第3話 女神、最後まで止める。
「神崎遠矢。」
「はい。」
女神ルミナは大きく息を吸った。
「最後に確認します。」
「はい。」
「本当に、本当にコンビニでいいんですね?」
「はい!」
「剣じゃなくて?」
「いりません。」
「聖剣。」
「いりません。」
「最強魔法。」
「いりません。」
「無限魔力。」
「いりません。」
「ドラゴン召喚。」
「いりません。」
「時間停止。」
「いりません。」
「世界征服できる能力。」
「いりません。」
「……。」
ルミナは頭を抱えた。
「なんで全部断るのよ……。」
遠矢は少しだけ笑う。
「コンビニがあれば。」
「大体なんとかなります。」
「ならないから言ってるの!」
「大丈夫です。」
「異世界にもコンビニは必要です。」
「そんな自信満々に言われても……。」
ルミナは諦めたように肩を落とした。
「……分かりました。」
「神崎遠矢。」
「あなたへ、ユニークスキルを付与します。」
ルミナは光る本を取り出した。
「《言語理解》」
ポン。
「《鑑定》」
ポン。
「《生活魔法》」
ポン。
「《状態異常耐性》」
ポン。
「《疲労軽減》」
ポン。
「《コンビニ召喚》」
ドゴォォォン!!
今までとは比べ物にならない巨大な光の柱が立ち上る。
「うわっ!」
遠矢は思わず目を閉じた。
ルミナは説明を始める。
「このユニークスキルには、非常に多くの機能があります。」
「商品無限補充。」
「レジ。」
「自動ドア。」
「冷暖房。」
「ホットスナック。」
「コピー機。」
「ATM。」
「公共料金受付。」
「宅配便。」
「防犯機能。」
「セルフレジ。」
「ポイントカード。」
「アプリ。」
「電子決済。」
「防犯カメラ。」
「……。」
「……。」
「……まだあります。」
「えっ。」
「まだ?」
「まだです。」
ルミナは延々と読み続けた。
「Wi-Fi。」
「製氷機。」
「電子レンジ。」
「コーヒーマシン。」
「ゴミ箱。」
「トイレ。」
「自動清掃。」
「自動発注。」
「二十四時間営業。」
「商品品質維持。」
「永久電力供給。」
「永久水道。」
「……。」
遠矢は途中から拍手していた。
「すごい……。」
「完璧だ……。」
その頃。
ルミナは睡魔と戦っていた。
(昨日から徹夜だったのよね……。)
眠い目を擦りながら、管理画面を操作する。
ポチ。
ポチ。
ポチ。
ポチ。
すると──
《不老不死》付与。
ポン♪
「あ。」
ルミナは一瞬だけ画面を見る。
しかし次の瞬間。
「《コンビニ施設自動拡張》」
「《商品自動補充》」
「《在庫無限生成》」
「《自動会計補助》」
「《衛生完全維持》」
「《賞味期限自動更新》」
次々と大量のスキル通知が画面を埋め尽くす。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
「わわわわっ!」
「多っ!」
ルミナは慌ててスクロールした。
「あーもう!」
「コンビニだけで何百個あるのよ!」
画面はコンビニ関連スキルで埋め尽くされていく。
その一番上に表示されていた、
《不老不死》
の文字は、あっという間に流れて見えなくなった。
ルミナも、
遠矢も、
誰一人として気付かなかった。




