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『長野の鷹匠、愛鷹と異世界転移したらグリフォンになっていた ~スキル《猛禽寵愛》でロック鳥もヒポグリフも俺に懐く~』  作者: あちゅ和尚


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第22話 空から山火事を読む

 銀嶺が狩人小屋へ泊まった翌朝、俺が目を覚ました時には、もう姿がなかった。


「帰ったのか?」


 小屋の外へ出る。


 岳は屋根の下で起きていた。


 瑠璃は横木の上で羽繕いをしている。


『飛んでいった』


 瑠璃が答えた。


「高原へ?」


『違う。東』


「東?」


『高いところまで行った』


 遊びに来た鳥へ、朝から行動予定を聞くような関係でもない。


 銀嶺には銀嶺の暮らしがある。


 そう思って水桶を持ち上げた時、岳が空へ顔を向けた。


『戻ってきた』


 俺も見る。


 朝日に照らされた灰白色の影が、山の向こうから一直線に近づいてくる。


 速い。


 瑠璃より身体が大きいのに、翼をほとんど無駄なく使っている。


 銀嶺は小屋の前まで来ると、勢いを殺して地面へ降りた。


『隼人』


「おはよう。朝からどこまで行ってた?」


『遠く』


「それは見れば分かる」


『煙がある』


 俺の手が止まった。


「煙?」


『大きい。黒い。増えてる』


「どっちだ?」


『東。山の向こう』


 焚き火や炭焼きなら、銀嶺がわざわざ戻って知らせるほど気にするとは思えない。


「どれくらい遠い?」


 銀嶺は少し考えた。


『私なら、すぐ』


「基準にならないな」


『岳なら、少し』


『それも曖昧だ』


 岳が口を挟む。


 銀嶺が岳を見る。


『私は速い』


『知っている』


「そこ張り合わなくていいから」


 朝から始まりそうになった競争を止める。


「銀嶺、煙の近くに人は見えた?」


『道がある。荷車もいた』


「何台?」


『三つ』


「火は道の近くまで来てる?」


『風で動いてる』


 そこまで聞けば、見に行った方がいい。


 大したことがなければ戻れば済む。


 山火事なら、時間が経つほど面倒になる。


「岳、飛べるか?」


『最初からそのつもりだ』


「瑠璃も来てくれ。銀嶺、案内できる?」


『できる』


 朝食はあとだ。


 弓と矢筒、山刀、水筒、濡らせる布と簡単な救急用品だけ持つ。


 火を消しに行く装備ではない。


 そもそも山火事が相手なら、俺たち三頭と一人で消せるなんて考えない方がいい。


 必要なのは、状況を見ることだ。


     ◇


 東へ飛ぶ。


 先頭は銀嶺。


 少し離れて俺を乗せた岳。


 瑠璃は俺たちより高い位置を行き来している。


「速いな」


『抑えている』


 銀嶺の声が返ってくる。


「それで?」


『岳が遅いから』


『聞こえているぞ』


「朝からやめろ」


 俺が止めると、銀嶺は少しだけ速度を落とした。


 岳は何も言わない。


 ただ羽ばたきが僅かに強くなった。


「岳、お前も乗るなよ」


『乗っていない』


「速度上がったぞ」


『風だ』


「都合のいい風だな」


 それでも移動自体は速かった。


 丘陵を一つ越えたあたりで、俺にも煙が見えた。


「……あれか」


 東の空へ、黒い煙が太く上がっている。


 一本ではない。


 風に押され、横へ流れている。


 下には森。


 その森を抜ける細い道。


「銀嶺、荷車は?」


『煙の手前』


「瑠璃、先に見てきてくれ。人が何人いるか、火がどっちから来てるか見たい」


『分かった』


 瑠璃が高度を上げ、先へ出る。


 俺は風を顔で受ける。


 西から東へ。


 俺たちは風上側から火へ近づいている。


 これならまだいい。


 反対から入っていたら、煙の中へ突っ込むことになる。


「岳、高度を少し上げてくれ」


『煙へ入らないぞ』


「分かってる。全体を見たいだけだ」


 山火事を見る時、一番やってはいけないのは目の前の炎だけを見ることだ。


 風。


 地形。


 燃えている植物。


 逃げ道。


 火は炎がある場所だけで動いているわけじゃない。


     ◇


 火元らしい場所が見えた。


 森の南側。


 低い草と灌木が燃え、その火が斜面を舐めるように広がっている。


 火そのものは巨大ではない。


 だが風が強い。


 時折、燃えた枝葉が飛ばされ、離れた場所へ落ちている。


「飛び火してるな」


『火が増えた』


 銀嶺が言う。


「ああ。これが厄介なんだ」


 街道には三台の荷車。


 俺たちが近づいた時には、すでに止まっていた。


 人影もある。


 馬角獣らしい動物が暴れ、御者が押さえている。


 問題は前方だった。


 一本の木が道路へ倒れている。


 まだ燃えてはいないが、枝が道を塞いでいる。


 荷車では越えられない。


 後ろへ戻ろうにも、火は街道の南側から徐々に近づいている。


『人、七人』


 瑠璃が戻る。


「怪我してる人は?」


『一人、座ってる』


「火は?」


『後ろから来てる。前にも小さい火』


「前にも?」


『赤いのがある』


 飛び火だ。


「岳、荷車のところへ降りる」


『分かった』


     ◇


「グリフォンだ!」


 地上へ近づいた瞬間、人々が騒いだ。


「冒険者です! 攻撃しません!」


 俺は声を張る。


 岳が街道脇の広い草地へ降りる。


 荷車から一人の男が走ってきた。


「リーベルの冒険者か!?」


「そうです。火を見て来ました」


「助かった! 前が倒木で通れん。後ろは火だ!」


「人数は七人で合ってますか?」


「七人だ。御者が三人、護衛が二人、俺と弟だ!」


「怪我人は?」


「弟だ。木をどかそうとして脚を挫いた!」


 道端へ座っている男を見る。


 足首を押さえている。


 歩けなくはないかもしれないが、走れる状態ではなさそうだ。


「荷物は何です?」


「布と陶器、乾物だ」


「燃えたら困る物は?」


「全部困る!」


「命よりは?」


 男が黙る。


「荷を守って逃げ遅れたら意味がないです」


「……分かってる」


 言い方はきついが、ここで迷われる方が困る。


「この先に広い場所はありますか?」


「知らん。この道は何度も通ってるが、森を抜けるまでまだ掛かる」


「銀嶺」


『何?』


「道の先を見てきてくれ。木が少ない場所、水場、岩場。火が来ても燃えにくそうなところを探して」


『分かった』


 銀嶺が飛び立つ。


 男が目を見開いた。


「今のヒポグリフも?」


「銀嶺です。俺とは意思疎通できます」


「何を頼んだ?」


「先に逃げられる場所を探してもらってます」


 今度は瑠璃を見る。


「瑠璃は火の後ろ側を見てくれ。街道まで来るのにどれくらい余裕がありそうか」


『見る』


 瑠璃も飛ぶ。


「……あの蒼冠鷹にも?」


「話せます。ただし、あいつらの声が聞こえるのは俺だけです」


 男は何か言いたそうだったが、煙の匂いが強くなり始めたことで口を閉じた。


     ◇


 岳と一緒に倒木を見る。


 幹は太い。


 だが根元から完全に折れている。


「動かせるか?」


『持ち上げるのか』


「全部じゃなくていい。枝側を少しずらせれば、馬角獣だけでも通れるかもしれない」


『やってみる』


「無理ならすぐやめろよ」


『分かっている』


 岳が倒木の太い枝へ前脚を掛ける。


 俺と護衛二人も、細い枝を切り始めた。


 山刀を振るう。


 乾いた枝は早い。


 太い部分は無理をしない。


「荷車全部を通そうとしないでください!」


 俺は商人へ言う。


「馬角獣と人を先に通します! 荷車は時間があれば!」


「荷車を置いていくのか?」


「必要なら」


「……分かった」


 煙が濃くなる。


 まだ炎は見えない。


 だからこそ危ない。


 火が見え始めてから逃げたのでは遅いこともある。


『隼人』


 瑠璃。


「どうだ?」


『近い。風で速くなってる』


「どれくらい?」


『さっきよりずっと近い』


 正確な距離ではない。


 だが十分だ。


「時間ないです! 荷車は捨てる前提で動きます!」


 御者の一人が反発しかける。


 その直後、森の奥で大きな音がした。


 何かの木が倒れたらしい。


 赤い光が一瞬見える。


 誰も反論しなくなった。


     ◇


『隼人!』


 今度は銀嶺だ。


「見つけた?」


『川。広い。石いっぱい。木、少ない』


「街道から近い?」


『すぐ先。右へ下りる道がある』


「人と馬角獣は行ける?」


『行ける。荷車は分からない』


「分かった。戻ってきて案内してくれ」


『行く』


 俺は人間たちへ向き直る。


「この先に広い川原があります。木が少ない場所です」


「本当か?」


「銀嶺が見つけました。右へ下りる道があるそうです」


 護衛が眉を寄せる。


「俺たちには分からないぞ」


「だから俺が先導します」


「荷車は?」


 倒木を見る。


 岳が枝を押し、狭い隙間ができている。


 人と馬角獣なら通れる。


 荷車三台は無理だ。


「置いていきます」


 商人が奥歯を噛む。


 決断するまで数秒。


「分かった。馬角獣だけ外せ!」


 御者たちが動く。


 繋ぎ革を外す。


 荷物は残す。


 一人が乾物の小袋を取ろうとした。


「持つなら水と最低限だけ!」


「分かってる!」


 俺は怪我人へ向かう。


「立てますか?」


「支えがあれば」


「岳」


『乗せるのか』


「川原まで歩いて運んでほしい」


『構わない』


 俺は怪我人へ伝える。


「岳の背に乗ってください。飛びません。地上を歩くだけです」


「グリフォンに?」


「脚を痛めたまま走るより早い」


 男は一瞬迷った。


 兄らしい商人が肩を貸す。


「乗れ。荷よりお前の方が高い」


「兄貴、言い方」


「生きてから文句言え」


 こんな時でも兄弟らしい。


     ◇


 銀嶺が戻る。


『こっち』


「全員、俺についてきてください!」


 先頭は銀嶺。


 俺。


 怪我人を背に乗せた岳。


 その後ろへ人と馬角獣。


 瑠璃は後方上空。


 街道の倒木の隙間を抜ける。


 馬角獣が怯えて暴れかけたが、御者たちが必死に抑えた。


「走らせすぎないで! 転ばせたら終わりです!」


「分かってる!」


 煙が目に染みる。


 喉が乾く。


 濡らした布を口元へ当てる。


 後ろの人間にも同じようにさせた。


 銀嶺が右へ逸れる。


 草に隠れた細い下り道。


「こっちです!」


 坂を下る。


 木が減る。


 水音が聞こえる。


 そして視界が一気に開けた。


「川だ!」


 幅の広い浅瀬。


 大きな石がいくつも転がり、岸辺には砂利が広がっている。


 周囲に燃えやすい低木は少ない。


「水際まで!」


 全員を川原へ入れる。


 馬角獣も水へ脚を入れた。


 人間たちが次々に座り込む。


「まだ休まないでください! 人数確認!」


「七人!」


「馬角獣は?」


「三頭、全部いる!」


「岳、怪我人を下ろす」


『分かった』


 男を降ろす。


 兄が受け止めた。


「瑠璃!」


 上空を見る。


『ここ』


「火は?」


『道まで来た。荷車の方、赤い』


 俺は息を吐いた。


 もう戻れない。


 少なくとも今は。


「荷車は?」


 商人が訊く。


 言いにくいことでも隠しても仕方ない。


「火が近くまで来てるそうです」


 男は黙った。


 拳を握る。


 やがて川原へ座り込んだ。


「……そうか」


「すみません」


「何であんたが謝る」


 商人は顔を上げる。


「俺が荷に未練を出してたら、今頃あそこにいた」


 誰も何も言わなかった。


     ◇


 火は川原のすぐそばまでは来なかった。


 風向きが僅かに変わり、炎は街道の反対側へ流れていった。


 それでも油断はできない。


 銀嶺と瑠璃を交互に飛ばし、周囲を見てもらう。


『大きい火、向こうへ行ってる』


 銀嶺が戻った。


「川を越えてない?」


『越えてない』


「ありがとう」


 瑠璃も降りてくる。


『荷車、一つ燃えてる』


「そうか」


 商人へは、少し迷ってから伝えた。


「荷車が一台燃えてるそうです」


「一台で済んでるなら運がいい」


「戻るのはまだ駄目です」


「分かってる」


 さっきより判断が早い。


 人間は一度危険を実感すると変わる。


 俺も含めて。


     ◇


 一時間ほど待った。


 煙はまだある。


 ただ、川原の周囲へ火が迫る様子はない。


 そこで初めて、怪我人の足を見る。


 足首がかなり腫れている。


「折れてはいなさそうだけど、今日は歩かない方がいいですね」


「町までどうする?」


 商人が訊く。


 俺は岳を見る。


「岳で一人なら運べる。でも俺も乗るから、他の人は歩きになる」


「俺たちは歩ける」


「馬角獣もいます」


「なら弟だけ頼めるか?」


『いいぞ』


 岳が先に答える。


 もちろん商人には聞こえない。


「岳もいいって言ってます」


 商人が岳を見る。


「……ありがとな」


『また礼か』


「受け取っとけ」


『分かった』


「受け取るそうです」


 兄弟が笑った。


     ◇


 問題は、ここがどこかだ。


 街道から外れて川へ下りた。


 火を避けて移動している。


 そのまま適当に進めば、別の場所で迷う。


「銀嶺」


『何?』


「ここからリーベルの方向、分かるか?」


『分かる』


「街道へ戻らず行ける道は?」


『見る』


「頼む」


 銀嶺が飛び上がる。


 岳が俺を見る。


『便利だな』


「お前が言う?」


『俺は人を運ぶ』


「瑠璃は近くを細かく探す。銀嶺は遠くまで速く見に行ける」


『役目が違う』


「そういうこと」


 誰か一頭が全部できる必要はない。


 向いていることをやればいい。


     ◇


 銀嶺はすぐ戻ってきた。


『北へ行けば道がある。火はない』


「どれくらい?」


『歩くと少し長い』


「馬角獣なら?」


『分からない』


「それは仕方ないな」


 俺は人間たちへ説明する。


「北側へ抜ければ別の街道に出られます。銀嶺に先を見てもらいました。火は来てないそうです」


「信じるしかないな」


「俺も一緒に行きます」


 それなら不安も少ないだろう。


 川原を出る。


 今度は銀嶺が低く先導する。


 瑠璃は上から周囲を見る。


 岳には怪我人。


 俺は徒歩だ。


「乗らないのか?」


 御者が訊く。


「怪我人を乗せてるので」


「二人乗れるんだろ?」


「飛ぶ時は俺ともう一人までです。でも地上なら俺が歩けば済みます」


「冒険者なのに歩くんだな」


「普段から山歩いてましたから」


 俺にとっては、こっちの方が慣れている。


     ◇


 別の街道へ出た頃には、昼を回っていた。


 そこからリーベルまでは迷う距離ではない。


「俺たちは先に町へ行きます」


 商人が驚く。


「先に?」


「火のことをギルドへ伝えます。街道の一部が燃えてるなら、他の荷馬車を止めた方がいい」


「そうか」


「皆さんはこの道をまっすぐ。無理に急がないでください」


 怪我人を岳から降ろし、馬角獣へ乗せる。


 地上なら御者が支えながら進める。


「ここからなら大丈夫だ」


 商人が言う。


「本当に助かった」


「銀嶺が煙を見つけたおかげです」


 俺が灰白色のヒポグリフを示す。


「銀嶺?」


「こいつの名前です」


 銀嶺が商人を見る。


『礼はいらない』


「銀嶺は礼はいらないって」


「……あんたの周りの鳥は皆そうなのか?」


「どうでしょうね」


『私は欲しい』


 瑠璃が言う。


「お前は何を?」


『肉』


「聞かなかったことにする」


 人間たちは意味が分からないまま笑っていた。


     ◇


 リーベルへ戻り、俺はそのままギルドへ向かった。


 煙の場所。


 火の広がる方向。


 荷車三台のうち一台が燃えたこと。


 七人全員が川原へ避難し、別の街道へ抜けたこと。


 ミラはすぐに職員を動かした。


「東へ向かう荷馬車を止める。守備隊にも連絡するわ」


「消火は?」


「現場を見てから。森全体へ広がってるなら、人を入れる方が危険よ」


「それがいいと思います」


 無理に火へ近づいて二次被害を出す必要はない。


「それで」


 ミラが俺を見る。


「どうして山火事を見つけたの?」


「銀嶺です」


「また?」


「朝、高く飛んでたら煙を見つけたみたいで」


 ミラの視線が、俺の後ろへ向く。


 銀嶺はギルドの外だ。


 町へ入れていない。


「……あの子、どこまで飛んでるの?」


「俺も知りたいです」


     ◇


 その日の夕方。


 小屋へ戻ってから、銀嶺の状態を確認した。


『個体名:銀嶺』


『種族:ヒポグリフ』


『状態:良好』


『命名:成立』


『適性:高速飛行・長距離飛行』


 そこまでは同じ。


 その下に、新しい表示が増えていた。


『役割形成:遠距離偵察』


『上位進化条件:一部達成』


「やっぱりな」


『何?』


 銀嶺が覗き込む。


「今日みたいに、遠くを飛んで見つけてくるのがお前に合ってるらしい」


『私は遠く、好き』


「ああ。知ってる」


『もっと遠くも行ける』


「行ってもいいけど、帰ってこいよ」


『帰る』


 即答だった。


「ならいい」


 岳が横から銀嶺を見る。


『速いだけではなかったな』


『最初から』


『そうか』


 妙に素直だ。


 瑠璃も横木から降りてくる。


『私は近くを見る』


「お前は探索と伝令だな」


『岳は?』


「岳は……」


 本人を見る。


 大きな身体。


 人を乗せられる。


 荷も運べる。


 戦える。


 俺と一緒に空を飛ぶ。


「相棒だな」


 岳が少しだけ目を細める。


『それでいい』


 役割名なんて、岳にはそれで十分なのかもしれない。


 銀嶺は遠くを見る。


 瑠璃は細かく探す。


 岳は俺を運び、必要なら戦う。


 俺はその情報を繋ぎ、判断する。


 一頭増えるたびに同じことができるようになるわけじゃない。


 むしろ逆だ。


 違う得意分野が増える。


 それを組み合わせれば、俺一人ではどうにもならないことに手が届く。


 朝、遠くの煙を見つけただけだった。


 その一言で、七人が火に囲まれずに済んだ。


 銀嶺自身は、それを大したことだと思っていないのだろう。


『ご飯は?』


「……やっぱりそこか」


『飛んだ』


「働いたもんな」


『いっぱい飛んだ』


「分かった。今日は多めにする」


『私も』


 瑠璃。


『俺も』


 岳。


「何で全員増えるんだよ」


 狩人小屋の前に、三つの視線が集まった。


 どうやら、この家で一番大変なのは食費になりそうだった。

YouTubeでショート動画作ってみました


https://youtube.com/shorts/spSkAdkT0sE?si=_5PpM7nCYZM6czxo

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