第15話 ギャルJDと鬼公子1
「おっしゃー! できたぜ、呪怨弾!」
作業台の机の上には100発以上の弾丸が整然と並ばれて置かれている。
だがその弾丸は、それぞれ微妙にうねうね動いている。
よく聞いてみると文句を言いながら騒いでいるようだ。
「みんな元気だね~。」
凸凹コンビは段取り良く『文句を言いまくる呪怨弾』を弾薬ケースに入れていく。
その時、各自のスマホに着信音がする。作業を一旦止め内容を見る凸凹コンビ。
スマホの画面に表示された地図画面。
この店・輝エリミネーターズを中心に、結構な距離であちこちに小さな赤い円が表示されている。
スマホ画面をスワイプしながら、穏やかであった凸凹コンビの表情が厳しいものに変わる。
小さく赤く表示されているそれぞれの円に出現確率が何%とか表示されている。
まるで天気予報のようだ。
スマホを片手に澤崎が事務室のドアを開ける。
「小ゲートがあちこちに拡張し始めたな。まずいな。」
続けて、スマホを見終わったチャラ男が体を揺らしながら事務室の入ってくる。
「ゲート封印はイタチごっこですね。とにかくできる限り封鎖ってことっしょ。」
店内のロッカーを開き中の収容物を確認するチャラ男。
「お札と聖水、塩、木製くいとハンマー。で、呪怨弾と。」
チャラ男の言葉に、サムズアップで返答する凸凹コンビ。
彼らは『新月の夜』に向けて常に備えていた。
事務所の一角にある厳重な金庫。
澤崎は自分の席に座る前に、金庫を見つめて一人呟く。
「できることなら、あれは使いたくない。」
そう願って、自身の席についた。
* * * * * * * *
ふざけろ!
ふざけんな、あの女!
途中から寝取りに来やがって、あの女!
澤崎さんは私のものよ!
ギャルJDは電車があるうちに帰宅した。
店を出る時、澤崎はちゃんとフォローした。だがそれは、店の前までであった。
明るく爽やかに手を振り頭を下げる澤崎。
お客様への真摯な対応である。
だが、ギャルJDは不満であった。
なに?
なによ?
私の時は店の前でおしまい?
間も無く終電って言うのに、
改札までお見送りしてくれないの?
私がどれだけ尽くしたと思ってるの?
私がどれだけ指名したと思ってるの?
許さない。
許せない。
あの女。
だってそうでしょ?
あの女の時はちゃんと改札まで見送りしたんでしょ?
スクランブル交差点を仲良く二人で渡ったんでしょ?
まるで恋人みたいに。
私は一人でスクランブル交差点をさみしく渡ったと言うのに。
悔しい!
許せない!
ギャルJDは自宅がある駅に着いた。
午前0時をすでに過ぎ、日にちが変わった深夜。
改札を出る。
人がほとんどいない。
もし痴漢が出たらどうするのよ?
不審者が出たら、どうするのよ?
* * * * * * * *
感じる。
恨みの感情を感じる。
怨念を感じる。
自分にはそれが必要だ。
落ちている。
力が落ちている。
自分には力が必要だ。
怨念の力が。
鬼公子は夜道を彷徨っていた。
彼は決して迷子になったわけではない。
彼に力が必要だった。
怨念の力が。
* * * * * * * *
いいわ。いいわよ。
もし変な男に襲われたら、全部澤崎さんのせいにして独占してやるわ。
私は澤崎さんのせいで酷い目にあった。
そう言いふらしてやる。
被害者は無敵なんだから。
なのに、痴漢は襲ってこない。
変態も不審者も現れない。
こう言う時に限って、あたりは平和で落ち着いた雰囲気に包まれている。
皮肉な物ね。
静かに寝静まった夜の町をギャルJDは自分の家路につく。
ふざけんな! 本当にふざけんな!
ギャルJDは説明することのできない怒りと嫉妬で地面を見つめて早足で歩いていく。
すると「すみません。」と声がする。
見るとそこに男の子がいる。
え? なに?
何でこんな時間に男の子?




