第18話 なんかとてもすごい人
朝のコンビニの店内は静かだった。
元の世界と違って朝の通勤ラッシュもない。
カラン♪
自動ドアが開く。
一人の魔族が入ってくる。
黒い角。
黒い翼。
大きな斧を背負っている。
いかにも強そうだった。
「いらっしゃいませ!」
遠矢は笑顔で頭を下げる。
魔族は店内をきょろきょろ見回した。
「……。」
「広い。」
遠矢は頷く。
「ありがとうございます。」
「いや。」
「褒めたわけじゃない。」
「そうでしたか。」
「すみません。」
魔族は飲み物コーナーへ向かった。
一本のお茶を手に取る。
「……。」
ラベルを見る。
「冷えてる。」
遠矢が答えた。
「はい。」
「冷やしてあります。」
「どうして?」
「冷たい方が美味しいので。」
「なるほど。」
魔族は素直に納得した。
今度はお菓子コーナーへ向かう。
「店長。」
「はい。」
「この『期間限定』とは何だ?」
遠矢は真面目に答えた。
「期間だけ限定です。」
「……。」
「……。」
魔族は腕を組む。
「難しい。」
「ですよね。」
遠矢も頷いた。
二人とも分かっていなかった。
しばらくして魔族がレジへ来る。
お茶一本。
「袋いるか?」
遠矢が聞く。
「一つだけですが、お付けしますか?」
魔族は真剣に悩む。
「……。」
「家まで持って帰れる。」
「では不要ですね。」
「うむ。」
遠矢はお茶を差し出した。
「ありがとうございました。」
魔族は受け取ろうとして止まる。
「店長。」
「はい。」
「金がない。」
「……。」
遠矢は笑顔だった。
「では今日はやめておきますか。」
「そうする。」
魔族は商品を棚へ戻しに行く。
戻ってきた。
「戻した。」
「ありがとうございます。」
「また金を持ってくる。」
「お待ちしております。」
魔族は帰ろうとした。
自動ドアの前で止まる。
「……。」
「店長。」
「はい。」
「出口が開かない。」
「一歩前へどうぞ。」
魔族が一歩前へ出る。
ウィーン……
「おぉ。」
「すごい。」
「便利ですよ。」
「店長。」
「はい。」
「お前。」
「賢いな。」
「ありがとうございます。」
「また来る。」
「ぜひ。」
魔族は満足そうに帰っていった。
遠矢も満足そうに頷く。
「いいお客様だったな。」
その頃。
店の外を歩く魔族は、小さく呟いていた。
「……。」
「いい店長だった。」
「出口の開け方まで教えてくれた。」
二人とも、
相手を”すごい人”だと思っていた。




