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第5話 魔王様、自ら視察に向かう

――魔王城。


魔王ゼノスは、今日も大量の書類と戦っていた。


「はぁ……。」


山積みの報告書。


『竜王、寝坊』


『炎の四天王、また城の壁を焦がす』


『勇者、今月七回目の挑戦』


「……誰か、まともな部下はいないのか。」


その時だった。


バァン!!


執務室の扉が勢いよく開く。


「魔王様ァァァァ!!」


飛び込んできたのは側近だった。


ゼノスは眉をひそめる。


「ノック。」


「あっ……。」


コンコン。


「……失礼します!」


「最初からやれ。」


「申し訳ありません!」


側近は慌てて頭を下げた。


「で、何事だ。」


「それが……!」


「城の正面に……。」


「建物が生えました!!」


「……。」


「はい?」


「巨大な建物です!」


「一瞬で!」


「城門の真正面に!」


ゼノスは静かに立ち上がる。


「報告は正確に。」


「嘘ではありません!」


「本当に突然……!」


「ドォーン!って!」


「…………。」


ゼノスは窓へ向かった。


カーテンを開ける。


そして。


「……。」


そこには。


見たこともない建物。


大きなガラス。


自動で開いたり閉まったりする扉。


明るすぎる照明。


綺麗に並ぶ棚。


そして大きな看板。


『24時間営業』


「…………。」


「二十四時間?」


側近も首をかしげる。


「営業とは何でしょう……。」


ゼノスは腕を組んだ。


「敵国の施設か?」


「調査しました!」


「誰も見たことがありません!」


「建築した形跡もありません!」


「魔力反応も異常です!」


「……。」


ゼノスは数秒考えた。


「罠の可能性もある。」


「軍を出しますか?」


「いや。」


「私が行く。」


「えぇっ!?」


「魔王様自ら!?」


「未知の相手だ。」


「部下を行かせる方が危険だ。」


側近は感動した。


(だから魔王様は尊敬されるんだよなぁ……。)


数分後。


魔王城の門がゆっくり開く。


ギィィィ……


黒いローブをまとった魔王ゼノスが、一人で歩いていく。


護衛はいない。


武器も抜かない。


まずは相手を知る。


それが彼の流儀だった。


道路を渡る。


目の前まで来る。


「……。」


ガラス張り。


中には棚。


箱。


飲み物。


見たこともない商品がずらりと並んでいる。


「店……なのか?」


自動ドアの前に立つ。


ウィーン……


「っ!?」


扉が勝手に開いた。


ゼノスは思わず一歩後ろへ下がる。


「自動……だと?」


恐る恐る一歩踏み出す。


店内に入った瞬間。


カランコロン♪


軽快な音が鳴り響いた。


その音を聞いた青年が、パッと笑顔を向ける。


「いらっしゃいませ!」


「……。」


「ご来店ありがとうございます!」


「……。」


魔王ゼノスは固まった。


(なんだ……?)


(歓迎……されている?)


敵地へ来たはずなのに。


目の前の青年は武器も構えず、満面の笑みだった。


その青年――神崎遠矢は、相手が魔王だとは夢にも思っていない。


(すごいなぁ。)


(コスプレかな?)


(角まで付いてる。)


(完成度高いなぁ。)


心の中で感心しながら、いつもの笑顔で言う。


「店内、ごゆっくりご覧ください!」


ゼノスは内心困惑していた。


(なんだ、この店……。)


(なんなんだ、この青年は……。)


魔王とコンビニ店員。


世界の運命を左右するかもしれない、二人の初対面は――


あまりにも平和に幕を開けた。

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