評価関数
最近、奇妙な行動をとる人間が増えたと思いませんか?
例えば、寿司屋の醤油を舐めたり、それを動画投稿したり、盗んだバイクで走りだしたり。
実はあれって全部、評価値のせいなんです。
ごめんなさい。
突然話しかけてしまって。
でもあなた、見えてますよね。
評価値が。
そう、視界の上に出ているバーです。
あなたの様子が、私の時と同じだったからつい。
今、AIの進化ってすごいじゃないですか。
それとゲノム編集技術も。
それが悪魔合体したウイルス。
私たちはそれに感染しています。
いつの間にかね。
人間の歴史って結局、闘いの歴史じゃないですか。
受精の時の精子の競争から始まって。
いつしゃべれるか、いつ歩けるか。
小さな時から闘争の中に放り込まれている。
学校では試験で序列が決められるし、受験はまさに戦争じゃないですか。
会社に入るのも、結婚するのも、そして幸せな生活を維持することも、それってみんな闘いなんですよ。
みんな気づかないふりしているけれど。
このウイルスは、オラクルと繋がっていて、私たちが置かれている状況の評価をしているんです。
下側に、次の推奨行動が示されていませんか?
まだない?
そうなんですね。
個人差があるみたいです。
このペットボトルを、あそこに歩いている人に投げつけてみましょう。
止めろって?
普通そう思いますよね。
でも、大丈夫です。
ここはそれが最善なんです。
オラクルを信じて。
*
ほら、どうです。
私たちが行った行為によって評価値が更新されましたよ。
え、殴られて痛い?
あはは、でもそれでいいんです。
評価値を見て。
さっきまで52%だったけれど、今は54%になっている。
どういうことかって?
実は、あそこでペットボトルを投げないと、あの人は死んでいました。
数手後に暴走したトラックに轢かれてね。
でも、私たちがペットボトルを投げた事で助かった。
だから評価値が上がったんです。
不思議?
私、数百手後まで読めるんですよ。
あの人、実はIT会社の社長みたいなんです。
さっきの事件がきっかけでウイルスが発症して、事実を知り、私たちをサポートしてくれるようになります。
だから評価値が上がった。
みんなより良い生活がしたいじゃないですか。
だから、オラクルの示す最善手を実行して評価値を上げているんです。
でも、オラクルは人間を超えた超知能。
人間には実行できないような不自然、一見すると不条理な、そんな手でも推奨してくるんです。
私があなたに話かけたのも、いま、あなたに真実を伝えているのも、それが私の評価値を上げるからですよ。
というわけで、私は今からあなたを、このナイフで滅多刺しにします。
大丈夫、大丈夫。
死にはしませんよ。
それが評価値を上げる最善手なんです!
オラクルを信じて。




