表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/20

第19話 魔王今日も胃が痛い

ゼノスは執務室で書類に目を通していた。


コンコン。


「入れ。」


兵士が慌てて飛び込んでくる。


「魔王様!」


「勇者一行ですが!」


「どうした。」


「まだ羊に追い掛けられています!」


「……まだか。」


「はい!」


「しかも羊が増えました!」


「何匹だ。」


「三十二匹です!」


「増えすぎだ。」


「放っておけ。」


「はっ!」


兵士が部屋を出る。


ゼノスは小さくため息をついた。


「今日は静かになりそうだ……。」


バァン!!


「魔王様ぁぁぁ!!」


「……前言撤回だ。」


ガルドだった。


その後ろからドラグ、ヴェノ、レイスも入ってくる。


「魔王様!」


「お腹空きました!」


「知らん。」


「肉まん食べたいです!」


「昨日食べただろ。」


「昨日の話です。」


「今日は今日です。」


「……そうか。」


ドラグが嬉しそうに言う。


「今から行きましょう!」


「仕事は。」


「帰ってから!」


「帰る頃には夜だ。」


「じゃあ夜に行きましょう!」


「仕事は。」


「明日!」


「今日やれ。」


ヴェノが手を挙げる。


「魔王様。」


「なんだ。」


「店長さんを。」


「魔王城で働かせましょう。」


「本人の意思は。」


「聞きます。」


「断られたら。」


「泣きます。」


「泣くな。」


レイスが真顔で言う。


「魔王様。」


「なんだ。」


「魔王城。」


「支店。」


「何のだ。」


「コンビニ。」


「違う。」


ガルドが勢いよく立ち上がる。


「じゃあ!」


「魔王城の一階だけコンビニ!」


ドラグ。


「二階は肉まん!」


ヴェノ。


「三階はお菓子!」


レイス。


「屋上。」


「駐車場。」


ゼノスはゆっくり顔を上げる。


「この世界に。」


「車はない。」


「……。」


四人が固まる。


「……。」


「……。」


「……。」


ガルドが照れ笑いした。


「じゃあ。」


「馬車場!」


「それはある。」


「やった!」


「喜ぶところではない。」


ドラグが首をかしげる。


「魔王様。」


「なんだ。」


「店長さん。」


「一人でした。」


「そうだな。」


「忙しそうでした。」


「そうだな。」


「かわいそう。」


「……。」


「だから。」


「四人でアルバイトします!」


ゼノスは目を閉じた。


「お前たちが働く姿が想像できん。」


「できます!」


「できます!」


「できます!」


「できます!」


「では聞く。」


ゼノスは静かに尋ねた。


「レジは誰がやる。」


四人は顔を見合わせる。


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


ガルド。


「レジって何ですか?」


ゼノスは額に手を当てた。


「昨日見ただろ。」


ヴェノ。


「ピッ。」


ドラグ。


「あっ。」


レイス。


「ピッの人。」


「そうだ。」


「じゃあ。」


「誰がやる。」


また沈黙。


ガルドが自信満々に手を挙げた。


「僕!」


「計算できます!」


「二足す二は。」


「五!」


「違う。」


「三!」


「違う。」


「四!」


「惜しかった!」


「惜しくない。」


ドラグが笑顔になる。


「じゃあ僕!」


「お金もらいます!」


「釣りは。」


「気持ちです!」


「ダメだ。」


ヴェノ。


「毒薬なら量れます。」


「現金を量れ。」


レイス。


「立ちます。」


「何をする。」


「立ちます。」


「仕事をしろ。」



ゼノスは深く椅子にもたれ掛かった。


「……。」


「魔王様?」


「頭痛ですか?」


「違う。」


「胃だ。」


「昨日から痛い。」


「原因は――」


ガルドが勢いよく手を挙げた。


「分かりました!」


「なんだ。」


「勇者です!」


「違う。」


ドラグも手を挙げる。


「羊!」


「違う。」


ヴェノが真剣な顔になる。


「寝不足。」


「違う。」


レイスがぽつりと言う。


「空腹。」


「違う。」


四人は顔を見合わせた。


「「「「分からない。」」」」


ゼノスは口を開く。


「原因はお前――」


バァン!!


執務室の扉が勢いよく開いた。


「魔王様ぁぁぁ!!」


兵士が飛び込んでくる。


「今度は何だ。」


「勇者一行ですが!」


「今度こそ魔王城へ来ました!!」


四天王が一斉に立ち上がる。


「おぉ!」


「ついに!」


「やっと!」


「遅かったね!」


兵士は首を横に振る。


「……いえ。」


「城の前にあるコンビニへ入りました。」


部屋が静まり返る。


「……。」


「……。」


「……。」


「……。」


ガルドが小さく呟く。


「……あっ。」


ドラグ。


「肉まんかな。」


ヴェノ。


「春巻きかも。」


レイス。


「常連。」


ゼノスは何も言わなかった。


ただ静かに目を閉じ、


深く、


深くため息をついた。


「…………はぁ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お約束wwwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ