第3話 澤崎と凛
風が吹く。
かなりの強風だ。
風が吹き抜ける際に不気味な絶叫が二人を突き抜ける。
次の瞬間、強い風が凛の長い髪をなびかせる。
自身の頬の傷に気づき、頬に流れる血に手を当てる凛。
「いい、下がってろ。お前には無理だ。」
澤崎の指示に反論する凛。
「しかし、先生!」
次の瞬間、しかし本当にほんの一瞬であった。
鬼公子付近の空気が歪み、強烈な嵐が巻き起こる。
それはまるで津波のよう。
水圧の如く澤崎と凛に遅いかかる。
「!」
澤崎は鞘から刀を抜き、一振り強く払う。
それはまるで押し寄せる大波を切り刻むように。
澤崎と凛のいる付近に空気の穴を開けるが如く。
鬼公子が邪悪な笑みを浮かべる。
「お兄さん、すごいね。でも要らないや。」
鬼公子の目は澤崎の背後に立つ凛へと向かう。
「眷属だったら、その子がいいな。お兄さんの洗脳が解けたら、僕勝てないし。」
バカにされたのか、凛は憤る。
「ふざけるな! 化け物め!」
鬼公子が煽る。
「今の君の表情の方が醜いよ。」
「凛、いいから下がってろ!」
澤崎が刀を振り上げて男の子に襲いかかる。
「遅いよ、お兄さん。」
鬼公子がいっそう邪悪な笑みを浮かべる。
鬼公子が身体全身から水魔法の如く、大津波を沸き起こす。
しかし、澤崎が刀で器用に振り払いその攻撃も無効化していく。
「ほう。」
鬼公子の首を目指し刀を突き進める澤崎。
次の瞬間、鬼公子の目の前で突如発生する炎の渦。
澤崎の刀はそれに弾け飛ばされる。
「ふっ。」
鬼公子の勝ち誇る笑み。
「もらった!」
次の瞬間、素早くお札を取り出す澤崎。
優勢になり気を抜いていた鬼公子の顔にお札を貼ろうとする。
その時!
「先生! 援護を!」
突然割って入る凛。
凛が介入したことで澤崎は鬼公子の顔にお札を貼れなくなる。
「凛! お前、バカ!」
鬼公子が放った炎が助けに入った凛の身体全身を包む。
「!」
全身炎の凛を助けるべく庇う澤崎に隙ができる。
「弱いよ、お兄さんたち。」
鬼公子が再度大きな炎で二人を襲う。
だがかろうじて、澤崎が振り上げたお札が二人の結界を形成する。
澤崎は全身やけどの凛を抱えて心配する。
「おい! 凛! 大丈夫か?」
ピンチになる澤崎と凛。
ここぞとばかりに攻撃の詠唱を始める鬼公子。
その時、朝を告げる鶏の声が響く。
あたりに差し込んでくる朝日。
「ふん、命拾いしましたね、お兄様たち。」
そう言って、付近に残る闇に溶け込んでいく鬼公子。
「おい! 凛! しっかりしろ!」
差し込む朝日が、鬼気迫る状況の二人を照らす。




