第17話 また来たのか
そんな騒がしい夜も終わり。
気付けば朝になっていた。
食堂。
机の上には食べ終わった袋や紙コップが散乱している。
ガルド。
「ぐぉぉぉ……。」
椅子に座ったまま爆睡。
ドラグ。
「肉まん……もう一個……。」
寝言まで言っている。
ヴェノは机に突っ伏し、
レイスは立ったまま眠っていた。
ゼノスだけが静かに紅茶を飲んでいる。
「……平和だ。」
その時。
バァン!!
食堂の扉が勢いよく開いた。
「魔王様ぁぁぁぁ!!」
兵士の一人が飛び込んできた。
ゼノスはカップを置く。
「どうした。」
兵士は敬礼した。
「ご報告です!」
「勇者一行が攻めてきました!!」
ゼノスは静かに頷く。
「……そうか。」
兵士は驚いた。
「驚かれないのですか!?」
「またか。」
「はい!」
「今回は勇者を含め四人です!」
「いつも通りだな。」
兵士は首をかしげる。
「出撃命令を!」
ゼノスは紅茶を一口飲んだ。
「必要ない。」
「え?」
「どうせ来ない。」
「え?」
「いや。」
「来られない。」
「……?」
兵士は意味が分からなかった。
「魔王様。」
「勇者ですよ?」
「ああ。」
「こちらへ向かっています!」
「ああ。」
「急がないと!」
ゼノスはため息をついた。
「アルト。」
「はい。」
側近アルトが前へ出る。
「今回は何だと思う。」
アルトは手帳を開いた。
「前回は橋から落ちました。」
「その前はドラゴンに追われました。」
「さらに前は道に迷いました。」
「その前は財布を落として街へ戻りました。」
「さらにその前は温泉を見つけて三泊しました。」
「そうだったな。」
兵士は口を開けたまま固まっている。
「え……。」
「それで。」
「誰も城まで来てないんですか?」
ゼノスは静かに頷いた。
「一度も。」
「えぇぇぇぇ!?」
兵士は思わず叫んだ。
「でも勇者ですよ!?」
「勇者だ。」
「世界最強じゃ……。」
「強い。」
「なら何故!」
ゼノスは窓の外を眺める。
「知らん。」
「毎回何か起きる。」
「今回は?」
アルトは手帳をめくる。
「まだ情報がありません。」
「そうか。」
ゼノスは再び紅茶を飲む。
「昼まで待とう。」
「昼ですか?」
「ああ。」
「大体その頃には報告が来る。」
その瞬間だった。
バァン!!
また扉が開く。
別の兵士が息を切らして飛び込んできた。
「魔王様ぁぁぁ!!」
「今度は何だ。」
「勇者一行ですが!」
「うむ。」
「城の手前五十キロ地点で――」
ゼノスは静かに続きを待つ。
兵士は大きく息を吸った。
「野生のヤギに追い掛けられています!!」
食堂は静まり返った。
「……。」
「……。」
「……。」
ゼノスはゆっくり目を閉じた。
「またか。」
アルトは慣れた様子で手帳に書き込む。
『第38回勇者遠征
敗因:ヤギ(予定)』
ゼノスは静かに呟いた。
「……もう放っておけ。」
その頃勇者達は………。
「くそぉぉ…魔王め!またしても…てごわっ…うわあああ」




