バラのハーブティーが花開くとき
「わたくしが作りますわ。」
そう言ってしまったからには作り始めなければならないのですけれどもここには何もありませんわね。
そしてこの場所で作るとなると今後は軽食のようなものになってしまいますわね。
仕方ありませんわ。
「陛下、朝と昼はわたくしがこれから手づから作るものを食していただくことも増えますけれども毒味の方々はどうされますか?」
「ああ、わたしにはそういった類のものは効かないのだが・・・一応銀の食器を使うようにはしている。」
「それだけですの?食器の方の検分はされておりますか?」
その質問にはアズムディル様が答えてくださいました。
「エルンハルト陛下のお使いになるものはすべて検分がもちろんしてあるよ。それでも気になるようだったら一応目を通してみるかい?」
「申し訳ありませんわ、一応わたくしが作るとなるともちろん皆様の検分も必要でしょうしわたくしの食器を使うわけにもいけませんでしょう?でも料理は目からと申しますの。
できれば陶器を使いたいのですわ。季節に合わせ、時間に合わせ、食を楽しむことも陛下にはお知りになっていただきたいのですわ!」
その言葉に周りの皆さんが目をみはる。
ふと首を傾げると、レオルド様がおっしゃいます。
「陛下はあまり食が太くないのは確かだが、そのようなことを考えたこともなかった。」
「どのようなものを毎食召し上がってらっしゃったのかをまずは料理長に伺わなければなりませんわね。陛下申し訳ありませんが、朝はお薬のみお渡しすることだけはできませんわ。
まずはハーブ水がお好きならこれから温かいハーブティーをお入れいたしますわ。
あと料理長に連絡してもよろしいですか?すぐに用意できるような軽いものを伝えて作っていただきたく存じますの。」
「姫・・・どうしても食べなければならないか?」
エルンハルト陛下が少しだけ真顔になられておられますがそんな空きっ腹にお薬なんてとんでもない!
「はい。陛下、わたくしが仕上げをしますわ。ですから少しの間だけお待ちいただけますか?」
「・・・待とう。」
その言葉を聞いてレオルド様とアズムディル様が目を見張ります。
厨房に回ってもらおうと後ろを振り返るとアーノルドも驚愕の表情をしている・・・。
そんなに変なことを言ったつもりはないのだけれどどうされたのかしら皆様?
再び視線を陛下の方に向けるとニヤニヤと笑っていたアズムディル様が先程とは違ってにっこりと満面の笑みを讃えてらっしゃる・・・
ああ、年上の美しい方に微笑まれるというそのようなことがあまりにも不足しているわたくしはちょっとばかり目を見張ってしまいましたわ。
ああ、花が綻ぶようなといっても過言ではありませんわね。
金髪碧眼の麗しい方がニヤニヤと何かを値踏みしていた笑顔とは違った心からの笑顔だなんて、兄という耐性がなかったとしたらわたくしちょっとなにか口から出ていたかもしれませんわね。
するとその隣の黒髪の美丈夫がこれまた包容力一杯の麗しい微笑みを向けてくださっているではありませんか・・・わたくしなにかしたんですの?
あまりの美丈夫たちの微笑みにあっけにとられてしまいました・・・。
すると後ろからサラが助け舟をだしてくれました。
「レーヌ様、とりあえず打ち合わせをいたしますか?」
「あ、ああ、そうね。陛下、御前失礼してよろしいでしょうか?」
そういうと陛下は少し考えた風の表情をされたあとに首を横に振る。
「いや、姫はここにいてほしい。」
また場の空気が一瞬止まったような気がしましたけれども?
サラは笑顔でかしこまりましたとそれはそれは見事な礼をとりまして、アーノルドを見上げて言う。
「ではアーノルド様、わたしと一緒においでくださいませ。厨房の位置を教えていただきたく存じます。それから簡易的な火を仕えるもの、そしてお茶を取りに参ります。」
「え?あ、ああ。わかりました。」
アーノルドがあっけにとられているのにサラはすべて承知していますと言ったふうな顔をしています。
ああああ・・・なぜかわからないけれど行かないでーという空気を出してみましたがサラにふふっと笑われて鼻であしらわれてしまいましたわ・・・。
こうなると本格的においていかれてしまうことは決定。
わたくしは絶対にサラにはかてないのですもの・・・。
諦めたわたくしを見てサラはニッコリと笑いました。ええ、とても良い笑顔ですわ。
「陛下、では姫様をこちらにお預けします。けして。決してこのお部屋から出さないようになさってくださいませ。フレディ様とカイン様が心配されますゆえ。」
「わかった。」
一国の王にきちんと物申していくうら若き自分の半分ほどの年令の侍女に鷹揚にでもなく素直に返事をする陛下を見てわたくしびっくりいたしました。
サラの取った態度はどちらかといえば不敬にも当たるもの。
陛下に物申したと同じことですもの。わたくしが叱られても仕方ない状態。
そう思っていると陛下はくすっと笑ってわたくしに言いました。
「サラはとても優秀だとアンヌに聞いている。それこそ欲しい人材だと。それほどのものが言うことだ。わたしが引き止めたのだ・・・咎めるなどありえないだろう?」
そう言って軽く首を傾げる。
その仕草はとても可愛らしく感じて、わらってしまいそうになる。
わたくしも何らかのときに首を傾げる癖があると、自分では気が付かないけれどよく言われるのです。
そして人前でしないようにと言われていますの。
でも癖なのだから仕方ないとおもうのですわ、きっと陛下もそうなのでしょう。
後ろのお二人が固まってらっしゃるので。
「では、おとなしくして待ちますわ。サラ、気をつけていってらっしゃい。」
そういって送り出すと、明らかにしっぽの下がった耳の下がった幻が見えるほどのアーノルドが連れて行かれてしまうのをみて笑いが起きそうになるのを、くっと我慢しましたわ。
淑女の仮面を・・・・と思いつつ。
はたと。
そうでしたわ。普通に話してくれと陛下に言われましたし、取り繕うほどにわたくしに淑女スキルなんかあるはずがないのでしたわ。
わたくしの力が抜けたのを目の前の美しい男性方が見ておや?という顔をしたことはわかっておりましたがとりあえず許可をいただくことにしようかと思いました。
取り繕うがもうしかたありませんわ、わたくしここで長らく陛下の体調を見ていくことになるのだろうし・・・。
「あの・・・よろしいでしょうか?」
「なんだい?」
そういって微笑む陛下の美しいご尊顔がもう目の毒です。
どうして無駄にそんなに色気を振りまいているのかわかりかねますが、問うても仕方ないことなのでしょうと諦めることにします。
もう慣れるしかないということですわよね、仕方ありませんわ。
お兄様たちで耐性があってよかったということですわよね。
「あの・・・わたくし実はあまり社交もしたこともございませんし、どちらかといえば認めたくもないのですが多分箱入り・・・といった部類になると思いますの。あと・・・」
わたくしの言葉に目の前の方たちがそれぞれ頷いてくださいます。
ああ、バレバレですわよね、こんな小娘の振る舞いだなんて。
ということは。
もう、開き直ってもいいということではないでしょうか?
と、解釈することにいたしますわ。
「あのわたくし、多分普通の皇女や令嬢とは少し違うと思いますの。」
はて?といった疑問が前面から飛んでまいりますがもう仕方ありません。ここまで来たら隠し通せるとも思えませんし、もういいですわよね。
わたくしは陛下のお側に上がることを望んでいるわけでもありませんし、それを望んでらっしゃるご令嬢はたくさんいらっしゃるとわかっておりますし。
「わたくし、エルロッドウェイでは小さいときは体が弱く、そしてあの・・・大変に兄たちが過保護でしたので・・・。」
そこまで言うと目の前の方々がああ・・・といった様子でうなずかれます。
ああ、やっぱりバレておりましたでしょうか。そうでしょうとも。
「社交よりも学ぶことのほうがわたくしには楽しく、一応淑女の鏡といわれる母がわたくしの教師になり皇女として恥ずかしくない教育は受けてまいりましたが・・・。
わたくしはどちらかというと淑女教育としてのわたくしよりも、医療国の皇女ということに誇りを持っておりまして。」
その言葉に陛下は深くうなずかれました。
良かった・・・わたくしの国のことをわかってくださっておいでですものね。
それにわたくしは陛下の体調を整えるためにこちらに来たのですから。
「そのため、私は手ずから薬草を植え、薬草の世話をし、収穫しそれを薬にしていくという作業を自らやっておりますの。
ですので、わたくしはその薬草をつかって体の滋養を整えるためにこちらも手ずから・・・そのう・・・
お料理もいたしますの。侍女たちもおりますから難しいものや危ないものは怒られてしまうのですが。
ですが、わたくしはもちろんシェフと相談しながらメニューを作りますし、お料理を本格的にやってらっしゃる方々と競いたいわけではございません。」
そしてもちろん、お料理をして本格的に修道院に入った暁にはそのレシピで一攫千金・・・畑を作り広げるという野望があるだなんてもちろんいいませんとも!
思っているだけですわ。口に出さなけば許されるのではないかと思っております。
「それに・・・陛下はあまりご存知ではないかもしれませんが、何もお腹に入れないままお薬を飲むと
その反動でどんどん胃液・・・お体の中に入った食べ物を消化していくのですがその消化するものがお体の臓器の壁を溶かしてしまいますの。なので先に食べ物を入れて胃をびっくりさせないようにしてゆっくりとお薬を消化していっていただくのがよろしいのですわ。」
陛下とその後ろ二人もぎょっとした顔をしてらっしゃるけれどもまあ、要は胃が荒れるってはなしなのですけれどもね。
少し難しくお言葉にしたほうが男性の方は怖がってくださる率が高いのですもの。
ちょっと脅すくらいは・・・あらわたくしったら、脅すだなんて。
「それに陛下はお体が冷えてらっしゃるようにも思います。」
そういってもう一度手首を取ると陛下は一瞬だけ手をひこうとなさいましたがわたくしに預けてくださいました。
信用されてきた・・・ということでよろしいのでしょうか?
手首を取ると脈を測ることができますので一応脈をとってみているのですが・・・少し早いような気もいたしますわね?
「陛下?脈が少しはようございますわ。びっくりさせてしまって申し訳ありません。」
「い、いや・・・素手で触れられることになれていなかったので申し訳ない。あなたならば構わない。
ただ起きたばかりで頭が働かなかっただけなのだ。」
ハッとしましたわ。
そうですわ、陛下の尊いお体に何も言わずに手を触れるなんて。それに素手でなんて。
でも、素手でないと脈も分かりづらいし熱も分かりづらい・・・どうしたらいいんですの?
「こういうところだと思いますの。申し訳ありません陛下・・・。尊き御手に勝手にふれるだなんてなんて粗相を・・・どうお詫びしたら・・・。」
しょんぼりとしてしまう。
だいたいわたくしが触れているのは自国では皇と皇妃、皇太子と、皇子。
わたくしもだいたい皇女ですもの。
でもわたくしに声もかけずに触れてくる人などおりませんでしたしわたくしやっぱりこんなに世間知らずということ・・・咄嗟のときにわたくし対応が出来ないなんて・・・。
「ああ、いや。わたしも悪かったのだ。あなたに触れられて嫌なことはない。あなたはわたしに触れなければ熱も脈もとれないであろう?
それにあなたの手は心地よい。暖かな手だ。」
なんてお優しい陛下。
わたくし絶対に絶対に陛下を直してみせますわ。そしてわたくし絶対に平和な生活を治しきって手に入れてみせますわ!!
「陛下、ありがとう存じますわ。わたくし陛下のお身体を第一に考えますわ。精一杯お身体とお食事をわたくしにおまかせくださいませ。少しずつですがきっと良くなります。
わたくしを信じてくださいますか?陛下。」
サラリとわたくしの背中を髪が滑ったのに気がついた。あ、わたくしったらやっちゃだめだと言われてましたのに癖が出てしまっていたのですわね。
目の前の陛下を見つめると・・・。
「何故そんなに当たり前のことを聞くのだ姫?あなたを信じていなければわたしは部屋にも入れていない。」
そう言うと陛下も同じく不思議そうに首を傾げてらっしゃる。
なんだか嬉しくなってしまいました。似たようなところを見つけるととたんに親近感が増しますのね。
後ろのお二人が固まりまくってますがどうかなされたのかしら?
ひょっとしたら陛下も同じく首を傾げたら注意されるというのかしら?だったらそれも同じですわね。
更にニッコリと笑ってしまう。
コンコンというノックの音がして振り返るとサラとアーノルドが入ってきました。
「サラ!持ってきてくれた?」
「はい、レーヌ様。」
陛下の近くから立ち上がる失礼をわびて、サラに近づく。
「陛下、今からハーブティーを入れますわね。カモミールはお好きですか?ミントは朝は気分転換にはよろしいのですが本日はやめておきますわね。サラ、では出して。」
「わかりました。」
そう言って銀のトレーに広げたカモミールとりんご、それからクコの実を陛下とレオルド様、アズムディル様にお見せしました。
「クコの実はあまり知られていないかもしれませんが、とても優秀な実ですのよ。根っこは解熱作用が、葉っぱは風邪薬のような皆に親しまれているお薬のもとになりますの。
このクコの実は予防の効果がありますの。味もほんのりと甘酸っぱいのですわ。
こちらは本当はお酒につけると体を暖める効果がございますの。陛下はお酒は嗜まれますか?」
「あまり強くはないのだが、酒は嫌いではない。」
「そうですか、でしたらこちらでクコ酒を料理長とともに仕込みますわね。寝る前に少し紅茶やハーブティーに垂らすと体が温まってよく眠れますの。」
ほう・・・といった声がみんなから漏れる。
お湯を沸かしてくれているアーノルドと食器を用意してくれているサラを振り返り、トレーに広げたものの検分が終わるのを待つ。
りんごは今から薄切りにするのだというときちんとナイフも検分してもらえる。
次回からは必要なものをすべて整えてもらえるとのこと。助かりますわね。
アーノルドはサラにきちんと説明を受けたのか必死で給仕に徹することにしたようだわね。
レオルド様の目が優しい。うん、優しいお父様なのですわね。
「レオルド様。」
わたくしが声をかけるとハッとしたようにわたくしに視線を合わせてくださいました。
「レオルド様、アーノルドはとても良くやってくれますわ。本当は陛下のお側に居たいでしょうにわたくしに対してもとても親切にしてくださいますの。」
「わが愚息の事など、そうお褒めにならなくてもよろしいのです。」
そうおっしゃったあとにとてもにこやかに微笑まれたそのお顔がもう・・・
美形って怖いですわね。あまりのお美しさにうっと息が詰まりそうになってしまいましたわ・・・。
後ろから軽い咳払いが聞こえてきてサラがわたくしの意識をはっきりさせましたけれどもそのサラからして頬がほんのり赤いということはレオルド様の笑顔に当てられたと。
恐るべしですわレオルド様。
生ぬるい視線を感じましたが。主にエド様に。
ええ、合間にエドと呼んでもらえると嬉しいなとこれまた目が潰れるほどにキラキラとした微笑みで告げられたのでお断りはしたのですが、自分だけ距離がある!と分かりづらいことを言われまして・・。
今後たくさんお会いすることもあると思いますよ、姫様。とにこやかにキラッキラに言われてしまうと本当に弱いのです・・・
どう対応していいかわかりませんわ、年上の方の美貌の笑顔って。
エド様はキラッキラの王子様のような外見の割には中身がなかなかに曲者のようですわね。
レオルド様は硬質な美貌の騎士様でらっしゃるのに中身は愛妻家で子煩悩の方のようです。
エド様がレオルド様の微笑みに固まっている小娘たちをニヤニヤと笑っているのはわかるのですけれども耐性がないのですわわたくしには。
なのでその隣で微笑んでいる陛下のお顔が。
本当に笑っているのか笑っていないのか・・・判別が付きませんの。
「陛下?おまたせして申し訳ございません。ご気分が悪いのですか?」
直感を信じて伝えてみたのですが、一瞬んだけ目を見開いたあとにすっきりと笑顔になられました。
ああ、これは笑っているということでよいのでしょうか?
「ああ、姫。少し何故だろうか。胸がムカムカしただけなんだが、何故だろうな。」
「まあ、それはいけませんわ。急にどうなさったのでしょうか・・・。」
「ああ、姫様。エルンのことは気にしなくても大丈夫です。彼はちょっと拗ねているだけなんで。」
一気に砕けた物言いのエド様に後ろのアーノルドが固まっています。え?お名前を呼んだ?素でしゃべってる?ってぼそぼそっとサラに伝えているのが聞こえましたけども。
「拗ねてなどいないが?」
「さあ、姫様進めてください。」
そう言われてしまってはやらないわけには行かないし陛下には楽しんでもらいたいから。
「ではサラ、ティーポットにお湯を張ってね。アーノルドはそのハーブティーをこのスプーンひとすくいづつ掬ってきれいに混ざるようにこの銀のトレイの上で粉々にならないように混ぜていただける?
わたくしはりんごを用意するわね。」
そう言って指示をしたら私はりんごを手に取る。
側のボウルできれいにその林檎を洗い、清潔な布でキュッキュと拭き上げる。
赤みが強く、小ぶりのこの林檎はハーブティーのお供にはぴったりだ。
わたくしはそれを皮をむかないままに薄く薄く切っていく。弱火にしたフライパンに一つ一つ並べじっくりと火を入れた。
焦げ目がつかないようにゆっくりとゆっくりと白い実が熱で黄色みがかかり、甘みが増してきた頃に日を止める。
一度ポットに入れたお湯を今度はカップに注ぎ温める。
そして暖かくなったポットにカモミールとクコの実を入れた。
ゆっくりとお湯を注いでもらっている間にだんだんとカモミールの甘い、スッキリした香りが漂う。
まだ温かな薄切りのりんごをきれいにした手で五枚ほど重ね、くるくると巻いて行きカップの真ん中に縦置きにおいた。
さて、準備は整いましたわ!
「陛下、今日はお腹に入れるのは朝は間に合いそうにないので料理長が焼いたプレーンのスコーンがありましたの。サラが朝食にわたくしが食べたときに絶賛したのを覚えていて持ってきてくれたんです。
スコーンは半分に割って、それだけでもよろしいので食べていただけますか?」
わたくしが聞くと陛下は渋々とうなずいてくれたのですが・・・。
陛下は本当に朝、お召し上がりになりませんのね。これはなんとかしなければ・・・。
目の前にカップを置き、スコーンの側にりんごを丸めたものを三個置きました。
そして目の前のカップの中にも少しこぶりなりんごの丸めたもの。
これを見ている陛下の目の前で、カモミールティーをそそぐことにいたしましょう。
「陛下、カモミールはりんごの香りのような爽やかな香りがいたしますわよね。わたくし大好きですの。
さあ、カップを見ていてくださいます?」
そう言うと陛下は素直にカップを覗き込んでくださいました。
ゆっくりとそそぐと金色に染まったようなカモミールティーがカップに注がれるのと同時に・・・。
「ああ、美しいな。そうかバラか。わたしの好きなバラがこんなにゆっくりと咲くのか・・・。」
そういってフフッと嬉しそうな笑みをわたくしに見せてくださいました。
白磁のティーカップを用意したのはこのため。
白いカップの中でわたくしが作ったりんごのバラはカモミールティーをそそぐことによりゆっくりと解れて花開く。
カモミールの甘い香りと、りんごの爽やかな香りと。
さらに散らしたクコの実が赤く、キラキラとしたお茶の完成だ。
「陛下、どうぞ召し上がれ。」
わたくしの声に、ふと真顔になり。一度目を閉じた。
そして右耳につけてイヤーカフに触れたあと・・・。
エルンハルト陛下はこの上ないほどに美しい微笑みを見せてくれた。
うっかりと・・・。
うっかりとドキドキとしてしまったことは内緒にしたいところですわ。
この時代ってレンジがないからすぐ出来ないですよね、りんご柔らかくなんて・・・(笑)




