第6話 店長はいるか?
「ご来店ありがとうございます!」
ゼノスは青年を見つめる。
(若い……。)
(このような施設の責任者には見えんな。)
遠矢は営業スマイルのまま尋ねる。
「何かお探しですか?」
ゼノスは低い声で答えた。
「店長はいるか。」
「僕です。」
「……。」
「……。」
ゼノスは数秒、沈黙した。
「店長を呼んでくれ。」
「ですから、僕です。」
「責任者を呼べ。」
「僕です。」
「この店を管理している者だ。」
「僕です。」
「…………。」
ゼノスは少し考えた。
(なるほど。)
(従業員が店長を庇っているのか。)
「安心しろ。」
「私は争いに来たわけではない。」
「話がしたいだけだ。」
遠矢は不思議そうに首をかしげる。
「はい。」
「なので僕で大丈夫です。」
「…………。」
(通じない。)
ゼノスは額に手を当てた。
「もう一度聞こう。」
「この店の最高責任者は誰だ。」
遠矢は胸を張る。
「神崎遠矢、二十四歳です。」
「よろしくお願いします。」
そう言って、ペコリと頭を下げた。
ゼノスは思わず青年の名札を見る。
『店長 神崎 遠矢』
(本当に店長なのか……。)
店内を見回す。
店員は他に一人もいない。
客もいない。
「一人で切り盛りしているのか?」
「はい。」
「なるほど。」
「人件費削減です。」
「……。」
(人件費とは何だ。)
ゼノスは聞き慣れない単語に少し引っかかったが、それ以上追及はしなかった。
遠矢はニコニコしながら言う。
「何かご入用でしたら、お気軽にお声がけください!」
「初めてのお客様ですよね?」
「はい。」
「でしたら、店内をご案内しましょうか?」
魔王自ら視察に来たはずが、
いつの間にか店員に店内ツアーを勧められていた。
(……なぜ私が案内される側になっているんだ。)
ゼノスは人生で初めて、自分のペースを完全に崩されていた。




