第13話 私は納得できない
澤崎さんがゆっくりとソファに座る。
事務室中央にある応接用の豪華で大きなソファ。
そこには誰も座っていない。
それは『部外者』の『お客様用』であることを意味していた。
澤崎さんが私に対面のソファに座るように手で進める。
まるで入社試験での面接のようだ。
普通だったら、こんなホストクラブは興味はない。
だけど『落とされる』のも望んでいない自分の心。
私はゆっくり対面のソファに座る。
これから何を話すのか理解しているかのように、
それまで付近にいたイケメンホストたちの姿が遠ざかっていく。
私の心臓はこれまで以上に激しく踊っている。
私の目を見て澤崎さんが口を開く。
「君には特殊能力がある。魑魅魍魎が見えてしまうと言うこと。」
知ってる。
私も理解している。
私の目を見て澤崎さんが続ける。
「魑魅魍魎が跋扈する『中間ゾーン』に、君は自然に入っていける。
そこは危険な空間だ。」
たぶんこの間、私が紛れ込んだ場所。
私の目を見て澤崎さんが続ける。
「君は『渡り人』と呼ばれる特殊能力の他にもうひとつ、
種敵の攻撃を無効化する力も持っているのかもしれない。
邪悪な敵は、それも邪魔に感じて、君を狙うだろう。」
『渡り人』。
そんなこと言われても。
『邪悪な敵』。
あの、半ズボンの男児=鬼公子のことね。
「新月の夜、丑三つ時の頃、ゲートが開き、此岸世界から魑魅魍魎が現れる。」
澤崎さんがよりいっそう強い目で私を見つめてくる。
「ゲートが開き、中間ゾーンが発生する場所は、だいたい判明している。」
私は澤崎さんが次に言う言葉を大方予想できた。
「だから、新月の夜は外に出るな。」
聞きたくない。
「だから、もう二度と、ここに来るな。」
私はそんな言葉なんか、聞きたくない。
悔しい。
何よ勝手に。
反論しよう。私は反論した。
「でも。」
私の反論に澤崎さんは強い口調で再反論してきた。
「新月の夜の丑三つ時、ゲートが開く。ここら辺にゲートの出入り口がある。
渡り姫の能力を持つ君は、ゲートを行き来する能力があるから、もうここに来ない方がいい。
敵にも狙われるし。」
敵に狙われる。
あの時見た、悲しげでどこか邪悪な鬼公子のことを再度を思い出す。
「あいつらに目をつけられると君の命も危ない。もう普通の生活できなくなる。
だから、もう来ないでほしい。」
「でも。」
私は再反論に再々反論した。
だが澤崎さんは淡々と『お説教』を続けた。
「ゲートの所在はすべて全部確認できているわけではない。
我々の知らない場所にゲートが出現するかもしれない。それこそあなたの住む近くで。」
私はお説教は嫌いだ。
親だろうと彼氏だろうと、そして澤崎さんであろうと。
「あなたの身の安全のためにも、ここには来てはいけない。新月の夜は家から外に出てはいけない。」
私は最大級の不満の表情で反抗の態度を示した。




