第14話 よりによって
会話は終わった。
私は澤崎さんに導かれ、来た方向を戻り、お店を出るように促された。
私は悔しかった。
澤崎さんの態度が悔しかった。
私は来た道を引き返した。
店内を無言の澤崎さんに導かれ、お店の入り口まで誘導された。
ちょうど出入り口のところのチャラ男がいた。
澤崎さんは私に声をかけることなく、私の身をチャラ男にあずける。
何か言おう。
何か反論しよう。
私は別の話題の会話のフリをして口を開いた。
「あ、あの。」
だが、背を向けた澤崎さんが少しだけ私を見てつぶやいた。
「お気をつけて。」
そう言って店内へと消えていく澤崎さん。
私の気持ちは言葉に表せられないほど大きく揺れていた。
澤崎さんに追い出されるようにお店の出入り口まで運ばれた私。
行っちゃうんだ。私を置いて。
永遠の別れ? まさかそんな。
そんなこと信じたくない。
思わず立つすくしているとチャラ男が声をかけてきる。
「どしたの? 元気ないね。」
モヤモヤする自分の気持ちを相談する勢いでチャラ男に返事する。
「私、澤崎さんに嫌われたのかな?」
突然の質問にチャラ男はサバサバしながら応対した。
「いや~、んなことないと思うけどね。澤崎さん、やさしいし。」
チャラ男のチャラい態度は普通は嫌悪感を持つことはある。
だが今の自分にとってはその言葉は救いであった。
チャラ男がやさしくそっと私の背中を押す。
「はい。渡り姫。気をつけておかえり。まだ電車走ってるよ。」
軽く流されるように店の外へと送り出される私。
膨れっ面の私を無視して、チャラ男が軽やかに手を振っている。
やだ。いやだ。
このままじゃ嫌だ。
澤崎さんの態度が気になる。
澤崎さんのことが気になる。
お店の外へ数歩送り出された私は思いがけない言葉を口にした。
今までの自分だったらめったにそんなことはしないのに。
後から思えば、もうそれしかなかった。
自分にとってそれしかもう方法が残されてはいなかった。
きびすをくるっと振り返り数歩あるいてチャラ男に歩み寄る自分。
そしてヘラヘラしているチャラ男に声をかける。
「すみません。連絡先教えてください。」
「へ?」
チャラ男の表情は微妙で複雑であった。
「お願いします。」
気がつけば自分はスマホをすでに手に取り出していた。
「あ~、ま~、店長からはダメ出しされてるんだけどな~。」
チャラ男の目が泳いでいる。
本当に文字通り目が泳ぐってことあるんだ。
ちょっと勉強になった。
だけど私は必死だった。
そうしなければ、澤崎さんとに糸口が切れてしまう。
「お願いします!」
ウエーブのかかった髪の毛を掻きながら、チャラ男は自身のスマホを取り出す。
「一応ね、お店から禁止されてるから、秘密ね。俺の連絡先、これ。」
私はギリギリのところで澤崎さんとの繋がりを確保して家路についた。
* * * * * * * *
ギャルJDは見ていた。
ギャルJDは可能な限り、全ての流れを見ていた。
輝エリミネーターズの席に座っているギャルJD。
席に座り、それらの流れを見ていた。
あの子、澤崎さんにエスコートされて、あの部屋に入って行った。
私がこれまでどれだけ澤崎さんに貢いだと思ってるの?
あの部屋は何の部屋?
あの部屋で二人は何をしていたの?
しばらくして、あの子は澤崎さんにエスコートされてお店を出て行った。
何? 何してたの?
短い時間だったとはいえ、何をしてたかとても気になる。
私がこれまでどれだけ澤崎さんを指名したと思ってるの?
しばらくして、澤崎さんがギャルJDの元へと歩み寄ってくる。
あの子は送り返したのね。ざまあみろ!
だけど気になるあの部屋の出来事。
あの部屋で何してたの?
悔しい!
頭にくる!
だけどギャルJDは歩み寄る澤崎に精一杯の笑顔で微笑みかける。
スーツの襟を正して澤崎がギャルJDの隣の席に腰を下ろす。
「遅くなりました。すみません。ご指名、ありがとうございます。」
ギャルJDはここで精一杯の演技を繰り出して澤崎に探りを入れた。
それは彼女の精一杯の抵抗であった。
「あ~、やっときた~。私の澤崎さん。」
その言葉に爽やかな笑顔で答え返す澤崎。
「すみません。遅くなって。」
ギャルJDは続ける。
「いいのよ。澤崎さんはナンバー1だから。それはそうとさっきのは、な~に?」
ギャルJDはさりげなく探りを入れてみる。
澤崎は悟られたのか悟られていないのかわからないような表情をあげて答える。
「ああ。さっきのは迷い猫が紛れ込んだので帰ってもらいました。」
「ええ~、でも長かったじゃない。」
ギャルJDの追求に澤崎は華麗にかわす。
「ああ。二度とここに来ないようにお仕置きをして、迷い猫は出てってもらいました。」
「本当?」
「本当です。迷い猫に二度とここにくるなって。」
澤崎は嘘は言っていなかったが彼女は信じるわけがない。
「へえ~、そうなんだ~。でも、いいなあ。私も澤崎さんにお仕置き、受けてみたいな~。」
ギャルJDの探りに澤崎は軽く笑って対応する。
「いえいえ、そんな。姫様にそんな事できませんよ。」
ギャルJDは誓った。
私は許さない。
ギャルJDは怒りの怨念ではらわたが煮えくりかえっていた。
許さない! あの子! 絶対許さない!




