第12話 案内された事務室で
「あ。」
「あ。」
思わず目と目でお互いフリーズしてしまった。
チャラ男がお店のドアを開けると、そこに澤崎が立ってお客さんを出迎えていた。
驚く澤崎さん。
気まずい私。
なんで?
なんでいきなりそこに澤崎さんが?
ちょっと、かなり、嬉しかった。
会いたかった澤崎さんに会えて心臓ドキドキバクバク。
なんて言っていいのか?
なんて声をかけたらいいのか?
フリーズして戸惑う私に澤崎さんは一瞬複雑な表情を浮かべて、私に話しかけた。
「ようこそ。輝エリミネーターズへ。さあ、こちらへ。」
しまった。
私は失敗した。
私は本当に来てはいけなかったのに、澤崎さんは気を使ってくれたんだ。
私に恥をかかせないために、何事もなかった風に取り繕ってくれたんだ。
しまった。
失敗した。
怒ってる?
怒ってるよね?
視線を下に私を見ないように足元を見て私を店内へと導く澤崎さん。
店内はゴージャスな雰囲気と洒落たBGMで満ち溢れている。
店内の至る所で、イケメンのホストや着飾った女性客がいっぱいだ。
この間の出来事の時に見かけたイケメンホストさんもいるのが確認できた。
普通の女子大学生の、ありきたりの服装できてしまった。
少し着飾ってくれば良かったかな? お店の雰囲気と似合っているのかな?
そう悩んで自分の足元を見ながら店内を澤崎さんに案内されると、
お店の中をほぼまっすぐに案内され、自分はドアのある部屋へと導かれた。
え?
なに、ここ?
特別室? VIPルームか何か?
私のその期待は見事に打ち砕かれた。
そこはVIPルームではなく事務室。
スタッフルームであった。
準備中の複数のイケメンホストたちが私を見るなり声をかける。
「あ~、いらっしゃい。渡り姫。この間は大変だったね。」
そこはスタッフルーム。
関係者の事務室、のはずだ。
内装は飾り気のない普通の事務室。
のはずだが、やかましかった。
何がやかましいって、鳥籠のような小さな入れ物が机の上にたくさん置いてある。
それが普通の鳥籠で中に普通の鳥が入っていれば良かった。
だが中に入っているのは不気味な形の魑魅魍魎の数々であった。
にも関わらず何食わぬ顔で準備している凸凹ホスト。
私が驚いて鳥籠の中の魑魅魍魎を凝視していると、
凸凹ホストはそっけなくつぶやいた。
「これ、見える? 見えるよね?」
「そうだよね~。まあ、あなた渡り姫だしね。」
え?
え?
と言う表情を私がしていると、凸凹ホストたちは鳥籠から魑魅魍魎を握って取り出し、
そして絞めていく。
そう。
鶏さんを絞めていくように。
魑魅魍魎のこの世の物とは思えない絶叫とともに締められて気絶する魑魅魍魎。
私がその叫び声が聞こえないように耳を塞ぐ。
「さすがは渡り姫だね。大丈夫。魑魅魍魎の叫び声は普通の人には聞こえないから。」
そう言って凸凹ホストたちは絞めた魑魅魍魎を慣れた手つきで交互に黄金の銃弾の中に詰めていく。
まるで火薬を詰めるように。
その仕草はコンビで行う手慣れた餅つきのよう。
「いやね、この間の百鬼夜行で大量に魑魅魍魎ゲットできたんで、銃弾作ってるのね。」
「これ、呪怨弾っ言うんだけどさ。効果あるんですよ。
怨念が詰まってて。まあ式神返しってやつ? かな?」
凸凹ホストたちはそう言って淡々と魑魅魍魎を絞めて黄金の銃弾を作っていく。




