3 幼児化、ただし安全ではない
商店街のはずれ
昼。
小さな路地。
いつもの小規模な怪異の討伐依頼。
トドメを差したファニーとシエルだったが、
突然怪異が爆発、
煙に包まれる。
耳鳴り。
一瞬、世界が白くなる。
怪異の残滓が煙のように消えていく。
「大丈夫か!?ファニー、シエルっ!」
煙の向こう。
小さな咳。
「けほっ。ううっなんだっていうの」
「なぞのばくはつです。えいきょうはみちすう」
煙が晴れる。
そこにいたのは――
ぶかぶかの服を着た幼児二人。
地面にぺたん。
ちょこん。
瞬き。
「……あれ?」
「ちっちゃいファニーとシエル?」
「……縮んでいるな」
インカム。
カノンの声。
『ほほう!』
『これは興味深いですね!』
「興味深いで済ませるな」
小ファニー。
「マスター」
「うん?」
「わたし、からだが」
手を見る。
小さい。
「ちいさい」
「うん」
小シエル。
腕組み。
めちゃ小さい腕。
「じょうきょうをせいりします」
「うん」
「われわれは」
「……ようじです」
「そうだね」
「服が邪魔だな」
ぶかぶか。
袖引きずる。
「あるきにくいです」
「ころびそう」
「待て」
そのまま商店街へ歩いていく。
数分後。
戻る。
紙袋。
置く。
「着ろ」
中身。
子供服。
小ファニー
ふりふりワンピース。
「!」
「かわいっ」
即掴む。
小シエル
袋を見る。
サスペンダー付きシャツ。蝶ネクタイ。
「……」
「似合うと思うよ」
「おれは18さいです」
仏頂面。
でも。
着替える。
数分後。
小ファニー
ふりふり。
くるん。
「どう?」
「可愛いね」
「問題ない」
小シエル
サスペンダー。
腕組み。
「ふくのきのうせいは
もんだいありません」
「似合う」
「ひょうかはふようです」
『写真を撮りたいのですが!』
二人
「「きゃっか」」
商店街の帰り道
夕方。
人通り。
買い物帰りの人たち。
道の真ん中。
四人。
前。
小ファニー
小シエル
てちてち
後ろ。
マスター
クロード
「あるくのおそい」
「ほはばがちいさいのです」
「ゆっくりでいいよ」
「転ぶな」
その時。
後ろから声。
「ちょっといいですか」
振り向く。
警察官。
警察視線。
幼児二人。
↓
オッサン二人。
↓
また幼児。
警察。
「……」
しゃがむ。
「君たち」
優しい声。
「迷子かな?」
「ちがうよ?」
「ちがいます」
警察
マスター達を見る。
「この人たちが保護者?」
「うん」
警察
少し眉が動く。
「…本当に?」
一瞬だけ。
クロードを見る。
「あ、えっと」
マスターの視線が彷徨う。
詰まる。
幼児化怪異爆発。
説明不能。
「あわ、これは」
その瞬間。
小ファニー
マスターの手
ぎゅ
「!」
小シエル
クロードの手
ぎゅ
小ファニー
元気。
「しんせきのおにーさんなの!」
「われわれのほごしゃです」
「そうそう!そうなんです!」
クロード
落ち着いて。
「俺は叔父だ」
眼光が鋭すぎる。
警察。
「……」
四人を見る。
小ファニー
にこ。
小シエル
無表情。
警察
少し考える。
そして。
「そうか」
立ち上がる。
「暗くなる前に帰るんだよ」
「はい!」
「りょうかいしました」
警察
去る。
「助かった……」
その時。
小ファニー
マスターを見上げる。
「マスター」
「うん?」
小ファニー
両手上げる。
「だっこ」
「え」
「つかれた」
「ここで?」
「ろんりてきです」
「うっ」
仕方なく。
ひょい
抱き上げる。
小ファニー
満足。
その瞬間。
後ろ。
警察
振り向く。
警察の視界。
オッサン。
幼児。
抱っこ。
警察
「……」
マスター
「……」
クロード
「……」
小ファニー
手振る。
「ばいばーい」
警察
一拍。
敬礼。
去る。
沈黙。
「危なかった……」
にやにや。
「マスター」
「うん?」
「かお、まっさお」
シエル
冷静。
「ひじょうにあやしいひょうじょうでした」
「事実だ」
「フォローしてくれ!」
小シエル
クロードの手。
「て、あたたかい」
「そうか」
境界堂まで
てちてち。
「ちなみに」
「うん?」
「もしあのけいさつが」
一拍。
「こせきとうほんをもとめたら、どうするつもりでしたか」
「詰んでたね」
ファニー
爆笑。
夕暮れ。
境界堂へ。
てちてち帰る。
マスターの抱っこ。
よろっ。
「ちょ、マスター!」
「え?」
「おちるって!」
「えっ!?」
慌てて抱き直す。
「幼児地味に重い…」
「きこえてる」
「どうやって抱っこするのが正解…?」
一方。
小シエル
クロードを見る。
「……」
一言。
「俺の方も抱っこするか?」
小シエル
一瞬考える。
「します」
クロード
迷いなく。
ひょい
抱き上げる。
完璧な姿勢。
安定。
慣れている。
小シエル
「……」
胸。
広い。
腕。
クロード
普通に歩く。
小シエル
小さく。
「……あんていしています」
「そうか」
小ファニー
マスターの腕で揺れる。
「ちょ、マスター!」
「落とさない落とさない!」
「さっきかたむいた!」
「不可抗力!」
シエル
冷静。
「こうりつがわるいです」
「うるさい!」
四人。
歩く。
夕暮れ。
境界堂。
門。
「ただいまー」
ガラ。
扉。
その瞬間。
目がランラン。
カノン。
机。
ノート。
工具。
ケーブル。
「待ってましたよ二人とも!!」
「うわ」
「けんきゅうしゃです」
カノン
駆け寄る。
「さあ!」
「じっけん、んんっ!」
咳払い。
「検証です!」
「言い直したな」
クロード
シエル降ろす。
カノン
手をかざす。
「接続」
空気。
微かに震える。
カノン
目を細める。
「ほほう」
「なるほど」
ノートに書く。
「怪異エネルギーによる肉体縮小」
「もどる?」
カノン
にやり。
「明日には戻りそうですね!」
「良かった……」
「やった!」
「ひとあんしんです」
カノン
更に近づく。
目キラキラ。
「ですが」
「ですが?」
カノン
笑顔。
「今夜は観察します」
「え」
「……」
「やめろ」
カノン
聞いてない。
「まず身長測定!」
「次に反射!」
「知能テスト!」
「いや」
「おことわりします」
カノン
腕組み。
「研究のためです」
「このひと、とめて」
クロード
静かに座る。
「諦めろ」
シロ
ソファ。
目を開ける。
「にぎやかじゃの」
尻尾ゆらり。
居間
夜。
テーブル。
ジュース。
幼児二人。
ソファ。
マスター。
本。
静かな時間。
その時。
心の奥。
『ねえ』
(嫌な予感)
『身体貸して』
(断る)
沈黙。
次の瞬間。
マスターの身体が
すっと立ち上がる。
「……え?」
腕が動く。
歩く。
『借りるね』
「おい!」
居間の奥。
幼児二人。
空白体
しゃがむ。
目線を合わせる。
少し、楽しそうに目を細める。
「君たち」
「こんなに小さかったんだね」
指先で、そっと肩をつつく。
「……軽い」
一拍。
「壊れやすそうだ」
小ファニー
「……」
小シエル
「……」
「マスターじゃないね?」
「正解」
『言うなあああ!』
空白体、くすっと笑う。
「いいね、その反応」
「ちゃんと警戒してる」
――すっと手が伸びる。
「……待っ」
ひょい。
「あ!」
持ち上げる。
片手で。
「軽いね」
「本当に軽い」
小シエル、じたばた。
「はなしてください」
「じりきでおります」
ぴたり。
動き、止められる。
「無理だねぇ」
そのまま——
高い高い。
「わ!」
もう一回。
「……たかい」
三回目。
「やめてください…」
声は冷静。
だが――足は完全に宙。
空白体、楽しそう。
「いい反応だ」
「落ち着いてるのに、ちゃんと怖がってる」
小ファニー
爆笑。
「シエルとんでる!」
空白体、ちらり。
「次、ファニー」
「え」
ひょい。
「きゃっ」
両手。
ダブルで持つ。
『やめろおおおお!』
空白体、少しだけ笑いを噛み殺す。
「これはいい」
「バランスが楽しい」
同時に――
高い高い。
「うわあああ!」
「やめ――」
着地。
しかし――
すぐに掴まれる。
「次」
「まだやるの!?」
ぼす。
クッションへ沈める。
「むぎゅ」
「なにを」
小シエル、起き上がろうとする。
上から、手。
軽く。
しかし完全に押さえられる。
「力、弱いね」
「いまはようじですから!」
空白体、楽しそうに頷く。
「うん、知ってる」
わしゃわしゃ。
「やめてください」
「やだ」
さらに強める。
「かみぐちゃぐちゃなんだけど!」
逃げようとする。
——が。
片手で捕まる。
「遅い」
『やめろおお…』
空白体、満足そうに息を吐く。
「あー……」
「これはいいね」
「ストレス解消になる」
二人、ぐったり。
「……おうぼうです」
「あそばれた……」
空白体、にこり。
「遊んだよ。全力で」
一拍。
「じゃ、またねぇ」
身体の力が抜ける。
「……」
気づく。
両脇に幼児。
そっと。
二人を下ろす。
沈黙。
小ファニー
ジト目
「マスターに、もてあそばれた」
小シエル
ジト目
「マスターの、せきにんです」
「ちがっ!」
「僕だけど僕じゃないから!」
あわあわ。
シロ
ソファ。
「ふむ」
尻尾ゆらり。
「未来の自分とは」
「やっかいじゃの」
そして
時間。
「さて」
「お風呂です」
「!」
「!」
クロード
静かに。
「俺が入れようか」
小ファニー
即答。
「ぜったいやだ!」
カノン
手を挙げる。
「おねーさんと入りますか!?」
小シエル
即答。
「きゃっかです」
「なぜ!?」
マスター
苦笑。
「僕と入ろうか」
「…うん」
小シエル
少し考える。
「…それなら」
クロード
椅子に座る。
「任せた」
「観察できない…!」
お風呂
湯気。
境界堂の風呂場。
「はい、あわあわ〜」
泡。
もこもこ。
「くすぐったい!」
「きちんとあらってください」
「洗ってる洗ってる」
シャンプー。
「目つぶって」
小ファニー
ぎゅっ。
小シエル
素直に閉じる。
マスター
流す。
石鹸。
「あわあわ〜」
「マスター!あわいっぱい!」
「幼児サイズだからね」
洗い終わる。
「よいしょ」
二人を抱える。
湯船。
ちゃぷん
小ファニー
「わあ」
「あったか〜い」
小シエル
肩まで浸かる。
「ここちいいです」
マスター
笑う。
「それは良かった」
しばらく。
湯気。
水音。
静かな時間。
風呂あがり
居間。
小ファニー
パジャマ。
小シエル
パジャマ。
テーブル。
牛乳。
小ファニー
ごくごく。
「おいしい」
小シエル
静かに飲む。
「えいようです」
「僕は水でいいや」
立つ。
キッチンへ。
台所。
クロード。
料理中。
鍋。
包丁。
静かな手つき。
「何作ってるの?」
「煮物だ」
「へえ」
喉乾いた。
コップ。
置いてある。
透明な液体。
「水あるじゃん」
「……」
マスター
何も考えず。
ごく。
もう一口。
ごく。
「待て」
「?」
「それ料理酒だ」
沈黙。
「……え?」
三秒。
「……あ」
もう一口
飲む。
「やめろ」
「もう飲んだ」
「そういう意味じゃない」
三秒後
「……あつい」
顔真っ赤。
居間。
小ファニー
牛乳。
小シエル
牛乳。
その時。
マスター
ふらふら。
戻る。
「マスター?」
「……」
顔。
赤い。
シエル
観察。
「これは」
一拍。
「よっぱらっています」
マスター
笑う。
「ははっ」
「え」
「え」
心の奥。
空白体
『あ』
『面白そう』
ふっと。
意識の奥から浮かび上がる。
幼児二人。
牛乳ヒゲ。
小さな手。
くすり。
『これは確かに』
『面白い』
『少し借りるか』
意識の奥で。
空白体が
すっと前に出る。
――その瞬間。
酒精。
ぐわり。
思考に滲む。
『……ん?』
視界。
揺れる。
輪郭。
ぼやける。
空白体は
眉をひそめる。
『これは』
『酒か』
意識を掴もうとする。
だが。
思考。
滑る。
うまく固定できない。
『……待て』
『思考が』
『まとまらな』
酒。
さらに回る。
脳。
ふわふわ。
判断力。
溶ける。
一瞬。
沈黙。
そして。
『制御が効かない』
『思考が……滑る』
『固定、できな――』
もう一度
主導権を掴もうとする。
だが。
意識。
するり。
手から抜ける。
『おい』
『ちょっと待て』
『これは』
『予想外』
アルコール。
完全に回る。
思考。
ぐにゃり。
『……ちょ』
『ま』
『待』
――
主導権。
完全に。
酒テンションへ。
マスターは
ゆっくり、しゃがむ。
幼児二人。
じっと見る。
にへら。
「かわいいねぇ」
「まずい」
「きけんです」
瞳。うっすら紫。
境界融合体。
シロ
ソファの上で目を細める。
「ほう」
「また混ざったの」
融合体、ふらっと一歩。
「ふふっ……」
「なんか、いいねぇ……これ」
じーっと見る。
「ちっちゃい」
「やわらかそう」
小ファニー。危険を察知。
「にげ——」
捕まる。
がしっ。
「はやい」
顔、ぐいっと近づく。
「ん?」
にやぁ。
「牛乳ヒゲついてる」
ぬぐっ。
指で拭う。
そのまま——
ほっぺ、むに。
「やわらか〜い」
「やめろー!!」
融合体、テンション上昇。
「え、なにこれ」
「ずっと触れるんだけど」
「すごいねぇ」
ぷにぷにぷにぷに。
「かおがのびる!!」
「あっはははは!!」
次。
小シエルへ。
逃げる。しかし。
素早く回り込まれる。
「逃げるのもかわいいねぇ」
がしっ。
「確保〜」
「やめてください」
ほっぺ。
ぷに。
ぷにぷに。
「こっちもやわらかい」
「どういうこと?」
真剣に考える。
「こうぞうじょう、とうぜんです!」
融合体、聞いてない。
両手。
ダブルほっぺ。
ぐにぃ。
「あ〜〜」
「これいい……」
「のびる……」
「のばすな!!」
「もどりますから、もんだいありません」
「そういうもんだいじゃない!」
融合体、さらに近づく。
額こつん。
「あったかいねぇ」
なでなでなでなで。
止まらない。
「やめてください」
「やめなーい」
「なんでですか」
「かわいいから」
即答。
「理由になっていません」
「なるよぉ」
ぎゅー。
抱き寄せる。
「くるしい!」
「あつがつよいです!」
融合体、満足げ。
「あー……最高……」
「ずっとこれでいい……」
「戦いとか、いらないよねぇ……」
小ファニー気づく。
「もしかして」
「パラドクスのマスターって」
小シエル分析。
一拍。
「つまり」
「よっぱらいです」
「ははっ」
三分。
経過。
光。
消える。
融合解除。
しかし。
マスター。
「……ふふ」
赤い顔。
笑う。
「あー」
「かわいいねぇ」
「かわってない!」
「アルコールです」
マスター
しゃがむ。
二人の頭。
なでなで
「さ」
「良い子は寝る時間だよ」
ふらっ。
少しだけ、よろける。
「え」
「まってください」
マスター
二人抱える。
ひょい
「ちょ」
「きけんです」
マスター
歩く。
寝室。
布団。
ぼふ
三人。
マスター
二人を引き寄せる。
ぎゅ
「くるしい」
「ちかい」
マスター
笑う。
「ふふっ」
「僕と一緒に寝ようねぇ」
「……」
「……」
小ファニー
小声。
「これ」
シエル
同じく小声。
「にげられません」
小ファニー
布団の中。
ふと。
天井を見る。
少しだけ。
静かに。
「……ねぇ」
「うん?」
小ファニー
小さな声。
「くらいとこって」
一拍。
「なんか、いるよね」
「見えないだけで」
沈黙。
シエル。
「いません」
即答。
――一拍。
視線、わずかに逸れる。
「……いません」
マスター
優しく。
「大丈夫だよ」
頭を撫でる。
小ファニー
ぎゅっと目を閉じる。
「……うん」
「…おやす…み……」
「ねましたね」
「つみです」
「え」
マスター
すでに。
寝落ち。
腕。
がっちり。
夜。
逃げ場のないまま、
更ける。
……
…
朝
光。
マスター
目を開ける。
「……ん」
状況。
理解。
腕の中。
幼児二人。
抱きしめたまま。
「……なんで」
ゆっくり。
顔。
赤くなる。
小ファニー
目を開ける。
ジト目。
「マスター」
小シエル
同じく。
ジト目。
「せつめいしてください」
「違う!」
「これは事故だ!」
境界堂 居間
朝。
テーブル。
カノン。
腕組み。
目。
ギラギラ。
「ふむふむ」
二人を見る。
小ファニー
ぐったり。
小シエル
遠い目。
カノン
にこっ。
「そろそろ戻りそうですね!」
「え、もう?」
カノン
指を立てる。
「大人の服に着替えた方が良いかと思います!」
「うん、それぜったいそう」
「どういします」
二人。
ふらふら立つ。
寝室。
数分後。
境界堂。
静か。
その瞬間。
ぼんっ
白煙。
「おおっ」
煙。
晴れる。
そこに。
ファニー(通常)
髪。
整えながら。
「あ〜……」
肩。
落とす。
「やっと戻った……」
ソファ。
倒れ込む。
シエル(通常)
眼鏡直す。
「疲れました」
遠い目。
カノン
ぱちぱち。
「成功ですね!」
「成功……?」
「検証対象でしたか」
カノン
満面笑顔。
「はい!」
マスター
ほっと息。
「よかった……」
二人を見る。
普通サイズ。
いつもの二人。
一瞬。
沈黙。
マスター
ぽつり。
「……でも」
「ん?」
マスター
少し笑う。
「かわいかったな」
一拍。
ファニー
ジト目。
シエル
ジト目。
同時。
「「だれのせいですか」」
「あ」
カノン
横で。
メモ帳。
サラサラサラ
「カノン」
「はい?」
ファニー
にっこり。
「そのメモよこせ」
「やです!」
逃走。
「追います」
「捕まえろー!」
境界堂。
朝から。
大騒ぎ。
「……ですが」
「ん?」
シエル
少しだけ笑う。
「マスターは、少し嬉しそうでしたね」
ファニー
一瞬。
考える。
そして。
小さく笑う。
「まあね」
少しだけ。
……
…
後日 境界堂
昼。
静かな事務所。
扉。
ばーん!
カノン
満面の笑顔。
「こんにちはー!」
「うわ」
「テンションが高い」
カノン
両手を広げる。
「今日は二人に朗報です!」
「ろくでもない顔してるね」
クロード
新聞。
ぺら
カノン
胸を張る。
「なんと!」
ポケットから。
謎の装置。
ボタン。
アンテナ。
よくわからないメーター。
「幼児化するための装置が完成しましたー!」
沈黙。
カノン
拍手。
「いえーいパチパチパチー!」
無反応。
ファニー
真顔。
「誰が使うの」
シエル
腕組み。
「需要がありません」
カノン
きょとん。
「え?」
「かわいかったじゃないですか!」
二人。
ジト目。
「誰のせいで」
「そうなったと」
カノン
目を逸らす。
「てへ」
マスター
苦笑。
「まあまあ」
装置を見る。
ぽち
「押さないでください」
ぶぉん
光。
煙。
全員
「「「あ」」」
煙。
晴れる。
ソファの上。
小マスター。
「……」
沈黙。
小マスター
困った顔。
「あれ?」
ファニー
吹き出す。
「マスターが幼児化してる!」
シエル
即座。
「大事故です」
クロード
新聞。
一言。
「……自業自得だ」
カノン
メモ帳。
爆速筆記。
小マスター
あわあわ。
「ちょっとまって!?」
「どうやってもどるのこれ!?」
カノン
にこっ。
「いまから調べます!」
ファニー
笑い転げる。
「今日はマスターの日だね!」
シエル
静かに。
「検証します」
小マスター
青ざめる。
「やめて」
ファニー「どうしてマスター、ボタン押しちゃうの」
シエル「不用心です」
マスター「ボタンは押すために存在しているんだよ?」「押すなは押せって意味だよね?」
カノン「駄目な大人というやつですね!」
全員「お前が言うな!!」
一拍。
シロ「ほんにの」




