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2 じゃあ、働こうかねぇ


朝。

境界堂。


静けさは、嵐の前触れというより

ただの“何もない日常”だった。


机の上。通帳。

数字が、やけにスッキリしている。


「……あれ?」


「どうしたの?」


「残高がねぇ」


一拍置いて、軽く笑う。


「存在しない概念になってる」

「哲学の話じゃないよ?」


「……使い方、間違えたかなぁ」


シエル、覗く。

ページをめくる。もう一度見る。


「ゼロです」


沈黙。


「……え?」


クロード。

新聞はそのまま。


「終わりだな」


シエル、淡々と分析モード。


「直近の活動履歴を整理します」


・怪異対応

・世界干渉

・遊園地


「収益」


ページを閉じる。


「ゼロです」


「社会って、優しくないねぇ」


「いや社会はずっとこうだよ!?」


「むしろ今までが異常だ」


「ぐっ……正論やめろ!!」


マスター、軽く伸びをする。


「じゃあ、働こうかねぇ」


「その言葉、マスターから出ると違和感すごいんだけど」


「選択肢はありません」


「俺はやらん」


ファニー&シエル。


「やれ」


強制労働パーティー結成



バイト編①:コンビニ


■配役


・ファニー → 接客

・シエル → 品出し&オペレーション

・マスター → レジ

・クロード → 警備(という名の圧)



「いらっしゃいませぇぇぇぇ!!!」


店内に響く。

客、ビクッ。


「声量を70%カットしてください」


「テンションもカットされてる気がするんだけど!?」


「この動線、非効率です」


棚の配置を変える。

客が迷子になる。


「えっと…パンどこ…?」


「最短距離はこちらです(誘導が速すぎる)」


客、置いていかれる。


クロード、無言で立つ。


客(小声)

「……あの人、店員?」

別の客

「いや…ボディーガード?」

さらに別の客

「何守ってるのこの店」


客の滞在時間が異常に短くなる。

入店から退店まで、最短記録更新。


レジ。

マスター。


「はい、合計480円ねぇ」


客、500円出す。


「……」

「まぁいいかぁ」

「社会実験ということで」


シエル(即座に背後)


「ダメです」


「ダメだよ!?」


「経営が死ぬ」


ファニー、袋詰め中に

無意識で空間ちょいズラす。


商品、スッと消えて別位置へ。

無意識の“微調整”。


「え」


沈黙。


「……え??」


店長

「すみません、今日までで」


全員

「はい」


外。

風が吹く。


「解雇RTA最速記録じゃない?」


「想定内です」


「働くって難しいねぇ」


「向いていない」



■バイト編②:ファミレス


夕方。ファミレス。

今度は比較的“普通”な仕事。

…のはずだった。


■配役


・ファニー → ホール

・シエル → キッチン補助

・マスター → レジ&雑務

・クロード → なぜかホール(圧を分散させるため)


「いらっしゃいませ〜♪(抑えめ)」


「オーダー、処理します」


「うんうん、いい感じだねぇ」


初めて“社会に適応してる感”


ファニー、注文を取る。


「ハンバーグセットで」


「はいっ♪」


その瞬間、ほんの無意識。

“効率化”で空間を微調整


結果:

厨房とテーブルの距離が“体感で”ズレる

——同じ店内なのに、別のフロアみたいだ


キッチン側


「……妙ですね」


皿を運ぶ距離が変わっている。


「動線が安定していない」

「修正します」


キッチン内の動きを完全最適化


結果:

料理が“異様に早く”出る


客席。


客A

「え、もう来た」

客B

「さっき頼んだばっかり…」

客C

「怖い」

「なんでこんなに早いの」


クロード、料理を運ぶ。

無言。姿勢完璧。視線鋭い。


客(震え)

「……すみません」


何もしてないのに謝られる。


レジ。

マスター。


「ポイントカードある?」


「あります」


「じゃあ全部ポイントにしとくねぇ」


シエル(瞬間移動気味に現れる)


「やめてください」


ファニー、焦る。

空間の“ズレ”を戻そうとする


結果:

店内の距離感が一瞬で揺れる。

皿がズレる

水がこぼれる

客、立ちくらみ


店長

「すみません、本当にすみません」

(なぜか店長が謝っている)




外。

夕焼け。


空が、ゆっくりと色を変えている。

昼の白が溶けて、橙が広がる。

影が長く伸びる。


四人の影も、地面に引き延ばされていた。


「……私たちさ」


風が抜ける。

少しだけ、熱が残っている。


「はい」


「働いちゃダメなタイプ?」


「今さらか」


遠くで、店の看板がきしむ。

一日の終わりを知らせるように。


「いやぁ、才能だねぇ」


「いらねぇ!!」


声が、夕焼けに吸い込まれる。

静かに落ちる空気。


シエル、ゆっくり言う。


「問題は“能力”ではありません」


「え?」


「“制御”です」


風が、少しだけ強くなる。

髪が揺れる。


「我々は、無意識で強すぎる」


足元の影が、重なる。


「つまり、社会と“スケールが合っていない”」 「適用範囲外です」


マスター、少しだけ目を細める。

夕焼けの光が、横顔を染める。


「なるほどねぇ」


一拍。


「小さく使うか、“壊さない前提で使う”か、だねぇ」


遠く、子供の笑い声。

どこか別の世界のように響く。


「今まで、やってなかったなぁ」


少しだけ、空を見上げる。


「今までって“全力でなんとかする”ばっかだったじゃん?」


「はい。だからこそ必要です」


夕日が、少しだけ沈む。


「“0か100か”ではなく」

「“1を出す訓練”を」


マスターは、軽く伸びをする。

影が、ぐっと伸びる。


「じゃあ、やろっか」


クロードは無表情。


だが、すでに立ち位置を変えている。

全員が視界に入る位置。


「…監督する」


ファニーは、にやりと笑う。

夕焼けがその表情を柔らかく照らす。


「出たね、地味に一番むずいスキル」

「ゲームでいう“最難関のやつ”!」


シエル、即座に返す。


「ゲームではありません」

「しかし、必要です」


風が止む。

夕日が、地平線に触れる。


“全力”しか知らなかった者たちが、

“加減”を覚えようとしている。


夜の気配が、静かに近づいていた。


「早くしないと明日の夕ご飯が白米だけになるしねぇ」


一拍。


「「それは阻止する!!」」


影が、同時に動く。


さっきまで伸びていた影が、

今度は“前へ”踏み出す。




訓練開始。

場所は、事務所裏の空き地。


コンクリート。

古い壁。

雑草。


「まずは“1”からねぇ」


マスター、軽く言う。


「ファニー、あの石」


指差す。

転がっている、拳大の石。


「これを“ちょっとだけ”動かしてみて」


「余裕でしょ」


ファニー、手をかざす。


集中。

空気が、わずかに歪む。


石が――

消える。


「……あれ?」


次の瞬間。


ゴゴッ。


地面の奥。

コンクリートが、内側から持ち上がる。


盛り上がる。

ひびが走る。


ボゴン。


石。

地面ごと、せり上がる。


「ちょっとじゃない!!」


「止めてる!!」


止まらない。

地面が“押し出される”。


クロードが一歩出る。

足を踏み込む。


ゴン。


それだけで、振動が止まる。

沈黙。


ファニー。


「……え?」


シエル

即座に分析。


「出力過多。制御未達」

「現在の“1”は、一般基準で“100以上”です」


マスター、苦笑。


「うん。知ってた」


ひび割れた地面を見る。


「便利だけど、そのままじゃ使えない」


風が抜ける。


「壊すのは簡単」


視線を上げる。


「壊さずに動かすのが、今回の目的」


ファニー、手を見る。

少しだけ、震えている。


「……むずくない?」


シエル、淡々。


「最難関です」


クロード、短く。


「だからやる」


マスター、笑う。


「じゃあ次。“壊さずに砂を一粒動かしてみようか”」



――その“砂一粒”が、一番遠い。





マスター「部位破壊によってハントの報酬が変わるからね!甘く見ちゃいけないよ!」

ファニー「この人ガチでゲームしてる」

シエル「1回のハントで時間は掛かっても、丁寧に剥ぎ取りを行うことによって効率的に素材採取をすることが出来ます」

ファニー「お前もか!」

クロード「狩りに行く前にしっかりと飯を食え」

ファニー「味方は居なかった」


マスター「でもさぁ」

一拍。

「“削りすぎて壊す”のはダメなんだよねぇ」

シエル「はい。“適切な出力”が重要です」 

ファニー「急に本編の話するじゃん!?」

クロード「加減を誤るな」

ファニー「全員ガチ勢な上にストイックなんだけど!?」


——結局、方向性が違うだけで全員ガチ勢だった。

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