第9話 視察ってなんだっけ
魔王城
城門が開く。
「魔王様がお戻りです!」
側近が駆け寄る。
「ご無事で!」
「ああ。」
ゼノスは静かに頷いた。
「視察は終わった。」
「いかがでしたか?」
その一言で、四天王たちも集まってくる。
炎の四天王。
「敵でしたか!?」
毒の四天王。
「暗殺しますか?」
竜王。
「食べられますか?」
死霊の四天王。
「呪います?」
ゼノスは全員を見渡した。
「落ち着け。」
「まず報告する。」
全員が姿勢を正す。
「店だった。」
「「店?」」
「聞いたこともない建物だ。」
「店内は非常に明るい。」
「商品が並んでいた。」
炎の四天王が手を挙げる。
「燃やしましょう!」
「なぜそうなる。」
「敵かもしれないので!」
「店だと言った。」
「店でも燃えます!」
「そういう話ではない。」
毒の四天王も手を挙げる。
「じゃあ毒を。」
「盛るな。」
「入口に少しだけ。」
「少しでも盛るな。」
ゼノスはため息をつく。
「話を最後まで聞け。」
「店員は一人だった。」
「若い男だ。」
「敵意は感じなかった。」
「非常に礼儀正しい。」
竜王が首をかしげる。
「魔王様。」
「なんだ。」
「礼儀正しいならいい人ですね。」
「たぶんな。」
「じゃあ友達ですね!」
「まだ違う。」
死霊の四天王が真顔で聞く。
「で。」
「殺します?」
「殺さない。」
「え?」
「なぜだ。」
「店だからだ。」
四天王全員が顔を見合わせる。
「店って殺しちゃダメなんですか?」
ゼノスは額を押さえた。
「誰がお前たちを育てた。」
「魔王様です!」
「……。」
「……。」
「私の教育が悪かったのか。」
側近が慌ててフォローする。
「いえ!」
「元からこうでした!」
「そうか。」
少し安心するゼノス。
炎の四天王がゼノスの手元を見て目を丸くした。
「魔王様。」
「なんだ。」
「その袋。」
「……。」
ゼノスも袋を見る。
「……。」
「なんですか?」
「分からん。」
「え?」
「気付いたら持っていた。」
「え?」
「店へ入った。」
「うむ。」
「話をした。」
「うむ。」
「その後の記憶が曖昧だ。」
「うむ。」
「気付いたら。」
袋を持ち上げる。
「これを持って帰っていた。」
部屋中が静まり返る。
炎の四天王。
「……。」
「怖っ。」
毒の四天王。
「洗脳ですか?」
竜王。
「呪いですね。」
死霊の四天王。
「幽霊です。」
「違う。」
ゼノスは真顔で首を振る。
「分からん。」
「だが。」
袋を見る。
「敵は恐ろしい。」
「店へ入っただけで。」
「財布の紐を緩められた。」
部屋が再び静まり返る。
炎の四天王が震えながら呟く。
「……。」
「最強じゃないですか。」
ゼノスも静かに頷いた。
「ああ。」
「ある意味、歴代で最も恐ろしい相手かもしれん。」




