第4話 コンビニ経営で一番大切なのは立地です。
女神ルミナは、最後に人差し指を立てた。
「神崎遠矢。」
「はい。」
「《コンビニ召喚》には、一つだけ注意点があります。」
「はい。」
「よく聞いてください。」
「はい。」
「この能力で召喚したコンビニは――」
「一度設置したら、移動できません。」
「……。」
「つまり。」
「あなたが最初に召喚した場所で、永遠に営業することになります。」
遠矢は真剣な表情で頷いた。
「なるほど。」
「ですので。」
「街の中心。」
「交通量。」
「治安。」
「周辺住民。」
「立地条件。」
「すべて考えてから召喚してください。」
「コンビニ経営で一番大切なのは立地です。」
「はい。」
「異世界をよく見てから決めるんですよ?」
「分かりました。」
「本当に?」
「はい!」
ルミナは少し不安そうだった。
(……この子、分かってるのかしら。)
「では、行ってらっしゃい。」
パチンッ。
指を鳴らすと、遠矢の姿は光に包まれた。
――――――
ドサッ!!
「いてて……。」
遠矢は草の上へ落ちた。
「ここが異世界かぁ。」
辺りを見回す。
青い空。
気持ちいい風。
広い草原。
「へぇ……。」
「綺麗だなぁ。」
その瞬間だった。
遠矢は思い出したように手を叩く。
「あ。」
「先にコンビニ出さなきゃ。」
一切周囲を確認せず、
一歩も歩かず、
右手を空へ突き上げる。
「《コンビニ召喚》!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
大地が揺れる。
巨大な魔法陣が足元いっぱいに広がった。
ズドォォォォォン!!!
真新しいコンビニが現れる。
自動ドア。
広い駐車場。
明るい店内。
ピカピカの看板。
「おぉぉぉ!」
遠矢は感動していた。
「完璧だ……。」
「この揚げ物ケース……。」
「このレジ……。」
「最高だ……!」
その頃――
天界。
水晶で様子を見ていたルミナは満足そうに微笑んでいた。
「ふふっ。」
「いい場所が見つかったみたいね。」
すると、水晶の映像が少し引いていく。
コンビニの全景が映る。
さらに引く。
もっと引く。
ルミナの笑顔が消えた。
「……あれ?」
さらに引く。
コンビニの向かい側には――
巨大な黒い城。
無数の魔物。
城壁。
旗。
そして門には大きく書かれていた。
『魔王城』
「…………。」
ルミナは固まった。
「え?」
さらに映像が広がる。
コンビニの正面入口と、
魔王城の正門が、
道路を一本挟んで真正面に向かい合っていた。
「…………。」
「…………。」
ルミナは震える声で呟く。
「なんで?」
「なんでよりにもよって……」
「魔王城の真正面なのよぉぉぉぉぉ!!?」
一方その頃。
当の本人は何も知らず、
店内で棚を整えながら満足そうに頷いていた。
「うん。」
「入口から近いし、駐車場も広い。」
「いい立地だなぁ。」
もちろん――
その「入口」とは、魔王城の正門のことである。




