人物録 第五章まで
■ 第五章 人物録
■ マスター
三十五歳。
逃げ場のない大人。
社会的にも、法的にも、
責任を持つ年齢だ。
性別:男
榛色の髪。
光に触れると秋の色になる。
エメラルドの瞳。
綺麗すぎて、感情が読めない。
背は高め。
姿勢は穏やか。
微笑みは常備。
必要に応じて角度調整可能。
倫理的には大人。
精神的には未確定。
選ばなかった未来が、
まだ隣を歩いている。
最近は振り回され気味である。
それでも、歩くことはやめない。
■ ファニー
十八歳。
シエルにお姉さん風を吹かせている。
性別:女
金髪ツインテール。
重力にちょっと反抗している。
ピンクの瞳。
怒ると濃くなり、笑うと淡くなる。
小柄。
だがエネルギー密度は高い。
無敵と未完成が同居している。
そして、それを本人は気にしていない。
リアクション担当。
だが同時に、
場の温度を決める起点でもある。
そして、止める役もやる。
■ シエル
十八歳。
ぴかぴかの新成人。
性別:男
銀髪をひとつに結ぶ。
整いすぎて、少し冷たい。
青い瞳。
観察と分析。
長身。
無駄のない動き。
彼は知っている。
大人という生き物が
意外と壊れやすいことを。
だから
少しだけ支えている。
気づかれないように。
それが彼のやり方だ。
■ シロ(年齢:数百年)
年齢不詳。
時代をまたぐ白。
猫型。
白い身体
金の瞳。
人と時間の境界線を
軽々とまたぐ。
気まぐれで、
だが見ている。
観測者は
だいたい
最後まで席を立たない。
終わりも、見届けるために。
■ クロード
四十二歳。
完成されている、と
他人は言う。
時間を味方にした男。
性別:男
漆黒の髪はオールバック。
ただ一本だけ、前髪が落ちる。
わずかにこけた頬。
削ぎ落とされた輪郭。
琥珀の瞳。
光を飲み込む色。
長身、細身。
黒のスーツ。
立っているだけで
場の温度が半度下がる。
ときどき視線が止まる。
選ばなかった側へ。
実は子煩悩。
本人は
認めていない。
そして、それを
見逃さない。
■ カノン
二十歳。
自称・天才。
師匠公認・問題児。
性別:女
ウェービーセミロングの黒髪
好奇心にきらめく蒼瞳
整えているはずなのに
いつも少しだけ乱れている。
好奇心が常に点火している。
研究者。
メカニック。
怪異オタク。
そして爆発の常習犯。
未知を見つけると
止まれない。
「なるほど!」
と言った直後に
大体なにか壊す。
成功率は高いと、本人は言う。
クロードの実子。
やらかしたときに説教をされる。
だが、その最中でも好奇心は止まらない。
説教時間
平均二時間。
なお、反省はしていない。
■ 空白体(年齢:未来)
年齢:未来。
マスターの未来。
可能性の一つ。
存在としては
「空白」。
姿はマスターと同じ。
擦り切れたような白髪
ピジョンブラッドの瞳。
だが表情が違う。
目は楽しそうで
どこか退屈そう。
世界よりも
「マスターをからかうこと」
に強い興味がある。
世界は
だいたい
後でどうにかなる。
他の人間にはあまり関心がない。
だが
コンビニには興味がある。
プリンにも興味がある。
初登場時の悲壮感は何処に行った。
――そして。
■境界融合体
三分間だけ
完全な一体になる。
現在は空白体優位な性格。
戦闘、及び解除後のマスターの反応を楽しんでいる。
その三分で
だいたいロクでもないことをする。
性格の若干の誤差さえ無くなれば
あるいは…?
未来は時々、
現在をからかいに来る。
そして、少しだけ壊しに来る。
■ 若葉(年齢不詳)
年齢不詳。
マスターの母。
性別:女
榛色の髪。
新緑の瞳。
どこか
マスターと似た顔立ち。
いつもニコニコしている。
肌は妙にツヤツヤしている。
年齢の話になると
なぜか話題が変わる。
交友関係が異様に広い。
商店街。
病院。
警察。
近所の猫。
なぜか
みんな知り合い。
感が鋭すぎる一般人。
マスターの異能のことも。
怪異と戦っていることも。
全部
なんとなく察している。
でも
何も聞かない。
何も言わない。
ただ見守っている。
食べるのが大好き。
人が笑顔になるのが大好き。
台所に立つと
家の空気が少しだけ軽くなる。
シロが一度だけ言った。
「この女、普通の顔をした台風じゃな」
だが
この人が本気で怒ると
たぶん
誰も勝てない。
たぶん、ではない。
■藤堂
五十九歳。
枯れかけの現役。
異能管理側の人間。
性別:男
白髪。
神経質な目。
常に胃薬を持っている。
異能は《指定》
言葉で対象を固定する能力。
対象・範囲・条件を言葉で定めることで
状況を拘束する。
管理側の人間としては
非常に有用な能力。
だが本人は
かなりのビビり。
怪異より
責任を恐れている。
報告書を書くたび
胃を痛めている。
最近、
南の島で
双子を拾ったらしい。
本人曰く
「拾ったわけではない。保護だ。保護」
誰も信じていない。
本人も
半分くらい
信じていない。
それでも責任は、逃げてくれない。
■新渡戸
四十八歳。
教師。
現場寄りの大人。
性別:男
少しくたびれたスーツ。
コーヒーが似合う顔。
異能は無し。
だが
妙に勘が鋭い。
危険な空気を
言葉より先に察する。
学生を見る目はやさしい。
怪異より、人間のほうをよく見ている。
問題児に対しても、怒鳴るよりまず話を聞くタイプ。
本人曰く
「怪異は対処できる。人間は難しい」
教師は、だいたいそっちを相手にしている。
だから、逃げない。
空白体が各キャラをどう見ているか
■ マスター(現在)
評価:過去の自分/まだ壊れていない自分
「まだ、間に合う段階の僕」
未来の自分から見れば
現在のマスターは
まだ
選択肢が残っている存在。
だからからかう。
だから守る。
そして
同じ失敗を繰り返させないように、少しだけ介入する。
それが、唯一の後悔だから。
■ ファニー
評価:懐かしい存在
空白体は知っている。
この世界のファニーと
未来で一緒にいたファニーは
完全に同じではない。
性格も。
選択も。
最後も。
だから距離を取る。
「似ているね」
それ以上は
踏み込まない。
踏み込むと
未来の記憶が混ざるから。
でも。
マスターの隣にいることは
少しだけ安心して見ている。
そこが、変わらないから。
■ シエル
評価:理解している人間
シエルもまた
未来で共にいた存在。
だから
行動
思考
癖
全部
空白体は知っている。
ただし
このシエルは
まだ未来のシエルではない。
だから
「少しだけ違う」
その違いを
観察している。
間違えないように。
■ シロ
評価:観測の同類
「君は外側にいる」
シロは
時間の外。
空白体は
時間の先。
似ているようで
位置が違う。
だから
互いに
理解はできる。
ただし
干渉はあまりしない。
どちらも、やりすぎると壊す側だから。
■ クロード
評価:マスターを守れる大人
未来で
何が起きたかは不明。
ただし空白体は
クロードを見て思う。
「この人は、まだ壊れていない」
そして、簡単には壊れない。
それだけで
評価は高い。
マスターの側にいることも
安心材料。
■ カノン
評価:予測不能な因子
未来でどこまで関わったかは
少し曖昧。
ただし
カノンは
未来でもカノン。
「壊す人間」
そして、そういう人間は
未来を動かす。
予測できないまま。
だから
面白い。
■ 若葉
評価:母
ここだけ
空白体の反応が変わる。
未来存在でも
関係は変わらない。
母。
若葉は
たぶんこう言う。
「あなたも直人でしょ?」
そして
「ご飯食べてる?」
空白体は
数秒止まる。
世界の観測者でも
未来存在でも
母の前では
ただの息子になる。
これは
未来でも変わらない。
――変えられなかったものだ。
■ 藤堂
評価:制度側の人間
空白体はあまり関心がない。
理由は簡単。
制度は
未来ではだいたい崩れるから。
ただし
マスターに危害を加えるなら
処理対象。
■ 新渡戸
評価:観察者寄りの人間
新渡戸は好奇心を持つ側。
だから少しだけ興味がある。
だが、未来の情報はあまり見せない。
見せると世界線が歪む。
それでも、気づく可能性がある。
■ 自分自身
評価:まだ終わっていない存在
空白体は知っている。
未来は確定していない。
だから
わざわざ
戻ってきている。
まだ、終わらせないために。
■持ち物チェック
マスター
絆創膏がやけに多い。
なぜか減らない。
スティック羊羹も入っている。
非常食と言い張るが、普通に食べる。
ファニー
中身が安定しない。
潰れたおにぎり。
いつ入れたのか分からない物体。
本人は「使うかもしれない」で全部通す。
シエル
無駄がない。
必要な物だけ。
配置も最適化されている。
たまに他人の不足分が補填されている。
クロード
最低限。
だが抜けがない。
ソーイングセットが入っている理由は不明。
本人は説明しないが、必要な時に必ず使う。
カノン
工具。
スパナ。
何かの部品。
たまに煙が出る。
本人は「軽量化してる」と言い張る。
空白体
レシート。
プリン。
以上。
レシートは過去の証明。
プリンは現在の目的。




