〜兎の獣人〜
「リュコス……子供を泣かせて何を…」
「カ…カニー!違う!違うから!」
兎の獣人はカニーと呼ばれていた。
しかしリュコスのように狼が主体にではなく、160cmぐらいの人間に耳が生えたような見た目をしているスラッとした美しい女性が、リュコスの事をゴミを見るような目で見る。
プルプル震えているリュコスの前に、カニーと呼ばれる女性は目にも止まらぬスピードで割って入り、腰をまげ俺と同じ視線になり、さっきとは打って変わったような笑顔を見せて喋りかけてくる。
「こんにちは!私はカニーンヒェン。カニーって呼んで!
見ての通り兎の獣人だよ!あなたのお名前は?」
クニーは自分の手を頭に当て、兎だよ!みたいモーションをしてきた。
10歳以下の子供には大ウケだろう、そのポーズは、俺から見たらいい大人が恥ずかしいポーズとってるようにしか見えなかった為、つい吹いてしまう。
「あ、笑った!可愛いなぁもう!」
そう言うと俺をギューっと抱きしめてくる。
騙してるようで悪いが、綺麗な女性に抱きつかれるのは悪くない。
しかし名前を聞かれているんだが、どう答えようか…
そう考えているとリュコスが後ろから思いついたかのような声をあげる。
「そう!それ!名前!この嬢ちゃん今記憶喪失なんだよ!
だからイノセンスの事を説明してたら、順序を間違えて…」
すると割り込んでカニーが割り込んで、静かに声を上げる
「あんたまさか、この子に人身売買の事言ったの…?」
瞳孔を開き信じられないような面持ちで、リュコスに捨てるように言い放った。
予想はついていたが、やはり何らかの罪を被せ、重犯罪奴隷に落としてから人身売買をすることで、正当化する方法のせいで俺は重犯罪者なんて言う称号を持っていたのか…
一人納得していると
リュコスはあわてたように
「だって嬢ちゃんがいいって…」
リュコスがそこまで言うと言葉を被せ
「ちょっと外に行ってくるね。」
そう俺に伝え、どこにそんな力があるのかリュコスの巨体を引っ張り外へ行ってしまった。
女って怖ぇぇとおもいながら、引きずられたリュコスを見送ると、カニーと一緒に来た3人の深緑フード集団と目があった。
目があったのに気がついたのか、全員がフードを脱ぎ顔をあらわにした。
なんとフード被った者達は全員兎の獣人であった。
2人は男性でもう一人は女性なのだが、驚く事に全員がカニーと同じようにスラッとした美しい出で立ちをしていた。
そして男性のうちの1人がこちらに近づくと、カニーと同じように腰を折り、目線合わせ優しい口調で話かけてきた。
その男性は背が高く、自分の今の体と同じくらい伸びた水色の髪に、折れた耳を生やし、メガネをかけ少しやつれているが、これまたカッコイイ青年であった。
「やあお嬢さん、ゴメンねさっきのお姉さん怖かったでしょ?」
と微笑みながら喋りかけてきた。
俺はどう答えていいかわからなかったので、取り敢えず首を横に振っておいた。
すると後ろにいた、カニーと同じ髪色をした、顔だちもカニーとどこか似た所のある、若干背の低い3人の内のもう1人の青年が大声を上げ急に爆笑した。
「ギャッハッハッハッハ!あいつガキにすら気ぃ使われてやんの!」
耐えられなくなったのか床に、崩れ落ち腹を抱えて転げまわっていた。
その光景につられてしまったのか、それとも耐えられなくなってしまったのかわからないが目の前の青年が笑いを押し殺しながら、再度話しかけてくる。
「い…いや〜、き…君は随分…優しいね。あの人を怖くないなんて…」
そこまで言うと彼も床にうずくまり、声を上げながら笑い動けなくなっていた。
その光景に呆れたかのように、ため息をつきながら女性の兎獣人が近づいて来て、喋ってきた
「あ〜…ごめんな、ウチのアホ共が。
私はアルナブ。こっちの青いのはクローリクで、あっちの白いのはヒースヒェンだ。
お前も色々大変だっただろうが、安心しろ。私達はお前の安全を確保するために獣王国から派遣された。」
そう言いながら俺の頭にポンと手を置くその女性は、耳が生えた赤く長い髪を後ろで結び頬に傷がありながらも、強い美しさを放つ男勝りの獣人であった。




