第7話 お店の案内はお任せ下さい
ゼノスは軽く咳払いをした。
「いや、案内は──」
「ではこちらからご案内します!」
「……断ったのだが。」
「まずはこちら、お弁当コーナーです!」
遠矢は聞こえていないかのように歩き出した。
「毎日違う商品が入荷します!」
「……。」
「こちらはおにぎりです。」
「定番商品ですね。」
「おすすめは鮭です。」
「……そうか。」
「でもツナマヨも人気です。」
「私は今、おにぎりの人気ランキングを聞きに来たわけでは──」
「続いてパンコーナーです!」
「聞け。」
遠矢は満面の笑みで棚を指さした。
「甘いパンがお好きでしたら、こちらがおすすめです!」
「私は──」
「食パンもございます!」
「……。」
ゼノスは諦めて後ろを歩くことにした。
(……話を聞かんな、この青年。)
遠矢は楽しそうに説明を続ける。
「こちらは飲み物です!」
「冷えております!」
「……。」
「コーヒー。」
「お茶。」
「ジュース。」
「お水。」
「全部冷えてます。」
「親切だな。」
「ありがとうございます!」
「褒めたつもりではない。」
「こちらはアイスです!」
「暑い日におすすめですよ!」
「この世界にも暑い日はあるだろうからな……。」
「あります!」
「良かったです!」
「何が良かったんだ。」
さらに歩く。
「こちら!」
遠矢が誇らしげに両手を広げた。
「ホットスナックです!」
「一番人気は唐揚げです!」
「揚げたてですよ!」
ゼノスは香ばしい匂いに思わず鼻をひくつかせた。
(……いい匂いだ。)
「それから肉まん!」
「冬になると特に人気です!」
「夏でも売れます!」
「…………。」
「あとアメリカンドッグ!」
「ケチャップとマスタードはお好みで!」
「…………。」
ゼノスは心の中で自分に言い聞かせた。
(落ち着け。)
(私は魔王だ。)
(敵地の調査に来た。)
(食欲に負けるな。)
その時。
ぐぅぅぅ……
静かな店内に、盛大な音が響いた。
「……。」
「……。」
遠矢はにっこり笑う。
「お腹、空いてます?」
ゼノスは少しだけ視線を逸らした。
「……朝から書類仕事でな。」
「まだ何も食べていない。」
「それは大変です!」
遠矢は即座にショーケースへ向かう。
「まずは腹ごしらえしましょう!」
「話はそれからです!」
「いや、私は視察に──」
「唐揚げにします?」
「肉まんにします?」
「それとも両方にします?」
「……なぜ選択肢が増えた。」
気づけばゼノスは、異世界初のコンビニで、
店員のおすすめメニューを真剣に聞かされていた。




