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感想戦

 先手の攻めが非常に厳しい。

 相手玉は積極的に前進して、来月の末には会食する予定。

 さらにB面にはポトリと結婚情報誌が置かれ、私の退路を塞ぐ形。


 対する自陣はというと。

 金銀は剥がされて、玉まわりは崩壊寸前。

 自慢の飛車《スポーツカー》は閉じ込められて全く働いていない。


 パシん!


 乾いた音が部屋に響く。

 湯呑みの中のお茶に波紋がたった。


 彼女は桂の頭に歩を打ち付けた。

 これは、予想外。

 そして、頗る激痛。

 扇子越しに彼女の様子を見る。

 まっすぐにこっちを睨みつける迷いのない瞳。


 本来、それは絶無。

 人間には指せない、決断を迫る一手。


 考慮時間を使い切り、秒読みが始まった。

 これで終わりなのか?

 いや、桂を見捨て、角を打てば攻防手。

 まだまだ、難しい勝負が続く。

 しかし……


 残りあと2秒。

 私は桂を逃した。

 彼女はとても意外な顔をした。

 これは誰が見ても超悪手。

 だけど、今はこれが最善手だ。


 彼女はしばらく考えて、中央に角を打ち込んだ。

 その手は王手、飛車取り。

 もう、どう逃げても詰んでいる。


 私はふっと笑って、深々と頭を下げた。


「ありません」


 彼女の顔は憮然とした表情。

 勝った、という喜びの表情ではなかった。


「納得いかないわ」


 そう言って、彼女は逃した桂の横に龍を滑らせた。


 戦いは終わった。

 しかし、感想戦はまだ続いている。


「桂子って誰よ」

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