ラベンダーは精神安定するってはなしですが本当ですか?(護衛騎士以外の話だと思う)
アーノルドって若いのに苦労性。
これは一体何を見せられているのだろうか。
そう思っても仕方ないと思うと、姫様付きの護衛は思う。
となりの自分の想い人とも言っていいだろう姫様付きの侍女はなんにも感じていないようだ。
姫は確かにお美しい方だ。
銀色の髪に美しい紫のラベンダー色の瞳。
白い肌には傷もシミもひとつとしてなく。
そして、たしかに所見では見とれたのは確かなのだが・・・。
この姫、一筋縄では行かない。
そうわかってからはきちんと惚けることもなく警護できていると思う。
お美しい。それはたしかにわかっているのだがナディアレーヌ姫の美しさは恐れ多い。
大体それよりもサラの方に惹かれていることは自分でもわかっている。わかっているのだが。
それよりも・・・。
話が主のほうである。
一体これは何を見せられているのだろうか・・・。
わたしは生まれたときからほぼ毎日と言っていいほどエルンハルト陛下とお会いしているといっても
過言ではない。
恐れ多くも我が主は自分のことを大切な弟のような・・・半分は息子気分なのではないかとも思うが
そう思って接してくださっていると思う。
とてもありがたいことだけれどなんとなくまだ5歳そこそこに思われている気もする。
冷徹だの何だのと言わることもあるがそれは相手側にとって冷徹に感じるということであり、何なら
そう思ってしまうということはこのドゥーゼットの国にとって不利益なことをしているということの
現れではないかと思う。
仕事も早く、正確で平等で、しかも聡明。だがしかしそれを誇るでもなく淡々としていた。
その姿に勉強しなければと必死になったのは自分でもあり周りの人間達もそうだ。
エルンハルト陛下に私心はない。
ほぼ自分のお気持ちもない。
だからこそ戸惑わずにはいられないのだ。
話が主が・・・。
「姫、そしてこれは一体どういった原理でこうなるのだ?」
嬉々として授業を受けていらっしゃる・・・。
何をやっていらっしゃるのか・・・。
恐れ多くも幼き頃から側にいたからわかる。
陛下は姫を好ましく思ってらっしゃる。
何ならご自分では全く気づいてらっしゃらないのかもしれないが、かなりお好きだろう。
陛下が側に女性を置くだなんて母やカレンたち影でしかありえない。
あれだけのご容姿だ。女性が懸想するなんて当たり前に想像できるご尊顔である。
本人は全く自分の容姿に対してなんの執着も持ってらっしゃらないが、それは違う。
我が父も、我が兄弟も、エドも、陛下の周りの方はとんでもなくハイスペックだ。
周りの側近もハイスペックで美しい顔をしているから陛下には分かりづらいかもしれないが・・・。
その群を抜いてエルンハルト陛下はお美しい。
人外のというか。
人を惑わせる色香と硬質の宝玉のような美しさを併せ持つ方だ。
そしてそれを自分ではあまり重要視されていらっしゃらないようだから困るのだ。
幼きときにはあまりわからなかったが、物心ついた頃に陛下が夜会のたびに体調を崩されるようになり
だんだんとその理由もわかるようになってきた。
わたしなんかが飲まされたら大変なことになる媚薬だって陛下には利かない。
惑わされることはない。
ないのだが。
一日中吐き気に悩まされる。
もはや毒だ。
それが恐ろしく、自分もその成分の毒の部分だけを少しずつ摂取することにより耐性をつけていったので
なんとか惑わされることもないところまで耐性はついた。が。
エルンハルト様は耐性さえもつけられない。
薬が効かないということは。
毒も効かないということは。
耐性も効かないということだ。
つまりは最強の盾を持ち、最強の鉾を持つが、護りどころも攻めどころも相殺。
そういうことだ。
そのうちエルンハルト陛下は母たちを伴って夜会に赴くようになり。
少しずつ媚薬を盛られる機会も減っていったがゼロではない。
なんと女性の恐ろしいことかと思う。
だがしかし陛下はこの国一番の尊きお方であり、得難い人でもあるが人外の美しさと人を狂わせるほどの
存在に付き、己の足らずを理解しようとも手をのばす人間も多い。
本人にその気がなくても。
陛下を得ようとする人は後をたたないのだ。
だんだんと心をなくされた陛下はそれでもわたし達には普通に接することを望まれるし。
でもずっと願い続けていたのだ。
陛下には、エルンハルト様にも愛しいと思う方がいてもいいのではないかと。
そしてそれは・・・。
「これは、実は2つ方法があるんですが、圧縮して出す精油の方がそれはそれは成分的にも
良いのですけれど・・・。あとは溶かし出してまた集めるというこれがまたとってもめんど・・・
とても難しく我がエルロッドウェイでも秘術に近いんです。まあ、手間がかかるからっていう理由も
多いと思うんですよね、父のことだから。」
そういって姫が屈託なく笑う。
それを見て、陛下が一歩近づいた。
え?と思ったときには姫のそばに立っている。
ん?陛下が自ら近づいて、それも顔を近づけた・・・・だと?
驚愕に打ち震えるわたしを見て隣にたっているサラがボソッと呟く。
「へえ。半径40センチってところかしら?まだ御手は触れない・・・と。」
「なにがでしょう?」
思わず小声で話しかけてしまうとサラ嬢はわたしを見上げてニコっと笑う。
「あと少しですわねぇ。さあて、腕がなりますわ。」
そういってニコっと笑うサラ嬢の笑顔に少しだけ赤くなり、少しだけ引っかかるのはなんだろうか?
意識を護衛対象である姫の方に向けると、姫自体も何も考えることなく笑ったまま距離を取らないまま。
え?近くないか?
ん?
何かが引っかかる。
「陛下、実はこれはとっても簡単な方法ですの。こうやって窯に入れて水と一緒に熱しますでしょう?
香りが出やすいラベンダーを使っておりますけれどもこれに直にスチームをかけますと・・・」
そう言いながら細い管でつながった別のガラスに少しずつ貯まる水蒸気をそのほっそりとした指で指す。
「こちらが香り成分なんです。これを冷やすと良い香りのものができますの!!」
そういって本当に嬉しそうに笑う。
「ほう?そうなのか。」
その低い声が微笑ましいという具合に笑い声を含む。
「でも陛下、それだけではございませんのよ!」
そういって大輪の花が咲いたように微笑む。
周りのわたし以外の侍従と護衛に直撃したその微笑みは動揺をしないようにと訓練を受けているわたし達でさえ衝撃を受けるほどの微笑みだった。
陛下のお側には当たり前であるけれども数人がいつも付き従う。
大体は離れた位置にいるが、流れ弾のように姫の微笑みを受けたものには溜まったものではない。
見惚れるだけならばまだしも、うっかりと懸想するものが出てしまうかもしれない。
それにしてもあの笑顔はものすごい。
なんと罪深い・・・。
困ったなぁ・・・と、そっと息を吐くと、隣のサラ嬢が不思議そうに見上げている。
「あら。アーノルド様は平気なご様子です。まさか男性がお好きとか?」
「は・・・?」
何故好意を持った女性にそんなことをいわれないといけないのかとそちらの方に慌てる。
「な、なにを?」
「だって、レーヌ様のあの素の笑顔を直撃で受けて顔も赤くならないなんて。なかなかに珍しい。
ならば男性がお好きですか?と。」
「ち、違う!護衛対象だぞ?!姫は護るべきお人だろ?!それにわたしはちゃんと女性が好きだ!」
「はあ。まあ、どちらでもよろしいのですけれどもね。」
「どちらでもって・・・。」
思わず素になってしまった・・・。
「真面目ですねぇ。まあアーノルド様ご自身もお美しいご尊顔なので姫様の美貌はあまり効果がないと?」
「は?わたしの顔などありふれたもので・・・まあ、あの父と母のこどもだから多少は見苦しくは
ないかもしれないけれどそれがなにか近衛騎士に必要だと?」
「近衛騎士ともなると身分も見た目も整っていたほうがよろしいではありませんか?」
「・・・まあ、そういった部分もあるとは思うが、エルンハルト陛下はそういった意味でわたしや父を
そばに置いているのでは・・・。」
ない。
エルンハルト陛下にはそばにいて安心できる人が・・・もうわたし達家族とエドガルド様しかいないのだ。うまく言えないがそういうことだろうと思う。
ただ単に父や母、兄、それからエドガルド様、ああそれに影の者たちも無駄に美しい容姿をしている。
それだけだ。
だいたいわたしは騎士にしては線がまだ細く。
鍛えてもどっちにしろ分厚い鎧のような筋肉はつかないと思う。
父もそうだが、どちらかというと細身の部類だ。それが嫌だと常々思っている。
男らしい顔と、男らしい体。
それはずっと自分が欲しているものだが手に入る気が全くしない。
初恋の女の子には「美しい男よりもかっこいいほうがいい。」と言われて振られ。
憧れていた女性はあっというまに先輩騎士である、筋肉隆々の男らしい先輩と結婚が決まった。
それに・・・
ふっと目を向けると。
少し気の強そうな、キリッとした目に小さな口。庇護欲をそそるわけではない。
気が強そうにも見えるけれど笑うと可愛いサラ嬢も・・・
「はぁ・・・。」
わたしの憧れる女性はどうしてか自分のことは好みではないらしい。
なぜならサラ嬢に至っては、まったく自分のことなど見てもくれていない気がする。
すべてが自分の護衛対象、ナディアレーヌ様至上主義なのが見て取れる。
姫の周りは本当に姫のことをお好きな方で固められている。
「姫はどういった過程でこちらの方法を身に着けたのだ?」
そういった低い美声が響く。
もちろん距離はそのままだ。
女性にしては少し背が高い部類に入るだろう姫は大きな美しいアメジスト色の瞳をキラキラと輝かせて
嬉しそうに見上げる。
陛下も背が高いので自然と見上げるようになるようだ。
本当に絵のように美しい光景だ。
「わたくしは小さいときからお父様たちの・・・父たちの工房に入っていたのですわ。」
「ほう、工房に?」
「あ、工房と言っても・・・。」
そこまでいってこれは機密かとサラ嬢の方を向く。
サラ嬢はにっこりと笑って軽く頷く。
安心したようにまた微笑んで陛下を見上げた姫はこちらが息を呑むくらい可愛らしい。
後ろでうっと呻く声がする。
・・・陛下に聞かれないように気をつけてほしい。
きっと・・・ほら。
わたしには分かる程度ではあるが眉間に少しシワが寄っている。
陛下・・・仕方ありません。姫が振りまく笑顔のせいです。しかもさすが王族。
あまり表に出なかったとはいえ、人に見られるのにもなれている上に護衛は侍従、侍女はもはや
人だと意識はしていてもいて当たり前だと思ってらっしゃる。
それ故、ご自分の笑顔一つで人が固まったとはいえ・・・。
「「本当に罪深い・・・。」」
思わずサラ嬢と声が重なり・・・顔を見合わせて笑う。
「我が国では香りや、そういった成分も薬として扱うんです。」
嬉々として話し始めた姫はくるりと陛下に背を向けて良い香りを確かめようと近づく。
そのときに・・。
「危ない。姫、そのように近づいてはいけない。熱いのだから。」
穏やかに。
あくまでも穏やかに囲い込むように姫をふわりと抱きしめる話が主を見る。
・・・・エルンハルト様が・・・。
みずから御手をお触れになった。
自ら。
「ふふっ。」
サラ嬢がニヤリと笑う。
そう、本当にニヤリと。
「アーノルド様、明日からのお薬は夜の時間も姫が運ばれます。お付き合いくださいますよね?」
もとよりわたしの否定する立場にもない。
わたしは姫の護衛なのだから。
「わかっている。」
目の前で抱きしめている陛下の顔を見ると、当たり前の素の表情。
ああ、熱かったから手を引いただけかと思ったのに。
「ああ、姫から同じ香りがするな。わたしと。」
・・・・・陛下ーーーーーー!!!なんてことをーーーーー!!!
周りの侍従も侍女も近衛騎士もぐっと喉が鳴る。
香りに関する云々は、この国ではいわゆるその・・・夜を連想させるような言葉だ。
だけれども目の前の陛下からはそういった色めいたことは全く感じ取れない。
それどころか・・・。
「だって陛下と同じハーブを入れてるんですもの。同じで当たり前ですわ!」
そう言って屈託なく笑う姫様ーーーーー。
なんてこというんですかーーーー!!
赤くなったり青くなったりするわたしを見てサラ嬢が笑っている。
笑えばいい!笑えばいいさ!!
エルロッドウェイではアタリマエのことかもしれないが、このドゥーゼットでは大変なこと
なんだが?!
しかも陛下がわかっているのかわかっていないのかがまずわからない。
だって今までこんなことを言い出した覚えがないのだ。
本当に問い詰めたい。なんてことを仰るのかと問い詰めたい。
「そこまでだ、エルン。」
そういってエドガルド様が遮る。
隣の部屋の執務室で書類を揃えていたのだけれどいつの間にか入ってきていたらしい。
分厚い書類を抱えながらニヤッと笑っている。
「アーノルドが混乱している。そこまでだ。」
そういって父も口を挟んできた。
くそう・・・大人って・・・。
「何がだ?だが、仕方ないだろう?」
そういって軽く姫に顔を傾け、すうっと息を吸ったのを見た。
なんたる・・・
そう。
陛下は息を吸っただけだ。アタリマエのこと。
吸ったら吐く。そう、ただの呼吸。ただの呼吸だ。
「姫。このラベンダーと抽出中のラベンダーは同じなのか?」
「え?ええ・・・ほぼ同じですわ。」
「そうか。ならばよく眠れるだろう。あなたがそばにいてくれるよう・・・」
「あーーーっと。そこまで。」
そういってエドガルド様が再度遮る。
陛下が自然と顔を上げるのと同時に姫も顔を上げた。
軽く赤くなった頬は、これまた美貌を引き立てるもので頭を抱えたくなる。
「姫のためにわたしがグレープフルーツも持ってきました。こちらも抽出を?」
「本当ですか?」
その一言で姫の関心はそちらのグレープフルーツにすっかりと写ってしまった。
軽く腕の中から逃げるように身動ぎしたことを感じ取り不機嫌に成ったように見えた陛下は。
すっと微笑んで腕の中から姫を開放した。
「ナディアレーヌ姫・・・グレープフルーツは何に効くのだ?」
「グレープフルーツはまだわからないんですが見たことないのですもの!まず手に取らせていただいて
よろしいです?」
「もちろんですよ。さあ、陛下。とりあえずこちらの書類を見てもらいたくてだな。」
「エド。君とは少し話し合う必要があると思うんだが?」
自分の両手にすっぽりと入るその薄い黄色の柑橘類にもう夢中の姫はどう触ろうかそれしか考えていないようで。
「まるで子供のようだな。ナディアレーヌ姫は。」
そういって陛下は低い声でくくっと笑う。
そう、楽しそうに。
ああ・・・この方がひょっとしたら陛下を救ってくださるのかもしれない。
そういった気持で眺めていると。
「これはこれはわたしも本気で頑張らなければならないと?」
わたしに聞こえるか聞こえないほどの囁き。
ん?と陛下を見るとパチリと目があった。
その途端。
ニヤリと笑う。
・・・・ああ、これは・・・。
わたしも違う種類だがこれと似たような笑いを向けられたことがある。
わたしの場合は、まだ自分を俺と呼んでいたし10年以上前だから5歳にもならないくらいか?
そのときにどうしても膝にわたしと兄を乗せたい陛下が危ないからと言われてもあの手この手で
囲い込もうとしたときの・・・・笑いではないか?
自分は逃げるつもりもなく、陛下の膝の上に乗るのは楽しかったし一緒に遊んでくださるのも
そりゃあ嬉しかった。
兄は同じ日に生まれたんだから同じ進度で大きくなる。
だから兄のように慕っているエルンハルト様が今でも気を抜くと兄のように慕って知るわたしは
当たり前に甘えてしまうのだ。
エルンハルト様はとても気に入ったものに対しては際限なく甘いのだ。
それを手に入れるまで、少し企んだような笑いをすることがある。
我が双子の兄がなつくまでたしかあの顔をしていた。
・・・・・ああ・・・姫様・・。
確かに陛下は姫を気に入っていた。
それは、わたしに向けた親愛ではなく。
きっと、愛だ。
こうなった陛下から逃れることはできないだろう。
きっとわからない間に大事にされ、甘やかされ、わからない間に囚われてしまうだろう。
そしてきっと陛下も逃がす気もないだろう。
そういった気概を感じる。
目があった陛下は。
こちらの考えなんか当たり前にわかっていると言ったふうに鮮やかに笑う。
艶やかに。
ああ、姫様。
わたしは結果陛下の侍従に付き。近衛騎士につき。
陛下の幸せを一番重んじます。申し訳ありません。
艶やかに笑った陛下は、わたしに目配せをしながらしいっと人差し指を唇に当てる。
わかっているというふうにわたしは頷いた。
それをサラ嬢がニヤッとしながら笑っているとも思わずに。
「なかなか手強いんですけどねぇ、うちの姫様。」
あまりにも小声でつぶやかれた言葉は。
耳には入ってきたのに素通りしてしまった。
「グレープフルーツって食べられますの?」
そんな質問に遮られて。
「ああ、食べられる。ほろ苦く、甘く、少し酸っぱい。」
「まあ、それはどういった成分なのでしょう?」
「さあて、どういったものかな?それより姫。」
「はい、なんですの?」
「ナディアと呼んでも良いか?」
「ナディア?」
「そう、ナディア。レーヌと兄君たちも侍女も呼んでいるだろう?だからだ。」
「だからですの?」
「そう、だから。」
そういって笑う陛下は壮絶に美しく。普通のご令嬢だったら息の根が止まっているに違いない。
それにしてもさすがナディアレーヌ様・・・。
「レーヌと呼んでくださっても構いませんわよ?」
「違うよ、わたしはレーヌではなくナディアと呼びたいのだ。」
わからないと言った顔をしていた姫は答えを迷っているような気がした。
そりゃあ突飛だろう?急に一国の王から名前を愛称で呼ばれるなどと・・・。
「構わないのですけれども。」
か、構わないのですか姫?!
あっけにとられているわたしを他所に姫は楽しそうに笑いながら言う。
「そうですわねぇ、わたくしをそんな呼び方で呼ぶ方はあまりいらっしゃいませんわ。
そうですわね、お好きに呼んで下さいませ。」
「ではあなたも。」
「え?」
「エルと。」
「エル?エルンハルト様なのに?」
「ああ、あなたを誰も呼んでいない名で呼ばせてもらえるのだ。ならばわたしも一度も呼ばれたことの
ない名を貴女に。」
「エル様?不敬になりませんの?」
「なるわけがないよ、ナディア。わたしが望んでいる。」
ふっと癖なのだろう、軽く首を傾げる姫に合わせるように。
陛下も自然とくるっと首を傾げる。
「ならば、そういたしましょうか?エル様。」
そういって華が咲くように笑う。
ああ、だからもう本当に直撃で受けないようにしなければ。
それよりも陛下の微笑みとの相乗効果でもうこの部屋すごいことに成っているんじゃ?
・・・・・・なん何だこれは。わたしは一体何を見せられているのだ?
こんな絵になる瞬間、見ていいのか?
目眩がしてきた・・・。
一体わたしは何を聞かされ、何を見せられているのだろうか・・・。
ラベンダーの香りに包まれているが、この部屋の空気は甘い。
とてつもなく。
天井を思わず見上げる。
ああ、陛下は本気だ。本気で姫を手に入れようとなさっている・・・。
今までにない展開に頭を整理したいがそうにも行かない。
父たちが目を見開いているということは、ここまで踏み込むとは思っていなかっただろう。
ああ、もう我慢が効かなかったのかと。
そう思ってふっと目を向けた陛下は。
これ以上ないほどに幸せそうに笑っていた。
「ナディア・・・ふふ。そうか。わたしだけか。」
「みんなレーヌって呼びますもの。陛下は・・・エル様は変わってらっしゃいますわ。」
「変わっているか?だがわたしはわたしだ。」
「そうですわね、エル様はエルさまですものね。」
そう言ってほほえみ合う。
ああ。わたしの平穏はないに等しいな。
今後、わたしは姫の護衛として色んなものを背負うだろう。
姫を守ることと、物理的にもだけれど視線からも。
夜会にもきっと陛下はもう影である母を伴うことはないだろう。
もう他の人の手を取ることはないだろうと・・・何故かわかった。
父が気遣って視線を向けてくれていたのはわかるけれどそれを見ようとすれば陛下が目に入る。
本当になんて・・・幸せなものを見せられているんだろう。
陛下の本物がわたしの目の前にいる。
ならば・・・。
自分は二の次。さんの次。
気合を入れてみる。
これから一日三回これに付き合うのかと・・・。
陛下のお幸せのためだ。
そう思うと自然と笑ってしまった。
吹っ切れたような顔をしているだろうわたしは。
サラ嬢がわたしを見上げて楽しそうに笑っていたのも見そびれたのだった。
可愛がられたからこその素直な親愛の情とともに、エルンハルトなかなかエンジンかかってきました!(笑)




