第10話 バスでの遭遇
「何でこんな時間にそんなとこ行くの? あ、大人一人、子供一人。」
ギャルJDが鬼公子を連れてバスに乗る。
陽が沈み始めた夕方。
ギャルJDと鬼公子は仲良く路線バスに乗り込んだ。
「バスって便利ですね。僕一人で乗ることあんまりなくて。」
目を丸くしてバスの車内や車窓を楽しそうに見る鬼公子。
「そうなのね。ここ空いてるから座るわよ。」
車内の二人席に座るギャルJDと鬼公子。
「こうしてみると姉と弟みたいね。」
ギャルJDは満更ではなさそうだ。
「僕のお姉さんはそんなにケバくありません。
それにあなたは僕の眷属でしょ。」
膨れっ面の鬼公子がちょっとかわいい。
ギャルJDには弟はいなかった。
だが、もし本当にいたらこんな風なのかな? と、
ギャルJDは満更ではなかった。
「いいじゃん。君の復讐は私の復讐。一緒に手を取り合っていこう。」
鬼公子が窓側に座り、通路側のギャルJDが強く押し込んでいる。
「いや、でも。僕が主人であなたは部下のはず。」
そう言う鬼公子の不機嫌さがますます可愛い。
「逆転主従関係、面白いじゃない。
それに復讐するために、私の力必要なんでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけど。」
鬼公子は素直に答える。それがまた可愛い。
* * * * * * * *
「何でこんな時間にそんなとこ行くのかな? あ、大人一人。」
そう言ってチャラ男が同じバスに乗る。
「本当に街はずれの霊園が敵種の中間ゾーンの領地候補なのかな?」
チャラ男は揺れるバスに乗り、吊り革を手に取る。
さすがに夕方通勤ラッシュが始まり、バスの中は結構混んでいる。
「まあ、敵種が霊園を中間ゾーンの領地にするの、ありかもだけど。」
ぶつぶつ独り言を呟くチャラ男の視線にギャルJDと鬼公子の姿が目に入る。
「え? あれ?」
バスが揺れるたびに、見えたり見えなかったり。
ちょうど夕方ラッシュの混雑がうまくはまっている。
たぶん、そうだろう。鬼公子は間違いない。
ギャルJDは、あの時見た眷属だと思う。
チャラ男は気がついているが、鬼公子たちは気がついていない。
たぶん。
どこで降りるんだ?
自分と同じか?
て言うかバスで移動するんかい。
ゲート開いて、パアッと移動とかしないんかい。
揺れるバスの中、チャラ男は客に隠れて監視を怠らない。
二人席の鬼公子とギャルJDはまるで姉弟のようだ。
「次は霊園前、霊園前です。」
バス車内のアナウンスが入る。
ピンポーン!
ギャルJDが鬼公子に被さるように窓側の停車ボタンを押している。
ビンゴ!
これはチャラ男にとってチャンスでありピンチである。
霊園前のバス停に泊まる。
チャラ男は客に隠れて様子を見る。
2~3会話してバスを降りていく鬼公子とギャルJD。
行けない。
今は行けない。
チャラ男が今降りていったら、遭遇してしまう。
さすがにバス停前のバトルは危険だ。
それに仲間に連絡する前の接触は自分が不利だ。
特に降りるそぶりを見せないチャラ男。
やがてバスは走り出す。
「すみません!」
乗客をかき分け、運転席に向かうチャラ男。
「走行中の移動はお控えください。」
それに気がついたバス運転手が車内放送する。
そりゃそうだ。
「すみません。ここで降ろしてください。」
そう言って、チャラ男は胸ポケットから手帳を出す。
「は?」
ちょうど赤信号で止まった交差点。
運転手がチャラ男の手帳を見る。
「ああ、はい。わかりました。」
そう言って交差点で止まったバスの前方のドアを開けてくれる。
『特殊公務員』。
いやー、素晴らしい。
乗り物とかフリーだし。
どこでも行ける。
え? バス乗った時、何でそれ使わなかったって?
いや、あんまり権力行使すると問題なるし。
それにカードに記録が残るから、本当に行った証明になるし。
いや、チャラ男だけじゃなく、みんな同じだし。
陽が沈み始める夜の街。
チャラ男は走る。
先ほどのバス停へと。
たぶんそんなに遠くに行っていないはずだ。
チャラ男は走りながら、スマホで連絡を取る。
応援が必要だ。
もし霊園自体を中間ゾーンの領地にされたら、一人では対応できない。
気がつけば、先ほどのバス停付近に到達していた。




