第14話 魔王は子供で四天王はお父さんで……?
ガルドは両手いっぱいに商品を抱えていた。
「これで全部!」
ドラグも負けていない。
「肉まん五個!」
「アメリカンドッグ!」
「ハッシュポテト!」
「コロッケ!」
「春巻き!」
ヴェノは真剣な顔で棚を見つめる。
「この歯ブラシ。」
「毒塗ったら便利そう。」
「やめてくださいね。」
遠矢は笑顔だった。
「用途が変わっちゃいます。」
「なるほど。」
ヴェノは素直に棚へ戻した。
レイスは雑誌コーナーで立ち止まる。
「店長。」
「はい。」
「この漫画。」
「面白い?」
「僕は三巻が好きです。」
「三巻。」
「買います。」
「ありがとうございます。」
遠矢は嬉しそうだった。
「続きも面白いですよ。」
「じゃあ。」
「一巻から。」
「それがいいと思います。」
ガルドがカゴを見る。
「重い。」
ドラグも覗き込む。
「すごい量。」
レイスが真顔で言った。
「魔王様の分も。」
「そうだ!」
四人は一斉にゼノスを見る。
「魔王様!」
「何食べるかな!」
「寝てるから聞けない。」
「じゃあ全部一つずつ。」
「天才。」
「採用。」
遠矢は感心していた。
「皆さん。」
「仲が良いんですね。」
「「「「はい!」」」」
誰一人迷わなかった。
レジ。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
バーコードを通す音が店内に響く。
遠矢は楽しそうだった。
「いっぱい買っていただいてありがとうございます。」
ガルドも嬉しそうに笑う。
「また来る!」
「ありがとうございます。」
「ぜひ!」
遠矢は袋へ商品を詰めていく。
するとドラグが困った顔をした。
「店長。」
「はい。」
「手が足りない。」
見ると、
四人ともベッドを持っている。
当然、袋を持つ手がない。
「……。」
遠矢は少し考えた。
「そうだ。」
レジ横から太いビニールひもを取り出す。
ガサガサ。
「こちらへどうぞ。」
ガルドが近付く。
遠矢は器用に大量の袋をまとめ、
ベッドの手すりへ結び付けた。
「これなら。」
「運びやすいですよ。」
四天王は目を丸くした。
「おぉぉ!」
「すごい!」
「頭いい!」
「さすが店長!」
遠矢は少し照れた。
「コンビニですから。」
「コンビニってすごい!」
「便利!」
「また勉強になった!」
会計も終わり、
ガルドがベッドを持ち上げる。
「よし!」
「帰ろう!」
「せーの!」
四人は息を合わせる。
その瞬間。
ゴトン。
ベッドが少し揺れた。
ゼノス。
「……ん。」
四人の動きが止まる。
「「「「……。」」」」
ゼノスの瞼が少しだけ動く。
「まずい。」
「起きる?」
「まだ?」
「静かに。」
四人は息を止めた。
「……すぅ。」
再び寝息。
「よかったぁぁ……。」
全員その場にしゃがみ込んだ。
遠矢はそんな四人を見て微笑む。
「皆さん。」
「お父さんなんですね。」
「「「「え?」」」」
「小さいお子さんが寝ちゃうと、起こさないように運びますもんね。」
四天王は顔を見合わせる。
ガルドが小さく頷いた。
「……。」
「そう。」
ドラグも頷く。
「そんな感じ。」
ヴェノ。
「育児。」
レイス。
「初体験。」
遠矢はにっこり笑った。
「子育て、大変ですよね。」
「頑張ってください!」
四天王はなぜか少し照れながら頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「またお越しください!」
「「「「はい!」」」」
ウィーン……
自動ドアが閉まる。
店の外では、
ベッドに大量の買い物袋をぶら下げたまま、
四天王が楽しそうに帰っていく。
その光景を見送りながら、遠矢は満足そうに頷いた。
「仲のいい家族だったなぁ。」
もちろん。
その”子ども”は魔王であり、本人はまだ一度も目を覚ましていなかった。




