第17話 ギャルJDと鬼公子3
ギャルJDの実家は女系家族であった。
自分と妹、そして母親。
父親が家にいた記憶はあまりない。
外からの見た目は母子家庭そのものであった。
もちろん、親子姉妹でお風呂に入ったことはある。
だがそこに男はいなかった。
まして年下のあどけない男の子などいるわけもなかった。
だから男の子の体を知らない。
もちろん、知識はある。
経験もあったが、良い記憶ではなかった。
だが実際に今、男の子を、男の子を前にしてギャルJDは戸惑っていた。
『男は汚いもの』との過去が今、上書き消去されていく。
シャワーの湯気が霧と化す。
ギャルJDの言葉におとなしく従った男の子は、
Tシャツを脱ぎ半ズボンを脱ぎ、そしてパンツも脱ぎ捨てた。
ギャルJDの目に見たことのない異物が飛び込んできた。
自分たち女性とは体つきが異なる。
自分たち女性にはないものが男の子は所有している。
ギャルJDは興奮する自分を抑えて、男の子を風呂場に連れ込んだ。
「背中流してあげる。さ、座って。」
目の前に小学校3~4年ぐらいの男の子がいる。
おとなしく座っている。
若い男の子の皮膚呼吸が湯気にも負けず伝わってくる。
これまで嗅いだことのない若くて力強い『気』だ。
いい。
いいなあ、これ。
でも、いいよね。
ギャルJDは自分に言い聞かせた。
別に悪いことしてないよね?
だってこの子が助けを求めてきたんだもん。
寒いって言うからお風呂に入れてあげてるんだもん。
ギャルJDは自らの好意を正当化して、シャワーのお湯を男の子の背中に流してあげた。
「ありがとう。お姉さん。」
ギャルJDはその言葉に何か込み上げてくるものがあった。
「お姉さん、やさしいんですね。」
体の向きを変えてギャルJDの真正面に座る男の子。
「お姉さん、とてもきれいですね。
お姉さんが本当のお姉さんだったらよかったのに。」
ギャルJDは理性を固く締め付けた。
そうしないと自分を見失うことを理解していた。
待て待て待て。
私は悪いことはしてないぞ。
良からぬことはしてないぞ。
まだしていない。
裸になった自分の心臓がドキドキしているのがわかった。
自分の体の中で何かが蠢いているのはわかった。
だが、ギャルJDは必死に理性と戦っていた。
「僕、お姉さんの弟になれたらよかったのに。」
その言葉にギャルJDは身体の奥深くから込み上げてくるものがあった。
輝く瞳。華奢な男の子の裸の姿。
たぶん大人になったら、女を泣かす『ワル』になるであろう、その風貌。
ギャルJDは自分の理性を抑えられなくなった。
だが次の瞬間、男の子の身体全体から一斉に黒い触毛が飛び出した。
糸より細く針よりも力強い黒く輝く繊毛は、男の子の身体の肌の毛穴から、
皮膚呼吸する器官から一斉に飛び出し、
目の前にいるギャルJDの身体全身を一瞬で取り込んだ。
黒い繊毛は、ギャルJDの穴という穴へと侵入した。
ギャルJDの目や鼻、耳はもちろん、皮膚の毛穴、
皮膚呼吸の器官から体内へと侵入し、彼女を犯していった。
外からの見た目は、まるで『黒い眉』のようであった。
ずっと流れ続けるシャワーのお湯と湯煙とその音。
顎を引いて不気味な笑顔を浮かべる男の子。
そう、彼こそが、鬼公子であった。
「ま、こうした方が取り込みが早いんで。裸になった方が効率的だし。」
ムグムグと蠢く『黒い繭』。
取り込まれたギャルJDの抵抗の姿なのか、それとも一体化侵食している過程なのか。
それを見て邪悪な鬼公子が呟く。
それがギャルJDの耳に届いていようが届いていないが関係はない。
「君の怨念のパワー、いただくよ。
こうやって眷属を増やしておかないと、あの渡り姫の絶大な力に対抗できないしね。
しかし、全てを無効化できる、あの渡り姫の力。邪魔だな。」
ギャルJDが取り込まれた黒い繭が、不気味にピクピクと蠢いている。




