども。

カインはエルローズ(愛しい婚約者)と会話をするためだけにこの技術を作り上げさせたのだ。

画像の録画を送るだけでは事足りず、その時、その愛しい人の愛らしい笑顔を観たいがためにというのが

本当のこの技術向上の真髄である。



あらゆる意味で愛情は技術を向上させ、国を発展させるいい例だとわたしは思う。




だいたいこれを作るためにスーガイアのレアアースを巻き上げたのだったしな。

今回彼の国を夜会に呼んだのはこれが最後ということで、まあ最後のお礼といったところか。

もうスーガイアに必要なレアアースと磁場はない。そっくりそのままドゥーゼットが買い取ったからだ。

というよりも、こういった改良ができたらいいと思っていたものの、エルロッドウェイが持っていた技術ほどのものをドゥーゼットでは少し乗り遅れていたものだった。

そもそもドゥーゼットに磁場が足りなかったので、それをスーガイアから買い奪い、買い叩いた。

大体が王女が一国の王に媚薬を盛ろうとしたのだ。

この程度の貿易の利で動いてやっているのを感謝するべきではないかと思っている。

というかあの王女は即刻政略結婚でもさせてしまったほうが良いと伝えたのに彼の国は我が国に輿入れさせよう

などと軽く考えているフシがあるので。

この夜会を機にすべてを断ち切り、かの王女を破滅させてもいいとわたしは思っている。

というより、確実に破滅させる。

そして今後わたしに二度と近づかないように、存在さえ消してやろうかと思う。



何よりもナディアに危害が及ぶかもしれない。

自分はいいのだけど・・・吐くのはそれは嫌だが吐けばいいだけなんだからな。

まあ、そのへんは怒り心頭と言ったフレディがカインを焚き付けたという事実もある。



これも実は媚薬の広まりに危機感というよりも警告を与えに行った際に、なんとこの録画の魔力増幅が

幅が大きく、それはどうやら場所によるということを感じたフレディの勘だった。

思い立ってからはなんのために行ったのか?というほどに媚薬関連のことを伝えたあとはすっぱりと切り替え

滞在した時間を目一杯使って蝶を使い精度を上げて地盤、土壌の調査を進めた。



その結果。スーガイアのレアアースの磁力を帯びた土地。というか砂。にあるもの。そこに交じる鋼鉄類が

レアアースなのでは?ということになり、それを蝶が検査。

その上でジョルディ皇が「まあ、あの国とは二度と取引しないしねぇ。」ということで心置きなく自分たちの

試算を叩き出し。

スーガイアからのレアアースなら増幅できて、もっと大きく映し出せるのではないかと気がついたフレディが

我が国、ドゥーゼットに話と研究とスーガイアからの買いたたきを持ちかけたものだ。

フレディも流石に次期皇王。一筋縄では行かないといったのをまざまざと理解させられた。

そしてエルロッドウェイの蝶の精度の高さというと、我が国の影が隠密よりも暗部に特化していることが解り

この際エルロッドウェイにいっているキュリアに蝶の技術を叩き込んでもらう算段を持ちかけてみた。



流石に断られるかなとも思ったが、まあ、結果レーヌを守る力になるしねぇ。と、ゆるい回答をもらった。

なんとなくではあるがカインの顔が引き攣っていたのだけが気がかりだが・・・。

エルロッドウェイとの同盟はこちらも望むことだったので、ドゥーゼット的には少し抑えたものながらこちらは

皇女を望んでいるということもあり結納金も兼ねてあちらに利が7割向くようにと同盟を持ちかける。

その点はスッキリとあちらも受け取ってもらったので国同士としては国王と皇女の婚姻は約束されたもの。

と、形上ハリボテ的には成っているのだが・・・。



それにしても不愉快なのはスーガイアだ。


それにしてもエルロッドウェイもスーガイアに嫌悪感を持っていてもらって助かった。

同盟国だったらどうしようかと思っていた・・・。

エルロッドウェイもあの国の国力を削ぐのに国の利益も利権も道徳的嫌悪も一致していたのだからありがたいことだった。


自分を狙っているとわかっているあの王女にあわなければならないことと、美しいナディアを少しでも

危険にさらしてしまうかもしれない不安と。

それよりも先に・・・。



はあ。



婚姻の承諾が欲しい。彼女にまだ気持ちを問おていないのだ・・・・。

自分のヘタレ具合に頭を抱えそうだ。




フレディはアーリアに自分の一番かわいがっていた近衛騎士が心の傷を媚薬により負わされたということで

その王女の存在其の物を恨みきっている近衛隊長に進められて、スーガイアの王宮ではなく近衛騎士団長の伯爵家に滞在先を移したくらいである。

話を聞いた限り、腐りきっているな。と冷ややかには思ったが・・・。

粗悪な媚薬をどうしても手放さない第二王女に対しての抗議は今回はせずに薬を締め上げることにしていたエルロッドウェイだったのだけれども・・・。

エルンハルトとは別にレアアースではなく、普通に土に含まれている微生物のほうがエルロッドウェイには利権が多いと踏んでスーガイアの近隣諸国に探りを入れていた途中だった。



そう。小国とは言えドゥーゼットに持ちかけたものと別の部分でも利幅を取ろうとは考えている。

そうしなければ質の良い薬など作り続けることはできない。

粗悪品を作るなんてもってのほか。それよりは質の良いものを取り入れ少し高くても良い薬を作り提供する。

そのためにはやはり国力とは別に資金も必要なのだから。

そのあたりのところはエルンと話はつけているが、もともとが大国のドゥーゼットはそちらの方には全くというほどに興味を持たなかった。

それよりも、スーガイアを潰して、自分の領土としようか・・・そうすればフレディも楽では?と、くすくす笑いながら言うエルンにこっちも笑顔でそうだな。と答えたくらいだ。


国力をまずそいでやろうか。そう言いながらいい顔で笑ったエルンはエドに振り返り、エドもそれはそれはいい顔でうなずく。これでもうスーガイアの運命は決まった。

この二人に睨まれて国を落とさない王がいるとすればよほどの強国か戦争がうまいか政治がうまいかだ。



鼻で笑うほどにスーガイアはそのどれも持っていない。


エルンの意図を組んでエドはまことしやかに噂を広めていく。

そのなか、ドゥーゼットがレアアースを買い取り、もはや彼の国にはなんの価値もなくなってきた。ということがまことしやかに近隣諸国だけではなく、どこの国でも囁かれてきた。

これを機会にあの近衛騎士団長を懐柔することを選んだフレディは更にエルンハルトが全てにレアアースを

巻き上げられるように手配をした。

最初は国のことを考えて固辞しようとしていたのだけれども、繰り返される近衛騎士団に対する王女の執拗とも言える手を出されること。

それを矜持を叩き折られかねない行動を取られ続ける。その繰り返しに近衛騎士団全体が疲れていた。

何故国王が側室だけではなく愛妾、その他にも連れ込んだ女性に薬を盛るのを見ても口が出せないのが騎士なのだ?と。

皇后ももはや国王に愛情がなく見知らぬ男を連れ込んでいるのを護衛するのももう心が折れそうな若者が続出している。

その上、第二王女は顔の良いものを見てはちょっかいを掛けてくる。



一番最初に媚薬を盛られた騎士は手足に枷をつけており、体を触られたが媚薬が効いている間に第二王女は触るだけ触って、一向に思うようにならなかったため飽きたといい部屋を出いていった。

実はその騎士は薬を盛られそれでも王女に手を出すまいと自ら足を縛り口を使って強靭な意思で手まで縛り上げた。

甘い言葉を吐き、、その手枷を解こうとした王女を拒否し続けたし口でギリギリと縛り上げたため血が滲んだが女性の力でその手枷は解けるものではなかった。

騎士として矜持を折られかけ絶望に陥ったその近衛騎士を騎士団長が助け出したときにはもう媚薬により意識混濁に陥っていた。

その騎士を目をかけていたのは騎士団長の姪の婚約者だったからもあるが、その婚約者たる姪は同じく近衛騎士団の女性部隊の小隊長だった。


実は第二王女が自分の婚約者に粉をかけようとしているのに気がついていたその小隊長は何があっても大丈夫なように心積もりはしていた。

でもこれはない。騎士としての矜持を叩き折るようなこのようなこと・・・。



騎士団長に呼ばれ説明を受けたときは怒りでどうにかなりそうだった。と、彼女はいった。



部屋には入らないほうがいいと言われたが、媚薬を使われたのだからどういう状況なのかはわかっている。

くしくも発見が遅かったため、媚薬が回りきっていて解毒薬の効きも悪かった。

婚約者なのだからそれなりのふれあいはあったものの、もちろん男爵家の令嬢としてあとひと月先の婚礼の日まで体を許してはいなかった。

騎士団長にお願いだから部屋に入れてくれ。そして私達が出てくるまで誰も部屋に近づかせないでくれ。と頼み、部屋に入った。



「ティア・・・ティア・・・」

泣きながら自分の名前を呼ぶ、愛しい人に近づく。

混乱しているのか手枷も足かせも外されているのに手を固く握りしめて指には歯型がたくさんあった。

手首には自分で締め上げた傷が。そしてきっと頬の腫れは第二王女に頬を叩かれたのだろうと思った。

「ダント・・・。」

その声にビクッと震えた彼は弱々しい声で「近づくな。俺に触れないでくれ。お願いだから出てくれ。」

そう言って泣く。



もう自分は25歳になっていた。自分が近衛騎士として王族に仕えることに固執をしていたのかもしれない。

ダントはずっとずっと自分を好きでいてくれたという。

もう長いことずっと。

自分よりも少し年下の柔らかな金色の髪を持つ、愛しい婚約者。自分のワガママのせいで彼を近衛騎士にとどめ続けた。

本来なら婿に入るはずのダントは男爵家の仕事も学び始めていた。

結婚を機にダントは騎士団の第二王女付きから離れ、普通の第四騎士団の小隊長になり、そして引退する予定だったのだ。

あとひと月だけ先の、それだけの時間を・・・「最近第二王女が苦手なんだ・・・。」と言っていたのをわかっていたのに結婚する時に第二王女付きというのは確かに名誉なことだった。

それだけのためにわたしはあとひと月だからとそのままでと軽く考えていたんだ・・・。



涙が溢れる。


部屋に鍵はかけた。

「ダント、手を握ろう。」

美しい顔はもう涙でぐしゃぐしゃで目はギラギラとしていたけれどそれでもダントは頷かなかった。

「お願いだティア。お願いだから離れてくれ。俺は大丈夫だから触らないでくれ。俺は君にひどいことをしてしまう・・・。」

ティアはそれを聞かずに隣に座る。「お願いだからやめてくれ」と、泣くダントの頬に手を触れた。

「頼むから・・・お願いだやめてくれ・・。」

媚薬が回りきっていてなおかつ手枷もないのに、力いっぱいベッドのシーツを握りしめて避ける。

本当ならもう押し倒してしまいたい。あの忌々しい女じゃない、ここにいるのは自分の婚約者で愛おしい人だ。

それだから混乱した。どうしてティアがここから逃げてくれないのか。



ベタベタと触られたあの手の感触を思い出すとどうしても吐き気が催す。

それを上書きするように、愛おしい人が頬に触れる。ああだめだ。こんなことで傷つけたくない。

あとひと月我慢すれば、これまで待ったのだ。どうしてもこんなことでこの人を傷つけたくない。

それだけでもう気が狂いそうだった。



「わたしを愛しているか?わたしが媚薬を抜く手伝いを・・・。」

「それはだめだ。お願いだからやめてくれ。俺は第二王女から自分を護りきった。手を触れないように、体を丸めて自分の貞操だって護りきった。でもだからってこれは嫌だ。お願いだ・・・」

「だって・・・。」

そこまで言ってティアは考えた。そうだ。媚薬を抜くのは別に体を許す以外に方法がないだろう。

そこまで考えてティアは思いつく。そう、アンヌと同じ方法を。



鍵を開けありったけの水を持ってきてもらいバケツを用意する。

悲壮な顔をしていた騎士団長が扉の前にいたのだけれど間をおかず出てきた姪が「吐き切らせる。」と言い切った時に決めた。

この姪の部隊を第二王女付きにする。そしてダントはこのまま第四騎士団に希望通りに下がらせる。

そしてつつがなく婚姻を結ぶまで、ここを乗り切らなければならない。

ほとほとこの国の王族が腐っているとわかってしまった。今後見目の良い者には解毒薬を渡しておくことにすることも決定事項である。

自国の守るべき貴人から自分たちの身を守るために解毒薬を持つなどということになってしまった自分たちは

この国をどうして守っていったら良いのかという絶望が襲う。



それからこの騎士団長は第二王女が気に入りそうな国賓は必ず自分の屋敷に招待するようになった。

そしてそれをフレディは受けたのである。




その後ダントはきちんと吐ききって、解毒薬も吐ききっただろうがそれでも大量に水を飲み吐き続けた甲斐があり二度目の解毒薬が少し早く効いた。

ダントは第二王女から自分の貞操も守り抜き、愛しい婚約者も自分から守り抜いた。

ティアは吐き続ける婚約者を叱咤激励し、鋼の意思の強靭力に感嘆し、愛していると泣く婚約者を今以上に

こよなく愛した。


今はダントは男爵家の次期男爵としての仕事をしており、ティアは第二王女付きになりどのようなことも許さないほどに厳しい警護を展開している。

二人の子宝にも恵まれたが、このたび満を持しての復帰とドゥーゼットへの護衛も兼ねている。

ティアは地位も上がったがけしてダントの騎士の尊厳を踏みにじったことを許すわけではない。

フレディからの申し出を積極的に受けたのはティアもダントも騎士団長も同じであり、国主が変わるほうがよいだろうというのがもはや答えでもある。



かの大国の太陽たるドゥーゼットの国王陛下。エルンハルト・ディ・ドゥーゼット。

第二王女が懸想したのは我が夫に少しだけ恐れ多くも雰囲気が似ているからだという話を聞いた。

だがティアはわかっている。ダントが似ていたから。ただ同じような金の髪を夫が持っていたから。

ただいたずらにあんなことをされただけだと。



けして許すものか。



愛するものを護るためであれば喜んで鬼神でもなんにでもなろうではないか。



もうスーガイアに第二王女を救おうとするものは皆無だった。




「だいたい、あと少しすればわたしが行くと言っているのに。」

そういって横から現れたのはカインだった。

どうやら不機嫌らしいのは、エルローズ嬢になかなか会えないからだろうか。

「エルローズ嬢はこの間ナディアとお茶をしていたぞ。元気そうだったが・・・。」

「他の男の口から愛しい人の名前を二人も聞くなんてそれだけでとても不愉快になるな。」

こら。というフレディの優しい声にカインはふてくされた顔をしている。



相変わらずこの年下の義兄になろうとしている彼は自分の事がまだ気に食わないらしい。

だがわたしは自分が末っ子だったのでこの気の強さや食って掛かってくるのがとてもかわいい。

・・・可愛いと言ったら怒られるだろうか?

だがしかし同じ年のフレディには思わないがカインは本当に可愛らしいのだ。



「ローズにドレスを送りたかったのに・・・自分の色に染め上げたかったのに。」

ああ・・・それが不機嫌の理由その一ということか。素直だな。

「大丈夫だ。そちらはナディアと一緒に作ることになっているし、義姉妹になるのだからとおそろいのような

ものになると聞いている。」

わたしがそう言うと、それを聞いた途端にカインの機嫌が良くなったのがわかる。

そんなところは年相応に本当に可愛いのだな。と、何とはなしに思い頬が緩む。

それを見ていたフレディが「そうだろう?かわいいだろう?」と少し自慢げなのが何とも言えないが。




「ああ、早く会いたいんだけど・・・。兄上、もうドゥーゼットに行ってもよろしいのでは?」

その声にわたしはうなずくと、フレディが頭を抱えながら「エルンまで甘くしなくてもいい。」とぼそっと

つぶやく。

カインを向き直ると、フレディは少しだけ申し訳無さそうにそれはまだ駄目だろう?と小さな子を諭すように

柔らかな声で告げる。

「カイン?何を言っているんだい?君にはスーガイアの締め上げのための貿易破棄の手続きがもう少し残って

いるときいているんだけれど?きっちり締め上げなくてはレーヌが困るよ?」

言っている内容は酷くえげつないが国王や皇子たちのはなしなんて内容は大体仕事上殺伐としている。

「もうそれはほぼ出来上がっています。父上に許可はいただけたのに兄上だけが許可を出していただけない。

ずるいです。兄上はキャロルがそばにいるからって寂しくないではないですか。ぼくは寂しい。

エルローズに会いたいのです!」

「カイン・・・。」

苦笑いをするフレディに少しだけむくれた顔をして少し低めの声でボソボソとカインが言う。



「だって・・・離れていると寂しいではないですか。ぼくは手で触れて抱きしめて、そばにいて欲しい。

それに離れているとあれ程に愛らしいエルローズに悪い虫が付きかねません。

ぼくがこれほどに焦がれるほどの女性ですよ?あれ程に愛らしいエルローズに惚れない男がいるとは思えません。」

それを聞いたわたしはふふっと笑ってしまった。

それを聞いたカインがその声に反応してわたしを睨んでくる。

ああ、本当にこの義兄になる男はなんて愛らしいのだろうか。



「エルン。なんだろうかその笑いは?ぼくを馬鹿にしている?エルローズのこと?」



本当に気を抜いているのだろうか・・・?すっかりと一人称がぼくになってしまっている。

それを嬉しく思っているとすかさずフレディがカインに言う。

「カイン?ずいぶんと義弟に気を許したものだね?一人称がぼくになっているよ?」

それを聞いたカインはさっと目の周りに朱をちらした。

「気を抜いたわけじゃないです・・・ちょっとだけです・・・。」

わたしよりも背が高いだろうこの年下の義兄は拗ねたりすると本当に可愛らしい。

ナディアが言っていた。


カインお兄様は拗ねるとすごく可愛いのです!と。

たしかにわたしもそう思う。



「それよりもエルンこそどうなっているのかな?まだレーヌからなんの言葉も帰ってきていないよ?

まさかまだ攻めあぐねているとかいう状態じゃないよね?

うちに婚約の打診をして、婚約は成ったのにまさかまだ本人を落としてないなんてそんなそんな、ばかみたいなことはないよね?」

カインからの言葉にぐっと言葉を飲み込む。



「ど、ドレスは贈る・・・。」

それは当然じゃないかという4つに目にさらされて自分の不甲斐なさにちょっと焦る。

「ちゃんと婚約が成ったことは伝えたの?」

「今日伝える・・・。」

「今日?」

カインの剣呑な声にちょっとだけ首をすくめる。



「で。最初にもどるわけだね。どうしてそんなことになっているんだい?エルン?」

柔らかい声音でゆっくりとフレディに問いかけられる。

「どうやって言っていいかわからない。」

「は?」「はぁ?」

二人の声がどうしようもないなこれ。といった呆れを含んでいるのはわかる。



「フレディ兄様。どうやら義弟殿は本当に朴念仁というかなんというか・・・初恋もまだの箱入りだったと

いうわけでしょうか・・・レーヌが不憫でなりません。」

「なっ、慣れているよりは良いだろう?大体わたしには恋愛を楽しむという余裕はかけらもなかった!」

それを聞いた二人は少しの間、可哀想な子を見るような目をしながらも無理やり納得したようだった。

「まあ、慣れていないとは言え一国の国王なんだからいろんなことはちゃんと知ってるでしょ?」

「たしかにそうだろう。私達でさえそのような教育はあったのだから。」

「そりゃそれくらいはあった。ちゃんと解ってる。それを実践する場に出会わなかっただけだ。」

わたしのその言葉に二人は真顔になり。

その後に貴公子として失格なほど声を上げて笑い始めた。



「とりあえずは実践は後回しにしてもプロポーズくらいは早くしてくれ。でなければエルンの玉璽のつかれた

婚約証明証と婚姻証明証が無駄になってしまうぞ。」

「え?」

婚約だけではなく、婚姻証明を?

「ああ、父上と母上はレーヌが銀眼で生まれてきた時点でもう決めていたそうだ。

きちんとジョルディの名で証明書には玉璽が押してあるぞ。ああ、それから婚姻の儀はわたしが皇位についてから二して欲しいからまあ、二年を目処に・・・。」

「長い!!!」

思わず出た声に、フレディとカインはパチパチと目をしばたたかせる。




「兄上・・・この義弟、兄上の成婚と自分の成婚をぶつけてくるやもしれません・・・まだレーヌより

是という言葉ももらえていないのに。」

そう言ってクスクスと笑う。



「分かった。今から言う。今から言ってくるからな!次はこの場にナディアも連れてくるから!」




そう言ってエルンはくるっと踵を返す。





怒っていようが不機嫌だろうか、足音を荒らげることもなく優雅に進む未来の義弟を眺めながら二人は笑う。






「とっくの昔に妹はあなたのものでもあったし、エルン・・・あなたが望めば誰もそれを覆せないのに。

まったくどこまで優しいのだか。」

そう言って笑うフレディはカインを見てふふっと笑う。

「少し意地悪だったぞカイン?」

「だって兄上・・・エルンは100%レーヌの気持ちをわかっているはずなのにこの期に及んでまだ尻込みを

しているのですよ?ぼくのかわいい妹を奪うっていうのに情けない姿はもう見たくありません。」

そう言ってむくれるカインを諭す。

そうなんだろうか?エルンは思っているより100%なんて自信あるようには見えないけれど・・・。

まあ、いい。そこはなんとかしてもらおう。



「愛する人の前では人はだれも愚かなのだよ?エルローズ嬢の前でもいつもと同じように取り繕えるかい?」

それを聞くと顔をさっと真っ赤に染めてしまう弟を可愛く思う。

自分もキャロルに大概甘いとは思うがカインの愛情表現はその上を行く。

そしてエルンも大概だろうと思う。というか、片鱗がもうすごいからな・・・。




「どっちにしろ、次の通信よりも前にカインはもう発つだろう?」

その言葉に嬉しそうにうなずきながらソワソワとしている。

おもったよりも気分が上がっているらしい。




さて、それには・・・。





「彼の国の王女様を懲らしめなければならないね?カイン?」

「もちろん。やれることは全てやってくるよ。レーヌと・・・エルンのためだからね。」

「そう、ひいては私達のためだからね。」




認めたくないけどね。


と、カインは口の中でもごもごっとつぶやいたけれど。

心はもうドゥーゼットにあるようだった。




さて、気合い入れてもらおうか王様?




ニヤッと笑うとカインが悪い顔をしているとこれまたいい顔で笑っていた。








ということで、向かったところ木の上にナディアレーヌがいるという自体に少しだけ驚きつつ

かわいいなぁ、わたしの天使は。と本気でおもっているエルンハルトの一世一代の告白は次です。

できるだけ早く書きます。はい。

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