第11話 気がつけば、再び
廊下に出たギャルJD。
思いの外、猛スピードで廊下を進む。
足音がカツカツと音を立てて廊下に反響する。
その視線は足元を見ているが視点が定まらず泳いでいる。
手に持つスマホのツーショット写真を見て思わずブチ切れた。
なになになに? ふざけろよ、あの女!
あこがれの、私だけの澤崎さんと朝帰り?
大好きな、私の推しの澤崎さんと朝帰り?
ふざけんな! 澤崎さんは私だけのものよ!
この写真撮るために、どれだけ指名したと思う?
澤崎さんに気に入られるため、どんだけ貢いだと思ってるのよ!
ふざけろ! てめえなんかと一緒にするな。同担拒否だ。憶えてろ!
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なになになに?
どう言う事?
澤崎さんって本当にホストだったんだ?
まあ、記憶を巡らせば、確かにあのお店はホストクラブだったし。
店長と呼ばれていた澤崎さんもそう言われれば、確かに本当にホストっぽい。
そりゃあ、そうだ。
でも!
だけど!
半グレイケメンホストの澤崎さんと過ごしたあの夜は普通じゃなかった。
半グレイケメンホストの澤崎さんと体験したあの夜は異常な出来事だった。
待って待って
ちょっと待って!
なにこの気持ち? なんか変?
でも、わけわからん化け物がいっぱい出てきたでしょ?
魑魅魍魎?って言うの?
変な化け物たちが百鬼夜行してたでしょ?
でも会いたい。
もう一度半グレイケメンホストの澤崎さんに会いたい?
それは半グレイケメンホストの澤崎さんが素敵だから?
始発電車に乗るために駅までエスコートしてくれたから?
でも「もう二度と、夜にここら辺には来ないように。」と言われた。
確かにそうかもしれない。
同じ大学の、ギャルJDが通ってるんだったらなおさらかも。
私が行っても悪くないはず。
会いたい。
半グレイケメンホストの澤崎さんにまた会いたい。
それに今日は新月じゃないし。
月の満ち欠けは始まっているから、大丈夫のはず。
たぶん。
気がつけば水崎泉はまた、夜の繁華街を歩いていた。
空は夜の闇に包まれ、うっすらと雲が見える程度。
だが、繁華街はそれに反抗するかのようにキラキラと輝く。
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「あ!」
「あ!」
お互い目があった。
気がつけば、例のホストクラブの前に来ていた。
確かに看板は『輝エリミネーターズ』と書いてある。
ギャルJDの話は本当だったんだ。
てか、お店の名前まで憶えてる出来事ではなかったし。
お店の前でチャラ男がお客さんの誘導をしていた。
私を見て、大きな目を丸くして驚いているチャラ男。
「あら~、おいや~。渡り姫じゃないすか。いらっしゃい。」
渡り姫。
私はそんな名前じゃない。
「いや、あの、その。」
ちょっと色々と戸惑う私に爽やかな笑顔と身のこなしで、私の身体に寄り添うチャラ男。
さすがにホストだけある。
「いらっしゃい。ようこそ。どうぞお店の中に。」
え?
確か、私って澤崎さんからこの店に来るなって言われてない?
チャラ男さん、あなた聞いてなかったの?
さすがは『チャラ男』さんだけある所以なのか。
でもまあ、ここまで来ちゃったのは私自身だし。
来てみたいから、ここまで来ちゃったんだし。
気がつけば、自分は身をチャラ男さんに預けて、
流れるようにお店の中に入って行った。




