7 “なかった”結末を、ぼくだけが覚えている
春。
やわらかい陽気。
桜が
はらはらと舞っている。
道の先。
振り返る女性。
少しだけ髪が伸びたファニー。
「ほら!マスター!」
手を振る。
「こっちこっち!」
その隣。
背の伸びた青年。
シエル。
腕を組んでいる。
「早くしないと」
少し笑う。
「置いていきますよ」
マスター
歩きながら笑う。
「うん」
桜を見上げる。
「お花見日和だねぇ」
ファニーが手を伸ばす。
「ほら、マスター。早く」
桜が舞う。
光。
暖かい。
―――
――
―
境界堂。
朝。
空気が重い。
マスターの前。
腕を組んだファニー。
怒り顔。
「マスター」
低い声。
「申し開きはある?」
横。
シエル。
冷静。
だが目が怒っている。
「俺の唐辛子せんべいと」
一拍。
「ファニーのエクレア」
静かに言う。
「食べましたよね?」
マスター
視線を逸らす。
「……」
少し考える。
そして。
「甘いとしょっぱいで美味しかったねぇ」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「鉄拳制裁!!」
「腕ひしぎ十字固め」
「いだだだだ!!」
「ギブギブ!!」
「ごめんって!」
「反省してます!!」
距離が近い。
笑い声。
―――
――
―
地下鉄。
夜。
人気のないホーム。
白い照明。
その下。
倒れている二つの影。
マスター
膝をつく。
震える手。
ファニーの肩に触れる。
「……ファニー」
揺らす。
反応――ない。
もう一度。
「おい」
声が少し強くなる。
「返事しろよ」
沈黙。
指先。
血で滑る。
呼吸。
浅い。
――遅い。
一瞬。
止まったように見える。
「……あ」
マスターの手が止まる。
世界の音が消える。
遠くで、何かが落ちる音。
それすら遠い。
「……うそだろ」
かすれる。
シエルを見る。
壁にもたれたまま。
動かない。
「おい」
立ち上がる。
ふらつく。
「シエル」
近づく。
肩を掴む。
揺らす。
ぐらり。
力なく傾く。
――軽い。
「……は?」
その軽さが、理解を連れてくる。
遅れて。
一気に。
「……おい」
喉が鳴る。
「やめろよ」
もう一度。
強く揺らす。
「起きろって」
沈黙。
完全な。
沈黙。
その瞬間。
“もう間に合わない”
という理解が、落ちる。
マスター
崩れる。
膝を打つ音。
「……っ」
息が吸えない。
肺が動かない。
視界が歪む。
「……なんで」
震える声。
「なんでだよ」
拳。
床を叩く。
「なんで発動しないんだ!!」
静寂。
暗闇の奥から。
笑い声。
「ほっほっほ」
空間が歪む。
水面のように
にじむ。
そこから
ゆっくり現れる。
亀。
周囲を見る。
倒れた二人。
血。
震えるマスター。
満足そうに頷く。
「なるほどのう」
「そのような結末になるのじゃな」
一拍。
「興味深かったぞ」
首を伸ばす。
「人間」
マスター
顔を上げる。
「……亀?」
理解が追いつく。
そして。
歯を食いしばる。
「まさか」
低い声。
「お前」
ゆっくり立ち上がる。
「僕たちの異能に干渉したのか」
亀
楽しそうに足踏みをする。
「御名答!」
甲羅を叩く。
「どのように動くのか」
「気になってのう!」
笑う。
「いやー実に良かった」
沈黙。
マスター
俯く。
拳が震える。
血が床に落ちる。
ぽたり。
ぽたり。
低い声。
「許さない」
ゆっくり顔を上げる。
瞳。
怒り。
絶望。
「こんな結末」
息を吸う。
「認めない」
亀
笑いが止まる。
目を細める。
「……ほう」
その瞬間。
マスターの瞳。
エメラルドの緑が揺れる。
そして。
にじむように。
赤に染まる。
空気が震える。
ホームの壁が軋む。
電光掲示板。
時刻。
00:00
秒針が、進まない。
亀
顔色が変わる。
前に出る。
「まて、人間!」
声が鋭くなる。
「それ以上やると世界が――!!」
マスター
静かに言う。
「代償は」
一拍。
「僕自身」
空間が歪む。
その中心。
マスターの身体。
髪。
榛色の短髪。
その色が
ゆっくり
抜けていく。
色が消える。
そして。
白く染まる。
空間が軋む。
マスター
震える声。
それでも。
「過去に飛ぶ」
決意。
ファニーを見る。
血。
動かない。
シエルを見る。
静か。
冷たい。
マスター
歯を食いしばる。
「今度こそ」
拳を握る。
「守る」
床。
血の中。
ファニーの指が
わずかに動く。
かすれた声。
ほとんど聞こえない。
「……――ますたー」
マスター
振り返る。
目を見開く。
だが。
その瞬間。
赤い光。
世界が
巻き戻る。
地下鉄。
光。
空間。
時間。
すべてが
崩れて遡る。
亀
叫ぶ。
「人間!!やめろ!!」
だが。
止まらない。
白い髪。
赤い瞳。
その中心で。
マスターが呟く。
「絶対に」
光。
爆発。
世界が
最初から書き換わる。
―――
――
―
朝。
境界堂。
ファニー
マスターの肩を揺する。
「……マスター!」
「マスターってば!」
シエル
腕を組んで見下ろす。
「魘されているのに」
小さくため息。
「起きませんね」
マスター
はっと息を吸う。
「……うっ」
目を開ける。
ぼんやりとした視線。
「ぼくは……」
言葉が止まる。
「僕、は?」
部屋を見回す。
ファニー。
シエル。
いつもの天井。
いつもの朝。
マスター
瞬きをする。
力が抜けた声。
「あれ?どうしたの」
「ファニーに、シエル……っ?」
ぽろり。
涙が一粒。
頬を伝う。
ファニー
少し驚く。
「え」
「なんで泣いてるの?」
マスター
自分の頬に触れる。
「あれ?」
不思議そうに笑う。
「ほんとだ」
少し考える。
首を傾げる。
「変な夢でも見たのかなぁ」
シエル
静かに聞く。
「覚えていますか」
マスター
少し考える。
そして。
首を振る。
「ううん。覚えてない」
その瞬間。
無意識に。
マスターの手が動く。
ファニーの手。
シエルの手。
ぎゅっ。
ファニー
びくっとする。
「え」
シエル
目を細める。
「……マスター?」
マスター
自分でも気づいていない。
ただ。
手を握ったまま。
少し困ったように笑う。
「なんだろうねぇ」
その光景を。
空白体が見ている。
静かに。
何も言わず。
その瞳は
ただ。
遠くを見る目。
空白体
小さく呟く。
誰にも聞こえない声。
ほんの一瞬だけ
寂しそうに笑う。
『……覚えてないか』
刹那。
瞳が揺れる。
視線の先。
笑いながら
揉めている三人。
空白体
ふっと笑う。
寂しさ。
少しだけ。
そして。
ほんの少しの安心。
小さく。
呟く。
『それでいい』
……
…
夜。
境界堂への帰り道。
三人で歩いてる。
静かな住宅街。
用水路。
その時。
石の上。
亀。
小さいやつ。
甲羅干し。
マスター
視界に入る。
その瞬間。
ピタッ。
足が止まる。
「マスター?」
「どうしました」
マスター
無言。
瞳。
一瞬だけ。
赤。
空気が重くなる。
マスター
ぽつり。
「……亀」
声が低い。
普段と違う。
「え、うん、亀」
「日本では珍しくない生物ですが」
マスター
一歩。
近づく。
オーラ。
じわり。
怒り。
その瞬間。
マスター
眉をしかめる。
「……あ」
頭を押さえる。
赤い瞳も消える。
マスター
苦笑い。
「ごめん」
「今の」
「ちょっと変だったねぇ」
ファニー
腕組み。
「うん」
シエル
真顔。
「かなり」
マスター
視線そらす。
「いやぁ」
「昔ちょっとね」
誤魔化す。
二人
納得してない。
境界堂。
静かな事務所。
灯り。
机。
湯気。
その時。
縁側。
コト。
小さな音。
掌サイズの亀。
「ほう」
「ここが境界堂か」
首を伸ばす。
「面白そうじゃのう」
「ほっほっほ」
空気。
ピキッ。
空間が軋む。
誰も何もしていないのに
柱。
床。
空気。
小さく歪む。
白い影。
梁の上。
シロ。
金の瞳。
細くなる。
「……何をしに来た」
「くそジジイ」
しっぽが苛立たしげに揺れる。
「ぬしは主上から」
「謹慎をくらっておったはずじゃ」
亀、のんびり首を傾げる。
「だって」
「ヒマなんじゃもん」
「ほっほっほ」
前足で甲羅をポン。
「分け身で見とるだけじゃよ」
その瞬間。
空間が、確かに歪む。
マスター。
一歩、近づく。
オーラが、じわりと滲む。
その瞬間。
“音が一つ、消える”
風の音。 遠くの生活音。
一枚、世界が剥がれる。
――誰かの笑い声が、途中で止まる。
視界の奥。
“もう一つの視線”が、開く。
重なる。
ズレる。
マスターの指先が止まる。
動いていないのに、 “操作権だけが切り替わる”
心の内側。
暗い水面。
そこに、もう一人。
白。 感情の抜けた輪郭。
空白体。
『……見つけた』
声は静か。 でも、温度がない。
マスター。内側。
「……あれ?」
遅れて気づく。
身体が、自分のものじゃない。
視界が“後ろに引く”。
自分が一歩、 外側に押し出される。
「ちょっと待って」
届かない。
声が、浅い。
空白体が、前に出る。
そのまま。 “入れ替わる”のではなく。
“上書きする”。
マスターの瞳。
緑が揺れる。
その奥から。
にじむように、赤。
呼吸が変わる。
リズムが、 別人のものになる。
ファニー。
違和感。
一拍遅れて気づく。
「……マスター?」
マスター(の身体)が、ゆっくりと首を傾ける。
その仕草が、ほんの少しだけ“ズレている”。
「……亀」
声。
低い。
滑らかすぎる。
内側。
マスターが、 “押し返そう”とする。
『……いやいやいや』
力を込める。
でも。
手応えがない。
「今だけ借りる」
一拍。
「黙ってて」
押し返す。 ――指先すら、動かない。
その瞬間。
“接続が切れる”。
マスターの感覚。
遠くなる。
音がぼやける。
身体の重さが消える。
完全ではない。
だが。
主導権は、もうない。
現実。
赤い瞳。
空気が、軋む。
空白体。
声は低い。
「……お前が」
「あの時」
「介入さえしなければ」
沈黙。
床。
ミシッ。
「ファニーとシエルは……っ!」
言葉が止まる。
シロ、ため息。
「戯れに介入するからじゃ」
「ぬしのせいで」
「可能性の一つが」
「観測不能になった」
尻尾が床を叩く。
「主上も」
「お怒りじゃ」
亀。首をすくめる。
「反省はしとるぞ?」
「ほんとじゃ」
小さく笑う。
「だが」
「ヒマなんじゃ」
そして境界堂を見る。
「だから」
「ちょっと見に来ただけじゃ」
にやり。
「見とるだけじゃから許せ」
「許せ、だとっ……!!」
怒りで更に空間が歪む。
膨れ上がる赤。
白く光る指先。
弾ける―
その瞬間。
前に出る影。
ファニー。
「やめて」
シエル。
「それ以上は」
「今のマスターじゃない」
二人。
前に立つ。
――それでも。
空白体の瞳は揺れない。
赤。
濃くなる。
空間。
さらに軋む。
床。
ミシ、ミシ。
音が消える。
呼吸音だけが、やけに大きい。
空白体。
ゆっくりと。
「……どいて」
低い声。
一歩。
床が軋む。
「そいつは」
一拍。
「消す」
「ダメ」
即答。
間を潰す。
もう一歩。
空気が重くなる。
圧が増す。
シエル。
「あなたは――」
言いかける。
止まる。
視界が、割れる。
――地下鉄。
――血。
――動かない二人。
フラッシュ。
短く。鋭く。連続。
空白体
息が止まる。
一瞬だけ、完全な無音。
……。
「……だからだよ」
ぽつり。
さっきまでの圧が、消えている。
代わりに。
“底”だけが残る。
「だから」
ゆっくり。
顔を上げる。
「許せないんだ」
ズシンッ
空間、膨張。
さっきより“遅く”、でも“重く”
亀の甲羅。
ピシ。
ヒビ。
シロ。
金の瞳で静かに観ている。
「……やめよ」
「…ははっ」
笑う。
乾いた音。
「戻る必要、ある?」
さらに一歩。
ファニー。
踏み込む。
マスターの手首を掴む。
ぎゅっ。
「あるよ」
即答。
でも声が震えている。
空白体、止まらない。
一歩。
もう一歩。
床。
ミシ、ミシ。
「……邪魔」
小さい。
だが、冷たい。
振り払わない。
シエルも動く。
一歩、後ろへ回り込む。
マスターの反対の手。
肘の少し上を、強く掴む。
「現在は――」
止まる。
言い直す。
「……ここです」
沈黙。
少しだけ長い。
呼吸が乱れる。
だが、止めない。
視線。
逃がさない。
亀を――“捉え続けている”。
ファニー。
腕を掴んでいた手が、わずかに緩む。
一瞬だけ迷う。
そして。
――指を、絡める。
手首ではなく。
掌へ。
ぎゅっ。
指が、食い込む。
「ねえ」
一拍。
「ちゃんと見て」
さらに一拍。
「私たちを」
――その瞬間。
亀が、笑う。
「ほっほ」
低い。 やけに近い。
「見ておるではないか」
「ずっと“あの時”をな」
空気が、冷える。
亀の瞳が――
一瞬だけ、金に光る。
視界の“焦点”が、強制的に合う。
次の瞬間。
――地下鉄。血。静止。
「ほれ」
“押し込まれる”。
首を傾ける。
「どちらが本物じゃ?」
一拍。
「死んだ方か?」
「生きておる“つもり”の方か?」
空白体の瞳。
揺れる。
――ギリ、と。
奥歯が鳴る。
指先が、わずかに震える。
だが、引かない。
にやり。畳みかける。
「そちらは幻か?」
「それとも――」
一拍。
「今が幻かの?」
視線が揺れる。
それでも――
“外さない”。
足が、半歩だけ沈む。
踏みとどまる。
喉の奥で、かすかに息が漏れる。
「……っ」
それは、悲鳴ではなく。
押し殺した怒りの音。
ファニーの手。
少しだけ強くなる。
シエル。
低く。
「無視してください」
短い。
鋭い。
「それは“選択肢”ではありません」
沈黙。
空白体の呼吸。
乱れる。
視線。
ほんのわずかに。
揺れる。
ファニー
小さく。
本当に小さく。
「……痛い」
握っている手。
指が、食い込んでいる。
その痛みだけが、やけに現実だった。
指先が、わずかに止まる。
でも。
視線は、まだ亀。
シエル
静かに、低く。
「あなたが見ているのは“過去”です」
「こちらが“現在”です」
沈黙。
呼吸が荒れる。
それでも一歩、詰める。
ファニー
もう一度。
「見てよ」
――何も起きない。
呼吸だけが、やけに大きい。
ここで初めて。
視線が――
亀から、 自分の意志で、外れる。
揺れる。
逸れる。
落ちる。
――手。
握られている。
体温。
生きている。
今。
ここに。
空白体
わずかに息を吸う。
うまく、吸えない。
もう一度。
吸う。
止まる。
戻りかける。
踏みとどまる。
「……っ」
空白体の呼吸が崩れる。
もう一度。
ファニー。
強く握る。
「ここにいる」
一拍。
「生きてる」
さらに一拍。
「今」
その瞬間。
視線が――
一度、戻りかける。
亀へ。
――止まる。
亀から。
完全に。
離れる。
パキン、ではなく
――ミシン、と。
空間の歪みが、砕ける。
赤が。
崩れる。
落ちる。
溶ける。
長い、長い間。
「……ああ」
目を閉じる。
「そうだった」
声が、戻る。
人間に。
「ぼくの世界は」
一拍。
「……終わったんだったね」
力が抜ける。
空気が戻る。
ファニー
うなずく。
「うん」
シエル
静かに言う。
「ですが」
「ここは終わっていません」
空白体
亀を見る。
瞳の奥。
まだ怒りはある。
「アイツは」
「許せないけど」
少し肩をすくめる。
そして二人を見る。
柔らかく。
「今の君たちに任せるよ」
空気。
ふっと軽くなる。
――だが。
ほんのわずかに。
“遅れて”歪みがほどける。
まるで。
名残が、残っていたみたいに。
歪んでいた空間が
ゆっくりと元に戻る。
亀、首を伸ばす。
「ほう」
「面白い」
シロ、尻尾を振る。
「当然じゃ」
境界堂の柱も
壁も
静かに整う。
静寂。
瞬きで緑の瞳へ。
マスターが表に戻ってくる。
――一拍。
わずかに、呼吸がズレる。
マスター、肩を回す。
「いやー」
「びっくりしたねぇ」
全員
「……」
マスター。
ぽりぽり頭を掻く。
「いきなり主導権取られたし」
ソファーに腰を下ろす。
……座る瞬間、ほんの少しだけ重そう。
苦笑い。
「感情のジェットコースターだったねぇ」
沈黙。
一拍。
「いやゆるくない!?」
机バンッ。
「さっきまで空間歪んでたんだけど!?」
シエル。
眼鏡を押し上げる。
「マスター」
静か。
でも圧。
「少しは状況の重さを理解してください」
シロ。
尻尾ぱたん。
「全くじゃ」
「ぬしは昔からそういうところがある」
そして。
亀。
腹を抱えて
大爆笑。
「ほっほっほっほっほ!!」
「いやぁ!」
「おぬし!」
涙まで浮かべている。
「怒り狂ったかと思えばこれとは!」
甲羅を叩く。
「面白い!」
「実に面白いのう!」
「笑うなジジイ!!」
シエル
小声。
「……敵ですよね?」
シロ
ため息。
「敵というより」
少し考えて
結論。
「暇人じゃ」
マスター
苦笑。
「だよねぇ」
亀、まだ笑っている。
「ほっほっほ」
「いやー楽しかった!」
誰も笑っていない。
ほんの一瞬だけ。
空気が冷える。
だが。
亀は気にしない。
「じゃあまた来るからのぅ」
ひょい、と首を伸ばす。
そして。
にやり。
「次は四重境界を見せてくれ」
――その言葉だけ。
妙に、重く残る。
ぽひゅっ。
空気が抜けたような音。
そこにいたはずの亀は
跡形もなく消える。
静寂。
マスター
肩をすくめる。
「帰ったねぇ」
ファニー
目を見開く。
「次回予告してった!?」
シエル
深いため息。
「……また来るのですか」
シロ
尻尾ぱたり。
「まったく」
低く呟く。
「…ヤツとはソリが合わんのじゃ」
沈黙。
ほんの一瞬。
誰も気づかないくらいの時間。
――空気が、わずかに軋む。
心の奥。
腕を組んでいる
空白体。
顔は真顔。
だが。
ほんの一瞬だけ。
亀のいた場所を、見ている。
一言。
『絶対やだ』
――その声の奥に。
まだ、消えていないものがある。
マスター「なんという怒りじゃ…これでは誰も止めることはできぬ!」
ファニー「空白体さま、真っ青な異国の服を着ているの」「まるで、金色の草原を歩いているみたい」
シエル「おおぉ!『その者 青き衣を纏まといて 金色の野に降り立つべし』古き言い伝えはまことであった!」
全員「ぶっふぉwww」
空白体「君たちねぇ」(怒りのオーラ)
マスター「やべっ」「逃げろー!」
全員「わー!」
空白体「待てー!」
シロ「仲がいいの」
亀「ほっほっほ!ぶっふぉ!ほっほっ!」
空白体「取り敢えず、お前から締める」
亀「ほっ!?」
間。
亀「……分け身じゃからノーカンでは?」
空白体「本体ごと行くか」
亀「待て待て待て待て!!」




