〜巨大な影〜
「う〜〜ん…」
俺はベットから上半身を起こして伸びをする。
心地のよい朝だ。窓から入る光が俺の眠気を覚ましてくれる。
ベットから降りて少し歩いてみる。
クローリクの言う通り、腰は既に完治しているようだ。
しかし昨晩の夢はなんだったのだろう。
記憶にない女性が異様に懐かしいかった。あれはこの体の記憶なのだろうか?
当たり前だがやはりこの体にも親はいるのか…
考えていてもしょうがないと思い、とりあえず部屋のドアを開けてリビングへ出る。
すると湖へ行って来たのかところどころ濡れて毛がペタンとなっているリュコスと会った。
「おう、おはよう。随分早いな。」
そう言うとリュコスは昨日と同じように部屋に戻り、着替えなのだろう、リュコスの上着であろう大きなタンクトップ、今の俺から見たら脇がガバガバのワンピースのような服にしか見えない物と前と同じタオルのような物を投げてきた。
「すまん!今日服買いに行くから、悪いが少しの間コレで我慢してくれ。」
リュコスはひきつった表情で顔の前で必死に両手を合わせた。
俺は哀れむような目を向けつつ首を縦に降ると、リュコスは安堵したようなため息を付き、口を開ける。
「よかった…ここでまた泣かれたら俺、カニーに殺されちまう所だった…
俺、裁縫なんて出来ないし子供服なんて持ってないからさ…」
カニー恐るべし。
そんな事を思っていると、再度リュコスは口を開いた。
「じゃあ俺、飯の用意しとくから水でも浴びてこい。水温低いから気をつけろよ。」
そう言うと先日と同じ部屋に入り、何やら忙しそうに身支度を始めていた。やはり向こうはキッチンなのだろう、手伝いたいが料理なんてできる気がしないので迷惑になってしまうこと間違いなしだ。
俺は潔く体を洗いに行くことに決め、先日も通った草原を歩き湖に向かう。
眼前には透き通ったキレイな湖が変わらずにあった。
湖で体を拭き、髪をとかす。やはり昨日と同じように水温が低い。この湖は地下水がたまってできたのだろう。
タオルのような布で全身を拭いたあと、自然の風で体温を温め服を着る。
昨晩、疲労のせいで飯を食いそびれていた為、腹が空き足早に帰路につく。
しかし、今日服を買いに行ってくれると言っていたが、この辺に市街地なんかあるのだろうか?
辺りを見渡しても勿論の事、人が来そうな雰囲気でもないし、まずまず周りは、森、山、湖、と行った田舎っぷりだ。
乗り物がありそうな感じでもないし、いずれにしても森を通らなくては行けないため飛行機か何かがないと無理か…
そんな事を考えつつ歩いていると辺りが急に暗くなる。
日が雲にでも隠れたのだろうか、顔を上げながら目を細めると、遥か上に何かが太陽を背に飛んでいた。
随分と大きな鳥でも居るのだろうと思いその影を見つめていると、だんだんとその影は近づいてくる。
((なんだ!?俺なんかやったか!?!?!?))
正体はわからないが、取り敢えずマズいと思って家に向かって走る、距離にして200m程の草原を、がむしゃらに走るがだんだんと影は大きく近づいていく。
前を向いて走っているため影しか見えないがその大きさはコンドルなぞ比にならず、どんどんと巨大になっていく。
ソレは家まで数十メートルになる頃には20m程の大きな影になっていた。
もう泣きそうになりながら荷物を全部投げ捨て全力ダッシュで走り抜ける。
ドアにタックルして転がり込むように家に入ると、ドタドタとエプロンを付けたリュコスが近づき驚きながら喋りかけてくる
「ど…どうした!?何があった!?」
俺は震える手で外を指さし、叫ぶ
「そ、そそ外に!超デカイ化け物が!!」
リュコスは「はぁ?」と言うとドアに近づき、なんの躊躇も無くドアを開ける。
すると外には、先程の影の主であろう、全長20mはある超巨大な羽生やす、赤い鱗に覆われたトカゲ、
俗に言う[ ドラゴン ]が少し離れた位置で涎を垂らしながら行儀よくおすわりをしてこちらを凝視していた。




