第18話 水崎泉とギャルJD1
人には不思議な感覚がある。
例えば
『何かこの場所、好きになれない』とか、
『こっちに行きたくない』とか。
そう言う『禁忌の場所』と言うものがある。
『この道行きたくない。』や、
『ここで引き返した方がいい。』
などである。
なぜなのか?
それは人としての本能。
『あそこに行くな。』
『こんな場所あったっけ?』
などなど。
気がつけば、知らず知らずのうちに
『進入不可』の場所ができている。
人はそれに気が付かない。
それは至る場所にあった。
なぜだか人が近寄らない場所。
人々に忘れ去られた場所。
それが街中に点在している。
それらは『中間ゾーン』。
あの世とこの世を結ぶ中間地点。
あの世である彼岸世界から来た鬼公子にしてみれば、
自身の貴重な『陣地』、または『領地』と言える。
鬼公子は必死になってそれを形成しようとしている。
それは彼自身が生きていくため。
今は飛地のようにあちこちに点在している。
最初は小さな点に過ぎなかった。
だがそれは、やがて大きな『領地』を形成した場合、
人々が住む街そのものを飲み込んでしまう。
偶然にも、その領地に迷い込んでしまったものは、
もはや元の場所へと帰ることは、できない。
* * * * * * * *
女子大生の水崎泉は落ち込んでいた。
二度とここに来るな。
出禁の告知である。
しかも、気になる澤崎さんから。
水崎泉は落ち込んでいた。
大学へは通うものの、頭には何も入ってこない。
澤崎さんからの出禁で頭がいっぱいだ。
彼女は何かを探していた。
何かの答え。
何かのヒント。
何かの対象法。
彼女の頭はそれでいっぱいであった。
彼女はふと気がつく。
自分以外に澤崎さんをを知っている人。
澤崎さんのことに詳しい人。
そうだ!
「あっ。」
目と目が合った。
確かに探していた。
水崎泉はギャルJDを探していた。
奇遇であった。
偶然であった。
だがそれは運命的であった。
だがそれは必然であった。
学内学食へと向かう廊下。
水崎泉はギャルJDを探していた。
澤崎さんのことを詳しく知りたい。
澤崎さんのことを詳しく知っている人。
お互い引き合うように近づく二人。
水崎泉はラッキーと思っていた。
だがギャルJDは計画通りであった。
ギャルJDはすでに鬼公子の眷属となっていた。
「あの。」
水崎泉はギャルJDに声をかけた。
ギャルJDは先日の時と少し雰囲気が変わっていた。
だが水崎泉はそんなことよりも優先すべき課題があった。
「なに?」
ギャルJDは答えた。
まさにギャルJDの思う壺であった。
水崎泉は積極的に話しかけていた。
「あの、知りたいんです。澤崎さんのこと。」
突然の直球質問。
普段だったらそんなことはしない。
水崎泉は普段通りの感情でいることはできなかった。
ギャルJDは落ち着いていた。
と言うより、落ち着かされていた。
鬼公子の思惑通りに動かされていた。
ギャルJDは操られるように答える。
「いいわよ。でもここじゃあちょっと。」
そう言ってギャルJDは歩き出した。
きっと水崎泉は自分の後を着いてくるだろう。
その自信と確信は事実であった。
「ねえ、どこ行くの?」
大学を出て結構な距離を歩いている。
次の時間、午後の大学の講義の予定があったが、
もうそれどころではなかった。
早足で歩いていくギャルJDを追いかける水崎泉。
初夏の日差しが彼女の汗を誘う。
息も乱れ、服も乱れていく。
だが水崎泉はギャルJDを追うしかなかった。
それは自分のため。
澤崎さんのことを詳しく知りたいから。
やがてギャルJDは歩を止めた。
いったいここはどこだろう?
来たことがない場所。
まったく知らない場所。
見たことがない変な建物。
鼻をつく変な匂い。
うっすらと霧が舞う。
さっきまで明るかったのに、急に暗くなってる。
まるで違う世界に来てしまったみたい。
まさにそこは普通の世界ではなかった。




