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エピローグ 全部終わって、焼き肉


境界堂

焼き肉パーティー説明会


夜。

境界堂の庭。


簡易コンロが並んでいる。

ジュウウウと肉が焼ける音。


脂が落ちて

火がパチパチ跳ねる。


煙の向こうで

境界堂メンバーがワイワイしている。


その中心。


クロードの隣に座る少女。

カノン。


境界堂メンバーはまだ

事情をよく分かっていない。


沈黙のあと。


カノンが元気よく言う。


「というわけで!」


箸を掲げる。

満面の笑み。


「重大発表です!」


「ワタクシ、クロードの娘です!」


肉をひっくり返していたファニーの手が止まる。


「……え」


一拍。


「え?」


空気が固まる。

シエルがメガネを押し上げる。


「結婚していたとは予想外です」


「見合いだ」


ファニーの目が星みたいに輝く。


「奥さんは!?」


クロードの手が

一瞬止まる。


カノンが肉を頬張りながら言う。


「パパったら愛想つかされて離婚届叩きつけられたんだよ〜」


「いやそれ軽く言うことじゃないやつ!!」


カノンはケラケラ笑う。


「大丈夫大丈夫!」

「ママ今海外でバリキャリしててさ!」

「すっごく充実してるから!」


シエルが静かにうなずく。


「それは良かったですね」


クロードは無言で肉を焼いている。

煙が彼の顔を隠す。


ファニーが身を乗り出す。


「で!」


「どうしてクロードが師匠なの!?」


「ノリ」


「ノリ!?」


「学園で久しぶりに会った時に、「臨時教官だ」っていうからさ!師匠の方がカッコいいでしょ!」


「帰れ」


「まだ説明終わってないよ!」


肉をつまみながら続ける。


「あと捕まってた理由!」


「重要ですね」


「餓狼の無断アップデートばれた!」


「Garou System」

「勝手にVer2にしたら怒られた!」


境界堂メンバー


「……」


沈黙。


クロードの手が止まる。


「アップデート?」


カノンは胸を張る。


「だってワタクシが作った初期モデル欠陥あったし!」

「武装も足りないし!」

「だからワタクシが改造したの!」


「飯の時に兵器の話をするな」


「えー」


肉をひっくり返す。


「勝手に作るな」


「だってパパの武器だし」


シエルが静かにまとめる。


「つまり」


「機関の兵装を」

「無許可で改造」

「そして無断公開」


「そう!」


「捕まりますね」


一拍。


「普通に」


「捕まった!」


「元気に言うな!」


クロードが小さくため息をつく。


「……馬鹿だ」


「パパの娘だからね!」


少し沈黙。


肉の焼ける音。


カノンが急に立ち上がる。


「というわけで!」


「ワタクシ!」

「ここで働きたいです!」


「……帰れ」


ファニーがすぐ食いつく。


「いいじゃんいいじゃん!」

「技術者増えるし!」


シエルも淡々と言う。


「機関より安全でしょう」


カノンの顔がパッと明るくなる。


「やったー!」


クロードは額を押さえる。


「……頭が痛い」


ファニーが笑う。


「諦めなって!家族なんでしょ?」


クロードは何も言わない。


ただ

焼けた肉を


黙って

カノンの皿に乗せる。


カノンがニヤッと笑う。


「パパ優しい」


「……焼きすぎただけだ」 


煙が夜空へ昇っていく。

境界堂に

新しい騒がしさが増えた。



庭のテーブル。

皿はすでに山。


肉の煙が夜空にふわふわ漂う。


カノンはまだ箸を振り回している。


「次!次ください!」


ファニーが笑う。


「まだ食べるの!?」


「まだまだ!」


胸を張る。


「10人前はいけますよ!」


境界堂メンバーがどよめく。


「……燃費が良いのか悪いのか判断に困ります」


カノンはすでに三皿目を空にしている。

クロードは腕を組んで見ている。


「食いすぎだ」


「成長期です!」


「便利な言葉!」


その時。

縁側から声。


「……おーい」


全員が振り向く。


そこにいたのは

マスター。

顔色が悪い。

腹を押さえている。


「どうしたの!?」


「いや……」


弱々しく言う。


「焼き肉って」

「こんな重かったか……?」


「昔は三十皿いけたのに」

「証人はいないけど」


「はい!ダウト!」


「年齢の問題です」


「やめろ」


隣を見ると

クロードも同じ姿勢で座っている。

腕を腹に当てている。


「クロードまで!?」


「……脂が」

「敵になった」


カノンが肉をもぐもぐしながら言う。


「パパ弱っ」


「黙れ」


マスターが笑う。


「若いのはいいな」


「ですよね!」


さらに肉を取る。


「本当に十人前いきそうですね」


ファニーが感心する。


「すごいなあ」


マスターがカノンを見る。

少しだけ優しい顔。


「元気でいい」


「はい!」


肉を掲げる。


「いっぱい食べて!」

「いっぱい作って!」

「いっぱい遊びます!」


境界堂メンバーが笑う。


クロードは小さくため息。

でも

ほんの少しだけ

口元が緩んでいる。


マスターが空を見上げる。


夜風。


焼き肉の匂い。


騒がしい声。

笑い声。


「……平和だな」


「ね!」


その横で

クロードがぼそっと言う。


「胃薬あるか」


「あります」


「もうおじさんコンビじゃん!」


カノンが元気よく叫ぶ。


「追加カルビお願いします!」


全員「まだ食うの!?」


夜の境界堂に

笑い声が広がった。





………

……




「特別観測記録:優雅な朝」


朝の境界堂。

障子から光。湯気。平和。


「ふあ〜、マスターおはよう」


「おはようございます。マスター」


「ああ、おはよう。今日もいい天気だな」


やけに爽やか。

風まで似合っている。


沈黙。


ファニー、目を細める。

シエル、眼鏡を押し上げる。


「……なんか違う」


「違和感があります」


その時。


コツ、コツ。

階段を下りる靴音。


「おまえ、何してるんだ…」


「なんのことかな?」


にこやか。

クロードの視線、鋭い。


マスターは肩を竦める。


「僕が起きないから、ちょっと借りてるだけさ」


「借りてる?」


「…まさか」


「戻れ、空白体」


「嫌だね」


椅子に座り

脚を組み


紅茶を一口。


優雅。


「こういう普通の朝、やってみたかったんだ」


「理由がかわいい!」


「だが不法占拠です」


「あと五分」


「まだ紅茶飲んでないし」


その時。


マスターの指先が

ぴくりと動く。


「……あれ?」


視界が

一瞬だけ

二重になる。


まぶたが

ゆっくり開く。


マスター。


「……ん?」


目をこする。


「おはよう」


マスター(空白体)。


「ちょ、ちょっと待っ」


体の奥で

何かが

するりと位置を変える。


クロード。


「戻れ」


『あっ』


主導権が

静かに奪い返される。


カップの紅茶が

小さく揺れた。


その表面に


ほんの一瞬だけ


マスターが二人映った。


マスター、瞬き。


「……今、僕紅茶飲んだ?」


「飲んだ」


「優雅に」


「乗っ取られていた」


「えぇ」


下を見る。

自分の手。

紅茶カップ。


「味は?」


「うまい」


「悔しいけど」


「……完璧だ」


「なんで!?」


ソファの上。

シロ、目を開ける。


「ふむ」


尻尾ゆらり。


「優雅じゃったな」


「知ってた!?」


「観測者じゃからの」


「止めて下さい」


シロが尻尾を揺らしている。


「面白かったのじゃ」


「止めろって言ったじゃん!」


「倫理的にも問題があります」


「……次は叩き出す」


その時。

障子がスッと開く。

カノン。


「おはようございまーす!」


元気いっぱい。

手には

ノートPCと工具箱。


「早っ!」


「朝のログ取りです!」


「何の」


「さっきの!」


全員

「……」


カノンがマスターを見る。

目キラキラ。


「今の!」

「空白体接続現象ですよね!?」


「え」


「触るな」


カノンはすでに

マスターの周りをぐるぐる歩いている。


「すごいなー!」

「人格分離型共有体!」

「でも接続ラグある!」


「0.3秒くらい!」


「ラグ」


「はい!」


ノートを開く。


「ワタクシさっき試したんですよ!」


「何を」


「接続!」


「接続!?」


「でも」


首をかしげる。


「全然つながらないんですよね」


「当たり前だ」


「パパは?」


「論外だ」


「ですよねー」 


カノンはマスターを見る。


「たぶん」

「適性ある人じゃないと」

「入れないんですよ」


「つまり」


「マスター専用回線みたいな感じ?」


「Wi-Fiか!」


「僕ルーターなの!?」


シロがのんびり言う。


「いや」


尻尾ゆらり。


「門じゃな」

「境界の」

「内と外をつなぐ」


「門!?」


「空白体は」

「ここを通っておる」


「えぇ…?」


「説明が壮大!」


カノンは真剣な顔。


「でも」

「接続できたら面白いなあ」


「やめろ」


「だって!」


目がキラキラ。


「優雅モード再現できるかもしれないじゃないですか!」


「いらない!」


「いりません」


「ちょっと見たい!」


「黙れ」


「研究対象決定!」


キーボードを叩く音。


「やめて!」


「賑やかじゃのう」


「でもマスター!」

「体貸してください!」


「嫌だ!」


「却下だ」


「研究が!」


「倫理審査落ちじゃ」


「境界堂に倫理あったの!?」


沈黙。


全員

顔を見合わせる。


シロ。


「……たぶんの」


カノン「境界堂って面白いですね!」

ファニー「でしょでしょ!」

シエル「問題は大体この人です」

マスター「なんで僕を見る」

クロード「八割お前だ」

カノン「残り二割は?」

全員 「お前」

カノン「えー!?」

空白体「ぼくはいつでも良いけどねぇ」

マスター「やめろー!」

シロ「次は接続実験かの」

マスター「やめろーーー!!」

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