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第16話 隣の芝生は青く見える

魔王城へ戻ると、食堂へ直行した。


テーブルいっぱいにコンビニの商品を並べる。


肉まん。


アメリカンドッグ。


ハッシュポテト。


コロッケ。


春巻き。


お茶。


お菓子。


ゼノスは静かに言った。


「全員、自分で選んだ物を食べろ。」


「「「はーい!」」」」


その一秒後だった。


「それうまそう!」


ガルドがドラグのアメリカンドッグを奪う。


「ちょっ!」


「それ僕の!」


ドラグは負けじとヴェノのコロッケを取る。


「じゃあ僕これ!」


「僕の!」


ヴェノはレイスの春巻きを取る。


「じゃあ交換。」


「交換じゃない。」


レイスは真顔のままガルドの肉まんを持ち上げる。


「これ。」


「美味しそう。」


「返せぇぇぇ!!」


一分後。


全員の手元から、


最初に選んだ商品が消えていた。


ゼノスは黙って眺める。


「……。」


ドラグが叫ぶ。


「ガルド!」


「僕のハッシュポテト返して!」


「俺も無い!」


「誰だ!」


ヴェノ。


「レイス。」


「君、僕の春巻き持ってる。」


レイス。


「違う。」


「ガルドから取った。」


「俺じゃない!」


「ドラグ!」


「僕?」


「僕はヴェノの!」


「だから僕のだ!」


食堂は大混乱だった。


ゼノスは静かに肉まんを一つ持ち上げる。


(……。)


(誰も我の物には気付いていない。)


一口食べようとした、その時。


「魔王様!」


ドラグが目を輝かせた。


「その肉まん美味しそう!」


ガルドも見る。


「ほんとだ!」


ヴェノ。


「そっちの方が大きく見える。」


レイス。


「気のせいじゃない。」


四人はゼノスの肉まんだけを見つめていた。


ゼノス。


「……。」


嫌な予感しかしない。


「魔王様!」


ガルドが笑顔で言う。


「一口ください!」


「ダメだ。」


「半分!」


「ダメだ。」


「じゃあ匂いだけ!」


「それなら……。」


四天王は一斉に肉まんへ顔を近付けた。


「いい匂い……。」


「うまそう……。」


「最高……。」


「食べたい……。」


ドラグがぽつりと呟く。


「一口だけなら。」


「ダメだ。」


「小さい一口。」


「ダメだ。」


「極小。」


「ダメだ。」


「ナノサイズ。」


「ダメだ。」


ガルドが突然叫んだ。


「じゃんけんだ!!」


「おぉーー!!」


「だから何のだ。」


「勝った人が食べる!」


「我のだ。」


「なるほど!」


「納得!」


ゼノスは安心した。


(理解したか。)


ドラグが笑顔で言う。


「じゃあ魔王様抜きでじゃんけんしましょう!」


「そうだね!」


「公平!」


「平等!」


「平等ではない。」


四人は勝手にじゃんけんを始めた。


「最初はグー!」


「じゃんけん!」


「ぽん!」


ガルドが飛び跳ねた。


「勝ったぁぁ!」


その勢いでゼノスの肉まんを掴もうとする。


パシッ。


ゼノスは無言で手首を掴んだ。


「我のだ。」


「……はい。」


ガルドはしょんぼり手を引っ込めた。


その直後。


ドラグが反対側からそっと肉まんへ手を伸ばす。


パシッ。


「我のだ。」


「……はい。」


ヴェノ。


「じゃあ下から。」


パシッ。


「我のだ。」


「……はい。」


レイス。


「今だ。」


パシッ。


「我のだ。」


「……はい。」


ゼノスは肉まんを胸に抱え、静かに思った。


(我は魔王だよな……?)


(なぜ肉まん一つ守るだけで、これほど苦労しているんだ。)

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