第19話 水崎泉とギャルJD2
店内の事務室でスマホの着信音がなる。
「おや?」
不思議そうな表情でスマホを見るチャラ男。
「あれ?」
スマホの画面がアラート=緊急事態を表示している。
「え? これなんぞ?」
マップが表示され、中間ゾーン=不可侵領域の緊急発生が表示されている。
「新月の時期じゃないのに、何で?」
気がつくとチャラ男の近くにいる澤崎が同じくスマホを見ていた。
「怨念だ。誰かの怨念が増幅して、それを敵種が吸収拡張している。」
澤崎の言葉をすぐ理解できないチャラ男。
首を傾げて考え出すチャラ男。
「でって言う、どう言う。」
チャラ男がチャラ男である所以である。
決して悪いやつでもなく、素直なやつだ。
そう言うやつは、どのグループにもいるはずだ。きっと。
「新たな中間ゾーンの発生だ。不可侵領地を新しく形成しようとしている。」
事務所のロッカーを開け、複数の武器を素早くスーツの中にしまう澤崎。
澤崎は事務所の一角にある金庫を見つめる。
澤崎は、じっと金庫を見つめ、しばし考え込む。
今、あれを使うべきか? それともまだ先まで取っておくべきか?
判断に悩む澤崎の思惑は、チャラ男の声によって我に帰された。
「新月の夜以外は敵種は能力発揮できないんじゃ。」
首を傾げながら、武器をスーツのいろんな場所に仕舞い込むチャラ男。
「怨念だ。力強い怨念を見つけることができれば、それを吸収して敵種は活動可能になる。」
出発準備が終わった澤崎。
武器でいっぱいになった風貌のチャラ男が首を傾げる。
「えー、そんなチート。でもやっぱり、女性の怨念?」
スマホで場所を確認しながら、澤崎が答える。
「男より強い。だから女性を怒らせちゃいけないんだ。」
チャラ男が口をへの字に曲げて答える。
「って、それお店のスローガンだし。」
その時、突如チャラ男のスマホが鳴る。
「あれ?」
出撃しようとしていた澤崎が歩を止める。
「何だ? どうした?」
スマホの着信表示に慌てるチャラ男。
「いや、なんでこんな時に。」
澤崎の視線を気にしながらスマホに出るチャラ男。
「あ、はいはい。なんすか? 急用すか?」
チャラ男のコソコソした動きとヒソヒソ話に澤崎が少しイラつく。
「私用なら後にしろ。早くいくぞ。」
澤崎の指示に余計オロオロするチャラ男。
「い、いや、電話の相手、こないだの渡り姫。なんか襲われてるって。」
澤崎の目が丸くなった後、すぐに鋭い目つきへと変わっていく。
「お前、連絡先を彼女に教えたのか?」
オロオロしながら視線を合わせず、言い訳をするチャラ男。
「いや、何て言うか。悲しそうな顔してたし。今すぐ死にそうな表情だったし。」
一息ついて諦めの表情をする澤崎。
「場所はどこだ?」
スマホの画面を見ながら、澤崎に目で訴えるチャラ男。
「いや、我々がこれからいく場所っす。」
* * * * * * *
恐怖のあまり、手に持っていたスマホを地面に落とす水崎泉。
普通の地面のはずなのに、まるで地面が水浸しの如く、ビショビショだ。
何が起きたの? どう言うこと?
混乱する水崎泉。
「こいつだ! こいつが私の全てを奪う!」
どこだかわからない、モヤモヤした場所。
明るいのか暗いのかよくわからない空。
そんな謎の場所でギャルJDは狂気する。
「こいつだ! この女が後から来て、私の、私の澤崎さんを独り占めしてる!
私がどれだけ通って努力したと思ってるの? 許せない! 絶対許せない!」
ギャルJDが半狂半乱で驚いている水崎泉を指差している。
「ねえ、こいつよ! こいつなのよ!」
意味不明の謎の空間内でギャルJDは水崎泉を指差し、出現した鬼公子に目で訴える。
「わかった。よくやったよ。君は優秀だ。君の怨念の力、いただくよ。」
どこからか現れた鬼公子はそう言って、半狂乱のギャルJDに近づいていく。
怒りまくっているギャルJDの息遣いが荒い。
だが鬼公子は気負うことなく手を伸ばしギャルJDの頭に触れる。
するとギャルJDの身体全身から黒い怨念が実体化して具現化する。
次の瞬間、まるで魂でも抜かれたかのようにギャルJDはその場に倒れてしまう。
「ご苦労さま。しばらくそこで休んでてね。」
鬼公子のやさしい言葉に答えるかの如く、ギャルJDはおとなしく眠りにつく。
「さてと。」
鬼公子が実体化させた黒い怨念を見上げる。
黒い怨念は自身よりも遥かに小さい男児の鬼公子に頭を垂れる。
黒い怨念の反応を見て、悦に入る鬼公子。
「渡り姫のお姉さん、僕の眷属になって。僕のやりたいことを邪魔してほしくないんだ。」
鬼公子はそう言って黒い怨念とともに水崎泉を目で脅す。
「え? なんで? なに? よくわからない!」
それはそうである。
水崎泉にとっては何が何やらわからない。
だが今、自分がピンチなのはわかる。
今の自分が危機的状況なのは嫌でも身に染みている。
「助けて。」
水崎泉は心で念じた。
誰でもいい。誰か私のことを助けて。
水崎泉は心で念じ続ける。
すると彼女の意識の中に特定人物の姿が浮かんでくる。
来て欲しい。助けに来て欲しい。
「澤崎さん、助けて! お願い!」
彼女の本心と願望が、心奥底で響き渡る。




