第12話 売れるといいな。
神崎コンビニ。
午前一時四十八分。
店内には穏やかなBGMが流れていた。
遠矢は店内をゆっくり歩きながら棚を整えていく。
「……よし。」
おにぎりを一つ手に取る。
賞味期限を確認し、奥の商品と入れ替える。
「先入れ、先出し。」
「基本だよね。」
満足そうに頷き、次は飲み物コーナーへ向かった。
「ジュースよし。」
「お茶よし。」
「コーヒーよし。」
冷蔵ケースの扉を閉める。
「今日も綺麗。」
その時だった。
ピコン♪
《ホットスナック、補充できます。》
「あ。」
遠矢はホットスナックコーナーへ向かう。
トングを手に取り、
アメリカンドッグを並べる。
「よし。」
続いてハッシュポテト。
「よし。」
コロッケ。
「よし。」
最後に春巻き。
「これで完璧。」
黄金色のホットスナックが綺麗に並ぶ。
遠矢はケースを眺めながら、小さく首をかしげた。
「でも……。」
時計を見る。
午前一時五十分。
「この時間に補充して良かったのかな。」
腕を組んで少し考える。
「うーん。」
「お客様が来なかったら、もったいないし……。」
ケースを見つめる。
「でも。」
「来た時に無いのも困るよね。」
少し悩んだあと、一人で納得したように頷く。
「うん。」
「やっぱり、お客様が来た時にちゃんと並んでる方が嬉しいよね。」
ケースのガラスを布で丁寧に拭く。
「これでいつでも大丈夫。」
遠矢は満足そうに微笑み、レジへ戻った。
その頃。
店へ向かう一本道では――
「せーの!」
「右上げて!」
「左下げて!」
「魔王様揺れてる!」
「もっと優しく!」
「ベッド重い!」
「静かに!」
「あと五分!」
布団に寝たまま運ばれるゼノスと、
息を切らしながらベッドを担ぐ四天王は、
少しずつコンビニへ近付いていた。
そして、この日――遠矢は人生で初めて、『ベッドごと来店したお客様』を接客することになる。




