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自覚してしまえるほどに経験値などない(エルンハルト目線)

自覚なしの30手前の男性は気持ちがなかなかに複雑なようです。

どういうことなんだろうか。


何故そんなことを唐突に言われるのか全くわからなかった。



「惚れたとはどういうことだ?」

真顔で訪ねたのに二人こそが真顔になってしまった。


そんなに不思議なことを訪ねたのだろうかとじっと見つめて首を傾げる。



「お前それやめろ。」


そう言いながらエドがため息をつく。



「だいたいそんな色気垂れ流しながら、どういうことだ?じゃないんだよエルン。それになぁ、お前その癖やめろ。この二人だから平気なのであって、お前のそれは男にも効いてしまうんだからな!!」

は?全く意味がわからない。

大体色気なんぞ垂れ流していないだろうに。

時々エドもレオルドもわたしの癖のことを指摘するがなんのことなのかよくわからない。

憮然としているとレオルドに尋ねられる。



「エルン、あのすまないが聞いてもいいか?ナディアレーヌ様はエルンの体を治してくれるからそれだけの気持ちだということでお前の感情は間違っていないと?」

なんだろうかその聞き方は?


「特に彼女に対して不快感はない。」

「いや、不快感があったら困るだろう?あの態度で不快感あったらお前の人格をさらに疑うぞ?」

レオルドが何を言いたいのかはちょっとわからないが、ナディアレーヌ姫の事は確かに興味はある。

「面白い方だとは思う。謁見であったときにはきれいに皇女の様を見せてくださったが、先程・・・ああ踊っているときに話をしたときに・・・。」



そうだ。彼女は話し方が少しだけ子供っぽくなった。

興味があることについては目がキラキラしていた。

わたしの方を見て、わたしの言葉にウキウキして、わたしの香りを・・・・。



そこまで考えて。



はた。と動きが止まった。




香りをかがれたのではないか?わたしの首筋に近づいてきたような・・・。

そのときにわたしも彼女の香りを・・・。




なん何だこれは?

え、これは何なんだ?

不快ではない。これは珍しいことだ。それはわたしでも解っている。

でもなんだろうこの気恥ずかしさは。今まで感じたことのない気持ちだ。

わたしの行動は姫を不快にさせるものではなかっただろうか・・・。

そう思っている間に手のひらに汗を掻いているのを感じた。

その手をじっと見つめていると自分が焦っているのだろうかと感じて不思議に感じた。

ふっとレオルドとエドの顔を見るとエドはニヤニヤと笑っているしレオルドは心配そうに見ている。

わたしはどうかしてしまったのだろうか?

そう思った時に手のひらをじっと見てしまったが・・・。

そう言えば姫の髪からはラベンダーの香りがしたなと思った。

その瞬間首筋に、立ち上る自分の熱を感じる。



「え?これはなんだ?!レオルド!わたしは熱があるのかもしれない。」

「は?」

「な、何言ってんだろうかエルン?」

エドが驚いて近づいてきた。そのエドの顔を見ながら自分の体調に不安を感じてきた。

ああ、うかつだった。わたしに効く薬はないのに。

このままだと体調を崩してまた数日ベット縛り付けられることになるのではないだろうか・・・。

それは嫌だ。このあとに咳が止まらなくなるのも嫌だ。

「だったら何故手に汗を掻く?わたしは大体にして体温が低いのに汗を掻くだなんて熱があるのではないだろうか?・・・・わたしは風邪を引いてしまったのだろうか?」



エドとレオルドは真顔だ。



わたしが体調を崩せばフレディ皇太子とカイン王子の謁見と見送りができなくなる。

それではエルロッドウェイ皇国に礼を欠くことになってしまう。

姫をこの国に滞在させていただけるのだ。けして礼を欠いてはならないというのに。

「わたしはもう寝ることにする。」

「いやいやいや、ちょっと待てエルン。」



引き止めるエドを軽く睨むと、エドはちょっと座らせてくれ。

と、大分疲れた顔をしている。

何なんだ一体。



わたしの向かいにエドが座り、わたしの斜め向かいにレオルドが座った。

座ったからだろうか、手の汗は引いたような気がする。

一体何だったんだろうかこの体調不良は?



「あー・・・一応聞いておきたいんだけど。」

「何だ?」

そういったエドは言いにくそうにしていたがレオルドがエドを小突いたため渋々と口を開く。

「エルンって人を好きになったことある?」

「・・・・・」


じっと考えてみる。

ルーゼ兄様の隣りにいるアンジェのことは大好きだった。我ながら初恋だったのではないかと思う。

アンヌに対しても姉のように慕っているから好きだ。影のものたちも不快さは感じない。

ということは・・・。

「人くらい好きになったことはある。」


そういったのにレオルドが首を横に振る。ちなみにエドもだ。


「エルン、アンジェ義姉さんの事は省け。」

レオルドに言われて反射的に声を上げた。

「何故?」

「あれは好きになったのではなく、ルーが好きだからアンジェ義姉さんも好きだっただけだからだ。」

「というかエルンってちゃんと女の人が好きなの?」

エドがこっちがびっくりするようなことを言い出した。

「当たり前だろう?男が好きだったことは一度もないぞ?」

「じゃあ、この国にたくさんいる美姫たちに興味は湧くの?」

「美姫何ぞ居ないではないか?どこにいるのだ?この国にそんなものいたか?」

そのわたしの言葉を聞いて二人が深いため息をつく。



「まさか30手前にして初恋もまだだとは思わなかったな。」

は?だから初恋はアンジェだと言っているだろうに。

少しだけ不機嫌になるとじっとレオルドに見られているのを感じた。

いつものように首を傾げて話を促そうとすると二人に大声で言われる。



「だからそれだって!辞めろ。」

「エルン、解ってないかもしれないけど俺たち以外の目を見てそのくせを発動させるなよ。」

また意味もわからないことを言われた。

わたしは前髪をかきあげながらカウチに深く沈み込んだ。

そして不満をぶつけるように少し低い声で唸るように呟く。


「だいたい恋をする時間なんてわたしにあったとおもうか?

ルーゼ兄様がいなくなってからは全く時間もない。即位する前は身体が弱すぎてそれどころじゃない。

動けたら動けたで媚薬を盛られまくる。

わたしは自分ではわからないが外見的に少し整っているのだとよく言われる。

だからといって媚薬を盛ってまで既成事実を作ろうとされれば貞操観念も疑うし自分の貞操も気にせざるを負えない。

わたしだって男だからうっかりくらいはあってもいいとは自分でも思うが王という立場がそうもさせないだろう?

それにしろ媚薬盛られては翌々考えてくれ、その後吐き気を伴うんだぞ?できるか?」



それを聞いている二人は真顔になっていく。

そうだろう?だいたい媚薬を盛られたら普通関係を持ってしまうかもしれないが、わたしの場合はその後に吐き気に悩まされることを令嬢方はしらないのだからな。

そんな気になんてなるわけがない。というか物理的に無理だというものだろう?

その気になっている女性の目の前で吐いてしまうのはそれはなんとなく自分的にも嫌だしまずだから

媚薬をもる女性が嫌だ。

普通に考えたらわかるだろうに。

血気盛んなご令嬢は今でも色々と進めてくるのだ。

はああ・・・と深い溜め息をついてしまう。



「わたしに色仕掛けをしてこなかったり媚薬を盛らない令嬢はもう好いた方がいるか婚姻が決まっている。そんなところに横入りなぞできるわけ無いだろう。

しかもそんな令嬢たちに限ってとても素晴らしい女性だったりする。羨ましすぎるとはわたしも思う。

だからわたしに色仕掛けをしてこなかったりした家は自力で家を保てるか力があるか、普通の感性を

保っている貴族だ。だからといってわたしに結婚を勧めてくるのが悪いとは言わない。わたしは王だ。

即位したからにはきちんと配偶者を娶り子をなさねばならないことは解っている。

政略結婚であろうが仕方ない場合もあるとは思っている。」



そこまで聞いて二人は吃驚した顔をしている。


何故驚く?わたしだって国のことを考えているし誰かに王位が譲れないなら腹をくくる覚悟くらいある。

ただ本当に王位なんかいらない。もう誰かに譲りたい。

というかアンドレア叔父上に頷いてもらえないか必死で考えている。

ギリギリまでなんとかしたい。それまでに実は王位を譲りたい。

というか押し付けたい。



押し付けないけど。

そんな事許されるわけがない。

わたしは双眸が銀眼なのだから。

そして今の時点ではわたししか王にはなれないことは解っている。



軽くため息を付いて話す。

「わたしは王だ。ルーゼ兄様に託されたこの国を軽く考えられるわけがない。

だが最低限国母になる女性がわたしを貞操の危機に晒したり、そんな貞操観念なんぞもっている女性だった場合だが・・・。

どんな状態になるか解ったもんじゃない。だいたいその親も往々にしてろくでもない。

わたしに結婚してほしいなら正攻法で挑めばよかったのだ。」



その言葉を聞いて二人が更に顔色をなくしていく。

「いや、エルン・・・お前に正攻法って今更どれが正攻法だよ・・・。」

レオルドにしろエドにしろ頭を抱えている。なにをいっている?正攻法は正攻法だ。

「好きです。」とか「お慕いしています」から始まるなりわたしを不快にさせない方法があるだろうに。

だいたいわたしに好ましい好意を示せばいいだけではないか。




「普通にわたしが興味を持つ女性を伴えばいいだろう?わたしの恋愛対象は女性なのだから。」

「こんな話初めて聞くけど、きいていいか?」

エドにいわれてうなずくと、遠慮なく言われた。

「エルンって女性を見てかわいいなあとか抱きしめたいなあとかキスしたいなあとか思うの?」

「当たり前に可愛いなあとかはあまり思わない。人に対して美醜は問わないからな。」

「うん・・・それは何となく分かる。じゃあ次。抱きしめたいなぁとかは?」

「抱きしめる必要があるなら抱きしめるが?」

「義務かよ・・・。」

そういって座っているカウチからエドは崩れ落ちた。

「キスは、そりゃ必要があればするが?されそうになったことはあるが自らか?まあ必要なかったからな。」

一人でいると色々起こるのだ。抱きつかれたりキスをされそうになったり。

紙一重で躱しているが相手のギラギラしている目を見るといつも自分が獲物になったような気がする。

だいたい自分がキスをしたいときもあんな目をするのかと思うと自分が怖い気もする。



「なんだそりゃ・・・。」

レオルドまで崩れ落ちる。



大体人をなんだと思っているんだ?必要に応じれば結婚することもできると言っている人間に対して

抱きしめるのもキスもそれ以上も義務だと思えばできないことはないだろう?

国のためだと思えば国母になる女性に対しては心広く扱えるのではないかと思う。


多分。



わたしの表情を見て在々と私の心を読んだような顔をする二人を見て不思議だ。



その時ふっと思った。

わたしと同じ、銀の瞳を持つ姫。そして同じく隠し通している姫は・・・。

あのラベンダー色の瞳を思い出して考える。

どうしてそういえば姫は平気だったのだろう?


それよりも今はこのことだ。


「だいたい今の状況のわたしに正攻法で来る令嬢は減ってきたぞ。皆嫁いでいくからな。

それに皆大体は顔見知りだ。

だがしかしヘザー嬢はわたしの中ではダントツに貞操の危機を感じさせる人物だ。

そんなわたしがどうやってヘザー嬢と恋に落ちろと?無理ではないか?

何しろこの国の令嬢方は一部を除きハンター並みにわたしを狙っていることくらいは解っている。

国王の地位がそうさせるのであろう?後ろに控える貴族の親もほくそ笑んでいるのが嫌だ。」

わたしがそう言えば、二人は確かに・・・。と落ち込んでしまった。



「だいたい、だったらエドの子をわたしの後継者にしてもいい。」

吃驚したエドが頭を抱えながら叫んだ。

「やめてくれ!天使を何故魔宮にならねばならないんだ?!」

どさくさ紛れに魔宮とか言っているけどかなり失礼だからな。



ここは魑魅魍魎が跋扈するただの王城なだけだ。



「アーノルドは駄目だぞ。」

そう言って苦笑いするレオルドには笑って答える。

「ああ、可愛いアーノルドにはいずれ近衛騎士団長をしてもらわねばならないからな。」

「ええぇぇ・・・具体的すぎるぞもはや・・。」


アーノルドはかわいいからな。見ていて和む。一生懸命だし。



「そうだ、アーノルドは明日からナディアレーヌ姫の護衛につくのだな。よし明日会いに行こう。」

「いや、どの王様が自分の近衛なりたての騎士の働きを見に行くんだ?お前は執務室で、ここで!!

まてばいいだけだからな!!」



レオルドが頭を抱えているが何故だろうか。



それにしても。




姫はヴェリディーフローラを知っていた。

緑の花は季節が冬に向かう時期に赤く色づく。

エルロッドウェイは我が国よりも寒い国だ。

彼の国では最初から色づいているのだろうかそれとも緑のままなのだろうか?


そうやって変化するものをわたしは美しいと思っている。

同じ場所にありながらも、同じように形を変えなくても色を変えるだけで違うものになれるように。

彼女もそうであるならいいと思った。



わたしの興味を引く。

わたしのことを男としてみていないことだけはわかる。

だからこそ心地よく、だからこそわたしはなぜか安心して彼女に接することができる。



わたしの命を救うために現れた。


わたしのための銀の瞳を持つ少女。




あのときの小さな手を持つ少女は、目を引くほどに美しくなったのだろう。

美醜を問わないわたしでさえ、彼女の美しさは理解する。

あの髪・・・髪飾りとは違う逆に結われた方のあの髪の形作るのはテスカの花。

女神が降らせたあのテスカの花は美しかった。


それと同時に思い知らされた。



わたしが望めばという甘い甘言に飲まれてはならない。

彼女が望めば手放せるようにしなければならない。

それが何故だろう。何故こんなに不快なのだろうか。



彼女から堕ちてくれたならいいのに。




そう思って。





一気に顔に熱が集まった。

わたしは何を思った?なんてことを?

わたしが欲しているようなそんな抗いがたい熱を感じているのか?

わたしは・・・わたしは何故彼女にこんなに固執するのだ?


「レオルド!おかしい!わたしの体調は絶対におかしい。何故だ?どういうことだ?

やはりわたしは熱があるらしい。寝る!!」

まくし立ててカウチから立ち上がったわたしを見てびっくりしている二人が目に入る。

「は?エルン?!」

「ど、どうした?!」

どうしても自分が一瞬でも考えたことを見つけられたくなくて。

なんとなくどうしたらいいかわからなくて。


驚く二人に背を向けて寝室に逃げ込んだ。





ドアを締めたあとに。


熱くなった頬に手を当ててため息をつく。





堕ちてこいなんて。誰にも思ったことがなかったのに。





なんなんだろう、これは。




気持ちよりも身体が先に反応することがあることをエルンはまだ知らないのですが

これからたくさん知っていくことになります(笑)

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