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1 怪異反応の再現実験です!


■境界堂


朝。

境界堂の研究室。


机の上には奇妙な物が並んでいる。


怪しい瓶。

金属装置。

護符。

配線だらけの箱。


そして中央。

白衣の少女。

カノン。


両手を広げる。


「本日の実験は!」


目が輝く。


「怪異反応の再現実験です!」


沈黙。


ファニーが机を見る。


「やめろ」


「え」


「その机、爆発の前兆しか並んでない」


シエルが装置を覗く。

レンズが小さく光る。


「安全基準は満たしていますか」


「多分!」


「ダメなやつだ!!」


クロードが腕を組む。


「片付けろ」


「理論はあります!」


マスターが瓶を覗く。

中には黒い液体。

ゆっくりと渦巻いている。


「それ何?」


「疑似負感情溶液です!」


「名前がもう危険!」


カノンが胸を張る。


「怪異は人の負の感情が集まって生まれます」


装置を軽く叩く。


「つまりそれを再現すれば!」


シエルが続ける。


「怪異反応を観測できる」


「そうです!」


「つまり危険だ」


「違います!」


カノンがスイッチを押す。


カチ。

装置が唸る。

ウィィィン。


瓶の液体が震える。

マスターがぼそっと言う。


「また爆発する予感がする」


心の奥。

声。


『爆発は浪漫』


(だろうね)


装置の振動が強くなる。

ウィィィィィン。


ファニー。


「いやこれ」


装置が一瞬、静かになる。


次の瞬間。


ドン。


白煙。

沈黙。

研究室。

煙。

机は黒焦げ。


カノンの髪が少し焦げている。


ファニー。


「ほらああああ!!」


クロード。


「片付けろ」


カノンが咳き込む。

しかし。

目が輝いている。


「でも今!」 


装置を見る。


「負感情波形が出ました!」


シエルが端末を見る。


「……確かに」


画面には波形。

ギザギザの線。


「市街地で同じ反応を検出」


研究室が静かになる。

ファニー。


「え」


シエル。


「強い負感情の集中」


画面に位置が表示される。

路地裏。


ファニー。


「誰かめちゃくちゃイライラしてる?」


マスターが画面を見る。


「小さな怪異かな」


カノン。


「現地観測!!」


クロードがコートを取る。


「行くぞ」


ファニー。


「結局行くのかよ!」


マスターが歩き出す。

心の奥の声。


『面白そうだ』


(まあね。だいたいロクなことにならないけど)


研究室の机。


割れたガラス。

その中。

黒い液体が

静かに揺れる。


まるで

鏡のように。


一瞬。


誰も立っていないはずの場所に

“遅れて”影が映った。


すぐに

揺れて消える。


誰も気づかない。



■街


境界堂を飛び出す。


朝の街。

まだ人通りは少ない。


クロードが先頭を歩く。

コートが揺れる。

ファニーが後ろから叫ぶ。


「ちょっと待てカノン!」


カノンは小走り。

白衣がばさばさ揺れる。


「はい!」


「怪異ってどういう仕組みで生まれるんだよ!」


カノンは元気よく答える。


「簡単です!」


数歩。


「人間の負の感情が!」


さらに数歩。


「溜まって!」


さらに数歩。


「濃縮して!」


息が上がる。


「形を……」

ゼェ。

「持つと……」

ゼェ。

「怪異になります……!」


ファニー。


「説明しながら息切れしてる!」


カノンは胸を押さえる。


「はぁ……はぁ……」


しかし目は輝いている。


「例えばですね……」


歩きながら指を立てる。


「怒りが集まれば攻撃的な怪異」


「悲しみが集まれば彷徨う怪異」


「恐怖が集まれば捕食型」


ゼェ。

「つまり……」

ゼェ。

「感情が……」

肩で息。

「核なんです……!」


シエルが淡々と言う。


「理論上は感情密度が高い場所ほど怪異は強くなります」


「じゃあ満員電車ヤバいじゃん」


「実際ヤバいです」


「無駄口を叩くな」


「無駄じゃありません!」


息切れ。


「重要な……」

ゼェ。

「研究……」

ゼェ。

「データ……」


突然。


カノンの足が止まる。

前のめり。


「むりです」


「早いよ!」


「研究者に……」

ゼェ。

「走る仕様は……」

ゼェ。

「搭載されてません……」


クロードが振り返る。

無言。


カノンをひょいと持ち上げる。

肩に担ぐ。


マスターが小さく笑う。


「優しいねぇ」


「違う」

「研究効率だ」


わずかに間。


「落とすと面倒だからな」


(肩の上)

「聞きましたか!?」

「合理的配慮です!」


「はいはい」


小さく呟く。


「いい父親だ」


「……聞こえているぞ」


シエルが端末を見る。


「怪異反応まであと二十メートル」


マスターが路地を見る。


朝日が届かない。

影が濃い。

心の奥で声。


『来たね』


(ああ)


路地の奥。


黒い影が

ゆっくりと

揺れていた。


まるで

呼吸するように。


 

マスター「爆発で頭がレインボーアフロになっちゃった」

ファニー「反省しろ」

シエル「研究室の修理費、計上します」

カノン「科学の進歩です!」

クロード「片付けろ」


マスター「……あのさ」

全員を見る。

「僕の頭」


沈黙。


ファニー「派手だね」

シエル「視認性は高いです」

カノン「サンプルとして保存したいです!」

クロード「洗え」


マスター「心配して!?」

ファニー「してるしてる」

シエル「してます」

カノン「大変興味深いです!」

クロード「片付けてからにしろ」

マスター「順番おかしくない!?」

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